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リーダー…カスターと出会ったのは、ルリアン本部のあるウタ国に敵対する“シン国”に所属していて、傍にチュンしかいなかった頃だ。
軍事力で大国となり、好戦的な王が治める“シン国”。僕にとっては母国で、家族の代わりでもあった。もちろん愛国心は持っていたし、…戦闘が日常にあることにも、疑問を持ったことがなかった…と言えば、嘘になる。だが、強い豊かな国が長く続く為には、必要なことだと分かっていた。
そんなシン国では、三歳になると魔力の潜在値を量るというのが義務付けられている。…僕の潜在値は人の十倍以上…数値化できない、という結果だった。
国としては、受け入れ…いや、大層喜ばれた。…反対に両親は喜ぶ、何てことはなく、「化け物。」とだけ呟いて、僕を捨てた。…国に引き渡す、という形で。
引き取られて、六歳ぐらいまでは自分が恵まれているとも感じていた。いい家に新しい両親、全てが綺麗で華やかで、ジハード家は僕の自慢だった。それが偽物で、綺麗なものでも何でもないと分かったのは、ある日、街で買い物に出掛けた際、生みの親と会ってしまったからだ。
生みの親の記憶はなかったが、写真を持っていた。国に引き取られた時に、持たされたものだった。
街で出会った両親には、僕の後に二人の子どもが生まれたらしかった。母の手には女の子が、父の手には男の子がいた。四人は笑いあって、僕の前を歩いていく。
…“幸せ”というのは、ああいったことを指すのだろうと思った。僕は今の両親と一緒に歩いたり、手を繋いだことはあっただろうか?全く記憶にない。
…それにあんな風に笑いあったことなんてない、暗い感情が胸に広がったと同時に、快晴の空に黒雲が覆い被さる。闇が辺り一面を覆った。
それは僕の感情とリンクしているらしく、涙が頬を伝うと、同じ様に雨が降り始めた。
本当の両親や周囲の人々は、慌てて店や家に駆け込む。僕の世話役も「シアン様、車の中へ!」と大声で僕を急かす。それが本当の両親の耳に届いたかは分からない。
大雨の中、ボーッと立っている僕は目立っていたらしく、二人の視線はこちらに向いていた。…そして、目を見開き、嫌悪の色を露にし、子ども二人を庇うようにして、お店へと消えた。
…このときに捨てられた、ということが、胸にストンと降りた。そして、僕は恵まれてなんていない。恵まれているのは、弟と妹…いや、男の子と女の子の方だった。
このあと、どうやらその場で意識を失ってしまったらしく、朝起きると、そのあとの記憶は全くなかった。ボーッとする頭で思った。倒れた僕を心配してくれる、傍に居てくれる人なんていなかった。それから、今の両親には捨てられない様に努力した。
…でも、それも必要がなかったことに気付くのは、二年後の八歳になって、国王陛下に挨拶に行く日だった。
一ヶ月前から基本的な挨拶の仕方からみっちりと叩き込まれた。そんな様子を両親は満足気に見ていたのを覚えている。
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