第33話 上泉伊勢守
バタ、バタと敵が倒れて行く。よし、さすがは拡散覇道砲。あれ、一人残ってる。
そう、敵将と思われる人は若干傷がある程度でその場に立っていた。
「驚いた。まさかこのわしに傷をつけるものがおるとは。何だ、その明かりは?そうであった。見事な敵には名乗らねばのう、上泉信綱という。」
「大物、来たーーーー!」
思わず叫んじゃった。新陰流の開祖じゃん。やべえのがいきなり来た。
「ご存知なのですか、殿」
「殿?」
高さんが殿って言うから、もう。
「伊那四郎勝頼である。上泉伊勢守とお見受けする。サインを、 いやお目にかかれて恐悦至極。」
「ほう、ご存知とな。武田にも剣術が流行っておるのかな?」
「いえ、伊勢守様のご高名を知らない者は武士とは言えないでしょう。」
「だが、敵同士。悪いが斬らせてもらう。」
急に殺気が、凄い圧だ。つい引いてしまったらそこを突かれ、伊勢守が斬りかかってきた。
足軽が前に立ち塞がったが、一瞬で3人が斬られた。俺の周りには高さん、お幸、楓がいて木の上に護衛隊がいる。
伊勢守の背後から残りの護衛隊が飛び苦無を投げたが、避けられこっちに飛んできたのを、高さんとお幸が弾き、その瞬間に木の上の護衛隊が飛び苦無を投げ、楓が短刀で飛び込んだ。
刃の当たる音がして楓は吹っ飛ばされたが、斬られはしなかったようだ。
「高さん、あれを使え!」
高さんは持っていた袋から武具を取り出した。そう、カイザーナックルである。
高さんは武闘家である。防具は急所に鉄で作った盾、左腕には大きめな鉛玉をも跳ね返す特製の盾を付けている。
そして攻撃用に同じ鋼鉄で作ったカイザーナックルを装備する。この状態の高さんを高城無双と呼んでいる。
「刀を持たずに立ち向かうとは笑止。」
伊勢守は高さんに斬りかかってきた。高さんは盾で受け、又は避けダメージを受けない。
「見事な動き、では行くぞ、陰流奥義。陽炎、」
伊勢守の姿が一瞬ぼやけた。その瞬間刀が飛んできた、しかも高さんをすり抜け、俺に。
高みの見物のつもりでいた俺は不意を突かれた、が、お幸が伊勢守に向かって飛び苦無を投げていた為、一瞬間ができた。
「!!!???」
伊勢守の刀を両手で挟み、止めていた。そう、新陰流奥義、真剣白羽取りである。
伊勢守の動きが止まった瞬間、高さんのパンチが伊勢守の横腹を直撃した。伊勢守は吹っ飛ばされたが、直ぐに起き上がり刀を構えた。
「今のは、何だ?」
「柔術の応用です。名付けて、真剣白羽取り」
「見事だ。斬れ、死に際に良いものが見れた。」
「伊勢守様、引いてくだされ。今のは偶然、いつも上手くいくものではありません。ですが伊勢守様なら活かす事ができるのでは。いつか戦が無くなったら、ご指導下さい、皆、引くぞ。怪我人の手当てを。」
「伊那四郎勝頼殿であったな。その名前、忘れんぞ。いつか、また、どこかで。」
「はい、お達者で。」
サイン欲しかったなあ。
この後、上泉伊勢守は上杉を見切り修行の旅に出る。そして新陰流を極め、それは柳生家に伝わり、その奥義が 真剣白羽取りである。
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