1-2
「では、行って参ります。」
当日は、そう声を掛けて家を出た。・・・その時に見送る両親の表情は、どこかホッとした様子だったのを強く覚えている。それに、邪魔だったんだなと、内心呟いたと同時に、胸にぽっかりと空いていた穴が、広がった気がした。
用意されていた馬車に乗り、国王様の住む城へ向かう。規則的に響く馬の足音に、耳を傾けながら、ふと思い出す。・・・あの雨の日に見た本当の両親の驚いた様な、恐怖の色が前面に出た表情を思い出し、少し気分が落ちる。
それを、首を振って払い落すと、恐ろしくも感じる国王陛下への謁見に緊張を高めつつ、ふぅ、と小さく息を吐いた。
六歳だからと言って失敗するなんて許されない、それがジハード家のルールだ。“自分のことは自分で”と言われたのは、この家に来て間もない頃だ。そのせいだろう、子供らしくない子供に育った。メイド達からも可愛げない、と言われているのも気付いている。
・・・そんな嫌な記憶に、またしても首を振って払い落した。
顔を上げると、いつの間にか城に到着していたらしい。城で働く人々は、魔力が強いことはある程度、予想はしていた。城の至る所から感じる魔力に、戸惑いを感じつつも、一際大きく禍々しい魔力に、戸惑いの感情から恐怖に変わる。
城門前で迎えに来た近衛兵に「こちらです。」と案内を受けつつ、謁見の間に通された。城に通されたのは、僕一人だけだった。
城門前で感じていた禍々しい魔力は、だんだんとこちらに近づいてきている。恐怖は更に膨らみ、身体の震えが止まらない。
止めないと止めないと、とギュッと右手で腕を掴み、爪を立てる。少しの痛みを感じると、恐怖に震える身体が止まってくれた。
それにホッと息を吐いたところで、重い扉がギシリと音を立てた。そちらに視線をやり、入ってきた人物に、バクリと胸が跳ねる。治まっていた身体の震えがまた戻ってきた。恐怖からなのか、心臓をギュッと掴まれるような感覚に、どうしていいか分からなかった。とりあえず、一ヶ月前から教え込まれた通りの挨拶をすべく、右膝を地面に着き、上げろと言われるまで頭を下げたままにする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます