第3話 ニッ

「な、なんかおでこ赤くない?」


 顔を洗い、色々沈められた。戻ってきたらなんかルナちゃんのおでこが赤い気がする。


「そ、そう?気の所為じゃない?」


「いや、でもおでこめちゃくちゃ赤いじゃん」


 表情が犬っぽく思わずルナちゃんのおでこを触ってしまった。


「ひゃん!」


 艶かしい声を聞き先程鎮まらせたのが無駄になってしまいそう。


「ご、ごめんっ!気持ち悪かったよね!」


 昔の感覚で触ってしまっていた…反省しなくては。


「…ふへぁ…気持ち悪くなんか無いわ!こ、こんなの余裕よ?さ、触りたかったらもっと触ってもいいくらいよ?(錯乱)」


「あ、あれ?なんか喋り方変わってない?何その無理に大人っぽく演技して喋ろうとしてる女の子みたいな…喋り方はって、ルナちゃん?」


 机に突っ伏したルナちゃん。


「うぅ……もうダメ。完全に見透かされてる……まだ、諦めないけど……」


 ぶつぶつ何かを言っているが聞こえない。


「ど、どうしたの?」


「今後喋り方が変わっても、つっこまないでいただけるとありがたいです」


 恥ずかしそうに下を俯いて言うルナちゃん。


「うん。分かった」


 触れて欲しくない何かにわざわざ触れる必要は無いだろう。


「それで話の続きだけど、一緒に住むってなったら色々買わなくちゃ。俺女の子の事よく分かんないし」


 女の子はトリートメントとか使うんだろうか?知らんけど。


「結婚するつもりだったから私に必要な物はだいたい持って来てるんだけど、私、ベッドだったから持って来れなかったんだ。だから、布団一緒に買いに行ってもいい?」


 あーなるほど。確かに布団は必要だ。


「いいよ。じゃあ、あそこ行くか」


「あそこってどこ?」


「エオンだよ」


「エオン!!流石都会!!」




 ―――





 という事で布団を買いにエオンの中にあるニットリに来た。家具とか買う時は近場にはここしかない。


「おお〜沢山あるね〜流石都会。流石ニットリ」


「俺も初めて来た時はびっくりしたよ」


 ルナちゃんが感心する様に言う。


 俺とルナちゃんの実家の近くにはニットリなんて無かったからな。ド田舎だし。


「あ、ルナちゃん布団って何買うか決めてるの?」


「だいたい調べて決めてる!私はデキる女だからね!」


 ドヤ顔で胸を張るルナちゃん。


「おお…すげぇ。俺とは大違い」


「そうでしょ!…お兄ちゃんは布団選び失敗したの?」


「うん。新生活、オシャレにキメようと思ってて柄がオシャレな掛け布団をネットでテンションに任せて買ったら圧迫感凄くて眠れなかったんだよ。洗いにくいし通気性悪いしで……それからは実物見て買うようになったんだ」


「ふふっ、オシャレとかお兄ちゃんっぽくないね、お兄ちゃんにもそんな欲望あったんだ」


「いや、欲望っていうか俺だって男だし1人での自由気ままでオシャレな生活に憧れてたんだよ?今は完全に実用的な事が第一だけどね」


「実物的って例えば?」


「やっぱり使いやすさとか便利さかな?」


「確かに実用的だね。うん、やっぱりオシャレさより実用的かって大事だよね」


 と、そんな話をしていると店員さんが話しかけてきた。


「なにかお探しでしょうか〜↑?」


 猫なで声で話すおばちゃん店員さん。


「あ、はい。連れが布団を探してて……」


「どのような布団をお探しでしょうか?」


「え、えっと……」


 おばちゃん店員がルナちゃんに聞くも、ルナちゃんは口ごもって、答えられない。


「あ、すいません、まだ具体的には決めてなくて。用があったら言いますんで」


 おばちゃん店員さんにそう言うと「失礼致しました〜」と言って去っていった。


「ルナちゃんどしたの?」


「……私、グイグイ来る店員さんがめちゃくちゃこわくて。まだ慣れてなくて……」


「なるほどーまぁ、あっちにはグイグイ来る店員がいるみたいな店ないからね。俺も最初は怖かったし」


「……お兄ちゃんありがとう、守ってくれて」


「いや、大丈夫気にしないで。そのうち慣れるだろうし」


 その後、俺の服の裾をぎゅっと握るルナちゃんが可愛くて仕方がなかった。

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