第123話 最上がやってきた

まずは二本松城の畠山氏の救出からかかることになった。二本松城を囲う伊達輝宗一万に最上軍一万五千が合流する前に叩く。こちらは那須、白河結城の五千、蘆名の一万に加え武田が二万だ。


二本松城の手前で最上軍とかち合った。さて戦うかと思った時に騎馬にのったおばさん、いや最上御前こと小次郎の母が現れた。


「武田信勝様とお見受け致します。小次郎と最上が争う事はありませぬ。身内同士で削りあっては何も産み出しませぬ。私が最上義光を説得致しますゆえ。ご猶予を頂きたくお願いいたします」


あれ?なんか歴史で聞いた事があるような、戦を仲裁したんだよな。でも武田じゃあなかったよな、てか武田の訳はないか。さて、信勝はどうするかな。


「小次郎殿をここに」


信勝は小次郎を呼んだ。しばらく母子の会話があり、その後小次郎が、


「信勝殿。先日山上殿が話された通り、東北は複雑に入り組んでおります。情で戦は成り立ちませぬが、国を治めるのも人です。人を大事にする事を母から教わって参りました。戦をせずに済むのであればそれが一番かと。無駄かもしれませぬが、母上に最上の説得をお命じ下されませぬか?」


信勝は許可した。進軍を止め、休憩に入ったが服部半蔵に命じて周囲の警戒は怠らなかった。


勝頼は連れてきていた紫乃に最上御前に付くように命じた。最上御前はこれから戦う伊達輝宗の正室だ。罠かもしれない。小次郎を呼び、これが罠なら母の命は諦めるよう伝えた。政宗は油断ならないとも。


最上義光は最上御前と話をしたが、伊達の領地を通ってここまでやってきたのにそのまま帰れるかと説得に応じなかった。最上御前はは蘆名と最上が争ってもいい事はないと訴え続けた、が結局決裂した。


なんか芝居臭いぞ。ただこのまま最上が帰ったらそれこそ怪しいからマジだな、きっと。罠だと面倒臭いから結果良かったのかも。ではやっちゃいますか。前世の歴史では蘆名は政宗に滅ぼされる、小次郎は伊達家で死ぬ。今世で小次郎と知り合ったのも何かの縁だろう。ここで最上を打ち破り、そのまま北上して米沢に向かってやる。


「信勝。どうやら決裂したようだ。ここで最上とかち合ったのも天運。ここで最上を打ち破り、二本松でなく伊達の居城、米沢城へ向かおうと思うがどうだ。伊達も自領を攻められれば二本松を攻めてる場合ではなくなるだろう」


勝頼の案で行くことになった。最上御前が戻ってきて泣いていた。芝居ではなさそうだ。念のため紫乃に聞いてみたが単純に兄と子が戦うのを避けたいだけのようだ。


地の利がないため采配を蘆名に任せることにした。那須、白河、蘆名勢が攻めかかり双方犠牲者を出しながら初日は痛み分けだった。勝頼はさっさと終わらせたかった。曾根から抜け穴の入り口を見つけたと連絡がきていた。放ったらかしの信忠も心配だし。


「のんびりしていると伊達勢が加勢するやもしれん。道及、お前の手の者と武田から500出すので夜討ちしてこい。敵の弾薬を狙え。紫乃が敵の火薬保管場所を調べてきている。連れて行け、紫乃、あれを持っていけ。外すなよ」


女の忍びか。大殿の直属?ここでいいところを見せないとまだ何も手柄を立てていない。大殿のいっていたあれって何だ?道及は作戦会議だと言って紫乃を連れていった。


勝頼は出て行く二人を見ながら、まるで美女と野獣だな、意外といいコンビかもな。と呟いた。今回はハンググライダーは持ってきてないけど、関東を抜けると山だから使えたかも。悟郎に言って隠しておいてもらうことにした。黒川城下にも武田商店出そう。




その夜、紫乃の手引きで道及率いる敵弾薬破壊隊がそーっと出撃した。敵の物見は服部半蔵以下が仕留めていた。東北は弾薬が貴重だろうからね、鉄砲使えなくなればこっちのものです。


敵本陣から離れたところに荷駄隊が休んでいたので、そこまで回り込み急襲した。紫乃は敵の火薬が入っている木の樽めがけて小山田戦で使った花火弾を発射した。木の樽に火が燃え移り、兵が慌てて消そうとしたが間に合わず、轟音と共に爆発した。その音を合図に山上道及率いる部隊が慌て逃げ惑う兵を鉄砲、矢、そして刀で切り刻んでいった。道及は本多忠勝から貰った長槍をふるい、ばったばったと薙ぎ倒していった。その道及を弓矢で狙撃しようとしていた兵がいた。矢を放つ瞬間、紫乃がリボルバー雪風で撃った為、矢は大きく逸れた。紫乃は道及にウィンクして再び周囲に警戒にもどっていった。


戦闘が続き一気に200人ほど討取ったところで紫乃から撤収の合図が出た。敵兵がこっちに向かってきているようだ。紫乃は桜花散撃を敵がくる方へぶっ放し、地面をマキビシだらけにした。敵は思うように進めず、無事に武田陣営まで戻る事ができた。味方の損傷はほぼ0だった。軽傷者のみ、大成功である。敵はこれで鉄砲がほぼ使えなくなった。


山上道及は紫乃という女忍びの采配に感心していた。命も助けられた、礼を言おうと近づいて


「紫乃殿。先程はありがとうございました。助かりました。それに見事な采配。紫乃殿は武田忍びの上忍でござるか?」


「いえ、そんな。ただの大殿付きの護衛役です。うちにはもっと凄い人が沢山いますよ。道及さんこそ、お強いじゃあないですか。槍さばき、見惚れちゃいました」


「いや、それがしよりも本多忠勝殿の方が強いのです。この間負けましたわ」


「忠勝様ですか。あれは一種の化け物ですから。勝てるのは大殿くらいですよ」


「なんと。勝頼様は忠勝殿より強いのか。まさか、冗談だろ」


そこに勝頼が現れた。


「道及、大儀であった。良くやったな。紫乃、いい采配だ。お幸に自慢していいぞ」


「やめて下さいよ、お幸さんに言ったらまたいじめられる。鬼より怖いんですから。今、大殿の話をしてたんですよ。忠勝様より大殿の方が強いって」


おいおい、強者の前でそれはダメだろ。道及の目が戦闘狂になってるぞ。全く戦国飛行隊のメンバーはみんな空気読めない。


「道及。それは冗談だ、真に受けるな。で、明日総攻撃を仕掛ける。皆を休ませておけ、明日も働いてもらう」


やっぱりこの二人相性良さそうだな。面白そうだから暫く一緒に行動させよっと。



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