第199話 陸軍最終兵器
真田昌幸は黒田官兵衛軍に阻まれていた。
「うーむ。無理やり前に出て敵兵が引くと押されて上様の方にいってしまう。時間が経てば上様が危うい。仕方がない、あれを使うか。小次郎殿、すまん。時を稼いでくれ。陸軍最終兵器を使う」
「承知!」
昌幸は伊達軍に前衛を頼み準備を始めた。本来は城攻めで使うつもりだったがこのままではまずいと使用に踏み切った。伊達小次郎率いる東北軍は黒田軍に突っ込み乱戦となったが、黒田軍も強く徐々に押し返され始めた。黒田軍の目的は時間稼ぎだ。ここで抑えているうちに毛利が信勝を討ってくれる。敵を跳ね返していれば自然と勝利が転がり込む、はずだった。
ところが、この場に於いては伊達小次郎の目的も時間稼ぎだった。小次郎も自ら槍をふるい必死に奮戦しこちらが焦って攻めているそぶりを見せていた。
合図の法螺貝がなった。小次郎は叫んだ。
「今だ、引け。引きあげるぞ!」
伊達軍は一目散に引き始めた。そこに巨大な矢が飛んで黒田兵100人を一気に切り刻んだ。そう、箕輪城攻めで勝頼が使った
真田昌幸は、黒田官兵衛本陣の方を見た。そして自らが発射台の角度を変えて狙いをつけた。
「放て!
昌幸の掛け声と共に矢が空中に向かって放たれた。45°の放物線を描き正面並びに両側30°の方向へ矢が放たれた。大きさは
攻撃はまだ終わっていない。正面に飛んだ矢は黒田官兵衛のいる本陣に向けて飛んでいた。旗本の声が飛ぶ。
「殿、お逃げください。矢が来ます」
官兵衛は足が悪い。逃げても無駄と即座に判断し、
「鉄の盾を集めよ、盾で囲んで身を守るのだ。急げ!」
矢が近づいてくる。慌てて盾を構える旗本達。今度は矢の前方が開き再び爆撃が始まった。吹き飛ぶ兵達、その中で官兵衛の旗本は必死に主人を守ろうとした。盾の内側に体ごと入り身を呈して官兵衛を守った。矢は官兵衛の後ろ10m後ろに突き刺さり官兵衛を置いて逃げ出そうとした兵を串刺しにした。
官兵衛が何とか起き上がると、矢が飛んだ下の直線上には兵は1人も残っていなかった。そしてその拓けた道を通り真田の騎馬隊が迫っていた。
「ここまでか、いやまだだ。合図を」
官兵衛が叫ぶと生き残った旗本が合図の太鼓を叩いた。変わったリズムだ、それを聞いた逃げ回っていた生き残りの黒田兵が突っ込んでくる真田騎馬隊の足留めをしようとしたが間に合わず100騎の兵が黒田兵をくぐり抜けて官兵衛を囲んだ。六文銭の兜を被った男が官兵衛に話しかけた。
「黒田官兵衛殿とお見受け致す。我は真田昌幸、その首を頂戴いたす」
官兵衛は討ち取られた。昌幸は勝鬨をあげた。
「黒田官兵衛はこの真田昌幸が討ち取った。えい、えい、おう!」
部下が続く。
「えい、えい、おう!」
戦場に勝鬨が響き渡った。黒田の残兵は戦意を失いその場に崩れる者、主人の仇とヤケになって突っ込んでくる者等様々だったが数分で鎮圧された。その間に伊達軍は毛利軍の背後を追いかけに走っていた。伊達軍もかなり消耗しておりまともに戦える兵は五千しか残っていなかったがそんな事を言っている場合ではなかった。毛利、宇喜多軍は削ったとはいえ合わせて四万五千。そのうち東側で信豊を抑えている兵を引くと四万。信勝軍二万がどこまで持ちこたえられるかというところなのだ。間に合ってくれと祈りながら駆け抜ける小次郎であった。
東側では加藤清正が細川忠興と毛利軍五千と共に信豊軍の侵攻を抑えていた。が、そこに黒田官兵衛破れるとの一報が入った。
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