1-6

 


突然の襲撃に、どう対処したのか全く覚えていない。


・・・ぼんやりとだが、光景が目の前に浮かぶ。少し重みを感じると、センさんが僕に覆い被さり守ってくれていた。その隙間から見える隊長・・・は、真っ赤なものに染まって倒れていた。


センさんは不安げな僕に小さく笑みを浮かべて、「大丈夫そうだな、シアン。・・・一人で立てるか?」とこちらを心配して言葉をかけてくれた。


それに答えようと、口を開いた瞬間、真上でピカッと光が見えて、それから、それから・・・。


 

ーーー

 それから、目を覚ますと、真っ白な部屋だった。


 痛みから身体は動かず、また力が抜けている感覚が気持ち悪い。そんなことを考えていると、ドタドタと騒がしい足音が聞こえたかと思うと、医療士がこちらに来たようだった。


「シアンさん、分かりますか?」


「・・・はい。」


 そう返事をしたものの、どうしてここに居るんだろうか・・・?と真っ白な空間を見つめた。意識ははっきりしているのに、何も動かすことが出来なかった。身体も、思考も、何もかもが動く気配を感じられなかった。


 先程、声を掛けてきた医療士から、ここが医療院であることを教えてもらった。そして、前線部隊、移動部隊共に全滅したことを聞かされた。


「・・・全、滅・・・?」


「はい、突然医療院の前に飛行船が現れたと報告を受けております。」


「突然・・・、ですか?」


「はい、魔力反応を確認したところ、シアンさんの魔力で移動をしたようでした。そのことで、軍の方々がいらっしゃるようです。・・・お通ししても大丈夫でしょうか?」


全滅したということ、僕が動かしたということが理解できず、思考を必死に巡らすが、動くはずもなく、とりあえず、小さく頷いて見せた。


 それからすぐ、軍の方々が病室へと何名か入ってきた。


「シアン隊員、覚えていることがあれば話しなさい。」


「・・・申し訳ありません、何も・・・辛うじて覚えておりますのは、隕石の様な大きな魔力の塊が空から降ってきたことぐらい、です。」


 必死に思考を巡らせて、それだけ絞り出した。僕の発言に、納得のいっていない様子ではあったが、「そうか。」とだけ返ってきた。


「敵に我々の情報が渡らなかったことだけが良かったな。・・・全く、どうしたらあんな無様な死を晒せるのだろうか。君の様な優秀な人材が、あのクダン隊にいたなんてな・・・ぜひ、我々の部隊に・・・」


 隊長たちへの侮辱の言葉に、目の前が真っ赤に染まった。それ同時に、医療院の外に前線で受けた魔力の塊・・・イメージ的には隕石を降らす様な形で、魔力を作り出した。その塊が地面に着いたと同時に、あの時に聞いた破壊音が響いた。


「な、何だ!?」


 彼らは、破壊音に気を取られていたせいで僕の変化に気付いていない様であった。僕自身も、まさか、敵の魔法を使うとは思っていなかった。あれだけ大きな魔力を使った為、瞳も赤く染まっただろうから、と必死に怒りを沈める。目の前の赤が消え、小さく息をついた。


 怒りを落ち着けるのに必死になっていたせいで、彼らの中で一人、冷静にこちらを窺っていたなんて気付くことが出来なかった。


 


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