第43話 信勝誕生
戦が終わり伊那へ戻った。城に侵入した本隊の活躍で城兵は殆どが逃げ出していた。
長野業盛は切腹、一族は捕らえられた殺された。長野家は滅んだが、家臣住民は武田に従えば優遇された。
伊勢守はいなかったらしい。居たらヤバかったかも。いつか、出会えたら弟子入りしたい。新陰流、かっちょいい!
怪我をした者の手当て、亡くなった方の家族への補償に追われて月日は瞬く間に経過しそして、雪姫が出産した。
「勝頼様、お子がお産まれでございます。男の子です。」
「男子、どちらでも良いが尚良い。すぐに古府中へ知らせよ。」
男か。歴史変わらんなあ。
信玄は雪姫出産と聞き翌日には伊那へ現れた。えっ!雪降ってんだけど。ジジバカ?
雪姫は産後の肥立ちが悪く熱を出していた。これも歴史変わらん。
「勝頼、でかした。この子に名をつけて良いか?」
「お屋形様に名を付けて頂けるとは。是非にお願い致しまする。」
「信勝とするが良い。武田家の信にお主の勝を取った。」
「良い名でございます。」
この名前には大きな意味があった。勝頼には武田家に付く “信” の字がない。諏訪家の“頼” の字が付いている。諏訪家の子に信がつく、これはこの子がいずれ武田家を継ぐという信玄の意思表示であった。いい事もあれば悪い事もある。
翌日、勝頼があんなに愛した雪姫が亡くなった。
このことは沙沙貴綱紀から直ぐに織田信長に伝えられた。
「そうか、もう少し武田とは仲良くしておきたいな。まあ、もう少しだが。」
この頃の信長は飛ぶ鳥を落とす勢いではあったが、怖い物は怖い事は分かっていた。
「先の事を考えて手をうつ。間違っていたら破棄すればいいのだ。綱紀、信玄に娘がいたな。」
「はい、10になります菊姫と、7歳の松姫です。松姫は本当に可愛らしく将来が楽しみな……」
「わかった。信忠とその松姫の縁談を進める様手配致せ。」
「え?」
綱紀の好みで松姫が選ばれた。
信玄は雪姫の訃報を聞き、
「これで織田との縁が切れたか。織田の勢い侮りがたし。上杉を抑えるのは一向宗、織田はどうする?京へも 登る勢いだ。徳川は信長の家臣の様な者だ。うーむ。」
織田との関係をどうするか思案し、新たな婚儀を考えることにした。お菊かお松か。
どちらからともなく、雪姫亡き後の縁戚関係について話が進み、織田信忠と松姫の婚約となった。松姫は、未だ見ぬ信忠を想い恋する乙女となっていた。
「兄上、松は信忠様と婚儀を結ぶことになりました。」
「お松よ、まだそなたは若い。縁組が決まったとはいえこの戦国の世。何年も先の事はわからぬぞ。」
「兄上、松は兄上が嫌いになりました。もうお声をかけないでください。」
え、ひどい、あんまりだ。可愛い妹よ。本当の事を言っただけなのに。
嫁をなくしたばかりの俺にこの仕打ち。ちくしょう、側室作ってやる!
そうと決めた勝頼は開き直って先の事を考え始めた。
歴史ではこの婚儀はご破算となり、武田が滅んだあと八王子で尼さんになるんだっけ?千本○じゃない千人同心だっけ?
お松を幸せにする。難しいんだよこれ、天下取るより難しいんじゃね?
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