第41話 新兵器

 箕輪城の長野業盛は、この戦で死ぬ事を覚悟していた。5ヶ月に及ぶ籠城で食料も尽き頼みの上杉からの援軍は来ない。せめて一死報いる策を講じていた。


「殿。武田軍が堀を埋めにかかりました。」


 と言われても見ている事しか出来なかった。物見が搦め手側に諏訪の旗印がある事を報告してきた。伊那勝頼?そうか、勝頼が来ているのか。


「堀には備えを残し、全軍搦め手より勝頼軍へ突っ込む。用意せよ。」


 長野業成は、せめて勝頼の首をとって、泣き叫ぶ信玄の顔を見てから死ぬ決意をした。





 勝頼は作戦に基づき、搦め手から攻めた。足軽は鉄砲避けに藁襖を持ち、さらに鉄の盾を持つ者もいた。その後ろから玉さん率いる特殊部隊が、巨大な発射装置を用意していた。


 そう、勝頼は巨大なボーガンを作ったのである。鉄で作られた巨大な矢は重さが200kg、時速200kmで飛ぶ。名を、豪傑極超矢メガゴーガンと言う。当然名付け親は厨二病の勝頼である。




 敵の鉄砲射撃が収まった時、


「放てー!」


 玉さんの掛け声で豪傑極超矢メガゴーガンが放たれる。城門扉を直撃し、一撃で粉砕。扉付近にいた敵兵十余命を一瞬で葬った。


「突っ込めー!」


 一目散に城めがけて突っ込んでいった。それを見た内藤修理は、部隊に堀を越え城へ侵入する様命令を出した。


 城の三方向から石垣を兵がよじ登ろうとしたが、守兵から鉄砲や石が投げつけられ中々侵入出来ずにいた。


 勝頼にはそれが見えていなかったが、偵察衆が堀からの侵入に手こずっている事を知らせてきた。


 勝頼は信玄の命に従い後方に控えて指示を出していた。自陣は安全に見えたので、伊那、諏訪から連れてきた兵千名を側面の応援に出した。小原兄弟、跡部重政を応援千名の指揮官として付けた。


 搦め手侵入組を除くと勝頼の護衛は千名。大丈夫だと過信していた。この時まだ、長野業盛が特攻を仕掛けてくるとは予想していなかった。




 搦め手から場内に侵入した勝頼勢は、敵の抵抗が強く前に進めずにいた。敵が厚く突破できないのである。玉井は敵の総力が搦め手に集中している事に気付き、勝頼に伝令を飛ばした。


 その時、城兵が押し出してきた。


 作戦では、側面から城へ侵入し城内で挟み撃ちにする予定であったが、敵は側面は足止め程度で正面突破をかけてきた。側面に兵を廻していた勝頼は少数で城兵を迎える事になった。


 玉井は徐々に引き始めた。一気に引くと勝頼本陣が危険になるため、少しづつ引いていった。玉井から伝令を受けた勝頼は、使う予定のなかった新兵器を用意するように指示を出した。





 敵との間に引いてくる味方がいる為、鉄砲は撃てない。まずは後方に弓矢隊100による一斉射撃で敵の数を減らした。


 すぐさま玉井隊に向かって全力疾走退避を命じ敵兵との間隔が空いた瞬間に、今度は普通サイズのボーガンから見た事のない直径20cm程の球を、時間差で3発発射させた。


 よく見ると、導火線があり火が付いている。その玉はこちらに逃げてくる玉井隊上空を通過し敵の上空で爆発音と共に、鉄のマキビシをまき散らした。そう、手榴弾、しかも炸裂型である。


 名を桜華散撃。


 爆発の勢いでマキビシは高速で敵兵に襲いかかった。しかも城兵はどんどん出てくるが、出てきてはマキビシの犠牲になるパターンを三度繰り返した。時間差で発射した効果である。一気に50名の敵を戦闘不能にし、さらに出てくる兵はマキビシを踏んでしまい戦闘力が低下した。その間に玉井隊は撤収した。


 勝頼は次に鉄砲隊を前面に出した。マキビシを避けながら出てくる敵はことごとく鉄砲の餌食となった。真田昌幸と考案した、作戦名「引力爆トンデヒニイル」。初披露である。




 長野業盛は、味方の兵が城門付近から進めない事に苛立っていた。自ら槍を持ち数の暴力で突破する作戦を取った。

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