第122話 会津へ

 真田昌幸は意見を言った。


「この城は手強い。簡単にはいかぬでしょう。まずは兵糧を断ちます。それには地下の抜け穴を見つけ入り口を占拠することです。そしていつでも地下から攻め込める体制を整え、敵には武田が地下から攻めるという噂を流します。穴山を支援する者は秀吉、これは今は無視していいでしょう。そして佐竹、結城、蘆名様はこちらに付きました。上杉も味方、敵は新発田、伊達、最上です。伊達は今は佐竹を攻めていますが、蘆名様がこちらについた事を知れば最上と結託し、蘆名様を攻めるでしょう。我々は小山城を兵糧攻めにしつ東北に向かいます。その間に大殿が城を攻める新兵器を持ってくると思います」


「おいおい、いい作戦だと思えば最後にそれかよ。黙っていようとおもったが、そうもいかないな。新兵器という程のものではないが、今、作らせてる。ここまで運ぶ事を考えると三ヶ月は必要だな。信勝、まとめろ」


「曾根、引き続き抜け穴の入り口を突き止めよ。山県、原、信豊は結城勢と協力し小山城の包囲を。本隊と跡部、内藤は蘆名殿、白河結城、那須勢と共に北へ向かう。真田は残って佐野と今市の生き残りを頼む」


 そう、結城晴朝の説得により白河結城、那須はこちらについた。条件は現領地の安堵である。当然、伊達との戦いでは先鋒となるのだが。ちなみに小山田勢は小山攻めに当てられる事になっている。勝頼は追加の作戦として敵の城から見えるところで、城への抜け穴を掘り始めるように指示した。半分は揺動だ、実際に使うかはわからん。




 穴山が盗んだ、いや持っていった物、戦艦駿河のノウハウ、砲台、リボルバー雪風の作り方、地下鉄もどきのようだ。この分じゃ雪風は作ってるな。嫌なのは秀吉に情報が流れてる可能性だ。塩硝は越中で作られてるし、いずれは秀吉に、あ、今のうちに抑えるか。まあキリシタン大名通じて輸入されるから効果は薄いけど。幸い蒸気とガソリンを使った動力系はもれていない。油田も抑えてるしね。秀吉は転生者だろうから見れば色々わかっちゃうだろうから最悪ヤバイ対決になる。どこまで知識あるかわからんけど、現代人なら真似はできるだろう。やっぱ量産化かあ、最後は数なんだよ。資源がなあ。資源!!! 勝頼は閃いた、すぐに上杉景勝、お市に文を書いた。





 小山城が不沈艦じゃない、不沈城みたいな感じなので兵糧攻めに切り替えて武田本隊は北へ向かった。那須、白河を経由し、今回敵に付いたが寝返った者らを取り敢えず脅しながら可愛がり忠誠を誓わせた。飴と鞭の使い分けで勝頼ではなく、武田家への忠誠である。そして蘆名の居城、会津若松城じゃない、黒川城に入った。


 小次郎は勝頼を上座に座らせた。若いのにしっかりしてると感心しつつ


「小次郎殿、いい城である。ところで正室はおるのか?」


「いえ、家督を継いだばかりでその余裕がありませんでした」


「余の娘をもらってくれぬか?別腹だが信勝の妹だ」


 小次郎はとんとん拍子に事が運び焦った。できればこちらからお願いしようと考えていたが、お願いする時期がわからず、実績を上げてからと思っていたのだ。


「謹んでお受けいたしまする」


「この戦が終わったら連れて寄越す。そう、信勝もこの戦が終われば婚儀なのだ。勝たねばな」


 黒川城で軍議が開かれた。まずは伊達輝宗を攻める。伊達家はこの戦が終わったら家督を嫡男の政宗に継がせるのだそうだ。軍議には山上道及、末席に木村悟郎も参加した。信勝は最初に悟郎に伊達の状況を説明させた。


「伊達は佐竹を牽制するために岩城、二本松に兵を進めております。対する佐竹も兵を出し均衡状態が続いています。さらに伊達は最上に援軍の要請をしており、一万五千の兵が二本松へ向かっておりましたが、ここで蘆名様が武田についたことにより進路をこの黒川城に変えました。おそらく、小山に出陣している間に居城を乗っ取ろうとしたと思われます。ところが、いち早く蘆名様が武田を連れてお戻りになられたので、再び二本松へ進路を変えたようです。岩城には嫡男の政宗が兵五千、二本松には輝宗が兵一万を連れ出陣しています。二本松は籠城し、よく持ちこたえていますが時間の問題です」


 勝頼は道及に聞いた。


「道及、東北には詳しいと聞くが補足はあるか」


「東北は関東より複雑です。まず、岩城家当主、岩城常隆は伊達政宗の従兄弟で、叔母が佐竹義重に嫁いでおります。岩城と伊達はいい関係だったのですが、嫡男政宗の正室が岩城と敵対する田村家の娘だったので、岩城と伊達は敵対関係になりました。岩城は佐竹を頼りになんとか持ちこたえています。佐竹と蘆名様の関係も色々あります。佐竹は小次郎様でなく、佐竹の子を蘆名へ据えようと企んでおりましたが、時期を逃しています。今は武田を通して繋がっていますが、今後どうなるか?佐竹の首を掴んで置く事が肝心。小次郎様は伊達家のお方。政宗の弟君です。さらに小次郎様の母上は最上義満の妹君です。ただ、だからといって最上と伊達が一枚岩かというとそうでもなく、例えれば武田と北条の関係ですかな。その時々で変わると言う事です。ご本人の前で恐縮でございますが小次郎様と政宗も仲が良くないとの噂です」


 信勝が言った。


「つまり誰も信用できぬと言う事だな」


「はい。武田が東北を制するには、小次郎様が鍵です。大殿はそこまで考えていたのでしょう。今この場に小次郎様が居ること、これは幸運、いや大殿の持つ天運では」


 はいはい道及君、お世辞はいいから、作戦はどうするの?

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