第2話襲っちゃうかもよ?
「ひ、久しぶり〜ってうわっ」
誤魔化すそうにドアを開けた瞬間抱きしめられた。
「あ〜
すうぅぅぅぅ
……なんか吸われてる。
「ぷはっ、えへへ〜久しぶりお兄ちゃん!」
パジャマに埋めていた顔をあげるとニカッと笑うルナちゃん。
「あはは、久しぶり。元気にしてた?」
「もちろん!……ふふっ、ていうかお兄ちゃんまだパジャマなの?もうすぐ1時だよ?」
「あ、ちょっと今さっきまでベッドでごろごろしてて……今から朝飯兼昼飯食べようとしてたんだ」
「も〜ちゃんと3食食べなきゃダメだよ?……とりあえずここで話すのもアレだし中入っていい?」
「いいけど少し汚いよ?」
「気にしないよ。お邪魔しまーす」
そう言うと楽しそうに靴を脱いで中に入っていくルナちゃん。
「……今日からここが私のお家か〜」
呟くルナちゃん。
「えーっと……結婚の事なんだけど」
「……ん?結婚がどうかしたの?」
「と、とりあえずそこのイスに座ってくれるかな?」
忘れてたなんていえない!
「……まさか、お兄ちゃん、恋人がいるの?」
「えっ」
瞬く間にルナちゃんが泣きそうな顔になる。忘れてしまっていた自分への罪悪感が凄い。
「いないよ!正直、急に結婚は早すぎるって!ルナちゃんはもっと自分を大切にしなよ!」
俺がそう言うと泣きそうだった顔を一転明るくさせ、嬉しそうな表情のルナちゃん。
「えへへ〜お兄ちゃん相変わらず優しいね」
優しい笑顔になったルナちゃんを見てほっとする。
「でも、お兄ちゃん。私はこの10年間で決意はしてきたし大丈夫。もしお兄ちゃんがパチスロカスでも浮気ばっかするクズ男でも私がその根性叩き直す位の覚悟はあるつもりだよ?」
「パチスロカスじゃないし、恋人は今まで1人もいません。あ、……じゃあさ、1ヶ月同棲してみない?」
「同棲?」
「そう、同棲。今のルナちゃんの事、俺よく知らないしさ。ルナちゃんだって俺の事をちゃんと知ってそれでも結婚したいって言うなら、しよう。お互いのためにも」
「お互いのためなら、いいよ同棲しても」
「良かった〜」
「でも、お兄ちゃん」
「へ?」
ルナちゃんが席を立ち、俺を軽く抱きしめる。
「同棲なんてしたら私、我慢できずにお兄ちゃんの事……襲っちゃうかもよ?」
そして、耳元で囁かれる。ふんわりとするいい匂いに、俺の肌に触れる綺麗な金髪。吐息が耳に当たる。
味覚以外の五感を奪われてしまった。
「……なんてね。ふふっ、冗談だよ」
ルナちゃんが離れても心臓がバクバク鳴っている。さっきまでのルナちゃんとは別人みたいだ。
「る、ルナちゃん?」
「……私だっていつまでも子供じゃないよ?それに…お兄ちゃんのために変わったんだよ?」
上目遣いで見つめてくるルナちゃん。
「〜っ!顔洗ってくるね!」
このままだと、襲ってしまいそうだ。顔を洗って気持ちを律さなければ。
俺はヘタレなのだ。
―――
【ルナちゃん視点】
あーあーーーーーーーーーーーっ!この馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!!!!!!さっきまで演技するの忘れてたし!!!!!
あーあーーーーーーーーーーーっ!この変態!!!!!!!!完全にお兄ちゃん引いてたよ!!!!!!!!!!!
うぅ……子供扱いされない為とはいえ恥ずかしすぎる!!!!……でも、お兄ちゃんと会ったら嬉しすぎてさっきまで素で話しちゃってたし…
でも、素の私なんて女の人として意識してくれないだろうし…今更だけど大人の女を演じるしかない!……お兄ちゃん、約束忘れてたよね。でも正直、私みたいな子供との、10年前の約束なんて忘れて当たり前だ。だからこそ、新しい私を演じなければ!!!!!!!!!!
……同棲か〜えへへ〜って……そうじゃない!私は高校時代、演劇部の元エース!今からでも演じきってみせる!!
お兄ちゃんが顔を洗ってる間、私は乱れた気持ちを律するためひたすら机に頭を打ち付けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます