第125話 米沢城攻略

 信勝は翌朝再度戦闘を仕掛けた。鉄砲の無い最上軍はそれでも善戦したが、物量で圧倒的に有利な武田蘆名連合軍に徐々に伊達領へ追いやられていった。


「これは無理だな。引くぞ」


 最上軍は引いていったが、信勝は追撃を指示したので、伊達領内で追っかけっこになった。二本松城を攻めていた伊達輝宗の元に最上敗戦、伊達領内で引き続き戦闘中との連絡があった。


「こうしてはおれん。米沢へ戻る。政宗にも伝えよ」


 政宗は相馬氏、田村氏とともに岩城を攻めていた。岩城には佐竹の援軍も来ていて膠着状態だった。


 政宗は、くだらん!何の為の戦か、と叫び撤退していった。政宗からすれば小次郎にいいようにやられているようで面白くなかったのである。


 逃げる最上を追う武田軍、それを少し離れたところで追いつこうとする伊達軍。不思議な追いかけっこになっていた。武田軍は一気に米沢城までたどりついた。そこで進軍を止めた。最上軍は幸運とばかりに自領へ引き上げていった。武田軍が米沢城下の入り口を目の前にして、最上川と大樽川の間の平地に陣を引き伊達軍を待ち構えた。米沢城に残る兵は、千名それも近隣の城から逃げ込んできた兵も合わせてだ。蘆名、最上に挟まれて伊達本城は、ここまでは兵が来ないと考えていたため、全軍に近い人数が戦におもむいていたのである。


 米沢城攻略は蘆名小次郎に任せた。元々住んでいた城である。小次郎以下三千を城攻めに当て、残りは伊達輝宗を待ち構えた。城にいる千名は半分は寄せ集めだろう。


 伊達輝宗が追いついてきた時、すでに城攻めは始まっていた。直ぐにでも加勢したいが目の前には武田軍約二万五千が鶴翼の陣形で待ち構えている。前面から鉄砲隊、騎馬隊、その後ろに戦闘と追撃で疲れている那須、白河勢の半分を弓矢主体の遠距離支援に当てた。輝宗はすぐに仕掛けず、政宗の到着を待った。そして陸前、陸中からも兵を集めるべく伝令を飛ばした。このままでは米沢城は落ちる。ここで引いては末代までの恥だ。




 勝頼は陸奥北部を治める南部氏、伊達、最上と隣国の葛西氏、大崎氏にも使者を出していた。敵対する気は無い。伊達を攻めるがお好きに動かれよ、と。陸奥の南部氏は甲斐の南部氏から別れた家で、遠く遡ると先祖は勝頼と同じ清和源氏になる。ただ現当主南部信直は昨年壮絶な家督争いの結果、家を継いだばかり。領地が広いだけで統率はできていない状態で、こちらの戦に便乗する余裕はなさそうだ。葛西氏は二つの家が宗家を訴えていて仲が悪く、外の戦には興味がないらしい。大崎氏は伊達の支配下にあったが、生き残るためにそうしているに過ぎない。強い者に付くだけで見掛け上武田に付くと言ってきている。まあ、実際はどうでもよく南部、葛西、大崎が武田についたという流言を流すだけで効果はあった。伊達輝宗は簡単に兵を動かす事が出来なくなった。


 政宗が到着する前に米沢城は落ちた。城には伊達が溜め込んだ金や米が多数あり遠慮なくいただいた。とはいえ長引けば兵糧が心配になる。城下に金をばら撒き買い上げた。また、蘆名領地からの支援も要請した。長引かせる気は無いが相手も引きそうに無い。そこに戦国飛行隊の他の3人がやってきた。


「やっと追いついた。遠いよ、でも間に合ったね」


 紅が言えば、桃が


「大殿。補充に来ました。例の発射装置と桜花散撃30発。真田様にも届けました。それと茜様からで、諏訪から例のやつが小山へ向かっていると」


 できたのか、あれ。これはさっさと片付けて小山へ戻らないとだな。すると黄与が、


「これを茜様から預かってきました。北条のその後だそうです」


 北条は小田原城が炎上して無くなったため、二宮に本拠地を移し、北条氏規が家督を継いだそうだ。生き残ったのが氏規しかいなかったらしい。それで武田家と結びたいと言っているそうだ。結んだり切れたり、北条との関係は何なのだろうね。まあ、北条の件は穴山と決着つけてからだな。


「戦艦駿河はどうした?」


「江戸の港に入ったそうです。例のものは川を遡り運搬すると。」


 あれ、もう一人いた。沙沙貴の娘だ。どうやら一緒に行動しているらしい。さて、敵から仕掛けてこないのであればこちらから行きますか。




 明日には政宗が到着しそうとの事だ、じゃあ今日のうちにと早朝霧が出ている中を仕掛けた。視界が悪い中、久々に揃った戦国飛行隊の4人。沙沙貴の娘を入れると5人だ。5人揃ってなんとかレンジャーではないけど、なんかやるみたい。夜のうちに敵の位置を把握していたようだ。射程距離の増えた迫撃砲型発射台から桜花散撃改を敵陣五箇所に放り込んだ。連続して起こる爆発音、それに続く悲鳴とざわめき。それを合図とばかりに武田軍が一斉に敵陣へ突っ込んだ。先鋒を走るは長槍をぶん回す山上道及、それに続く騎馬隊に足軽達。武田軍の兵士一万が米沢の平野を駆け巡り一気に攻め入った。戦闘が始まりしばらくして、突然の攻撃に面喰らった伊達陣営も落ち着きを取り戻し、迫る武田軍に銃で応戦、道及の合図で一時退却した。武田軍の死傷者千名に対し、伊達軍の死傷者三千名であった。勝頼は信勝と相談し、すかさず第二撃に入った。


 今度は鉄砲隊を前面に出し、敵の前衛を銃撃した。敵も竹で作った防御柵で防いだが、そこに二の矢の大群が柵を越えて襲いかかった。続けて、那須、白河、蘆名勢が武田に変わり敵陣へ突っ込んだ。この三大名は一度敵側だったため、ここで良いところを見せないとならない。数で優位な武田軍は伊達軍を押し退けた。




 伊達輝宗は、明日になれば政宗が五千の兵を連れてくる。なんとか持ちこたえようと粘った。それが悪かった。勝頼が要請していた蘆名軍の追加応援二千が輝宗の背後を襲った。人数が少ないとはいえ敵に挟まれた形になり、伊達軍は壊滅的になり、兵は個々に逃げ出した。逃げ惑う兵に対し勝頼は追わせなかった。ただ、旗本に守られつつ戦場を抜け出そうとした伊達輝宗は、女忍者五名に待ち伏せされていた。

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