第21話物語を閉じる前に⑫

『In my hand』


「命」というものは。

「生きている」という奇跡のことである


命は儚い、命は尊い、命は眩しい

だって命は奇跡だから

奇跡は頻繁には起こらない

命は当然のようにはうまれてこない


奇跡はレアです

貴重です

生きてることが、奇跡です


命は奇跡、生きてる奇跡

だから簡単に消えてしまう

まるで流れる水のように

手の中からするりとすり抜けてしまうもの

奇跡は簡単に終わってしまう


「生きる」ということは。

そんな風にすり抜ける奇跡を

自分の手で握るということ

命という奇跡を

すり抜けないようにしっかりと握りしめるということ


どうか忘れないで

奇跡を握る人たちよ


奇跡はずっと起こるものじゃないのだと

その手で握り、守って、掴み続けなければ

奇跡は奇跡じゃなくなるのだと


奇跡はいつかは必ず壊れて消える

生きてる時間は限られる

命の価値は奇跡の価値に相当する


あなたのその手で握りしめて

輝く命と奇跡を握りしめて

いつでもそれは手の中に





『With my heart』


「魂」というものは。

体を離れ、命を手放したその他もろもろのことである

意外と色々含まれていそうだ


「命」とは「生きているという奇跡」

と考えて

奇跡が終わればどうなるか

体を残して天国地獄どこかへ逝きます

体を拒否する遠いくに

パスポートを見せてくださいな


私は「これ」ですと自分を見せる

ぐぐいと見せる

マイ ソウル


燃え尽きて終わった奇跡が育てたもの

それが自分の魂です

終わるときまでに育ったあなたを見せましょう


例えば卵の形をしていて

殻と白身におおわれた

心という黄身がある構造

そんな気もしないでもない

結局見えないものだけど


産まれて生きて、育っていく

魂というものは

きっときっと、そういうもの


魂を育てているあなたに言いたい

大きく、らしく、育ってください


命という奇跡はいつかは終わる

そのときまでに

どこかへいくために

誇れる魂であってください

誰かのためじゃなく

自分のために

誇れる魂であってください


奇跡が終わったそのときに

胸をはって旅立てる準備を

今からしてください


『魂』というものは。

『命』という奇跡を手放した後に

体を置いて旅立つ

「私」というパスポート





『迷路』


壁に片手をこつりとついて

ここから抜け出そう


遮る壁のあなたはだあれ

ぼくは向こうのあの人に会いに行きたいだけ

お願い、お願い

急いでいるんだ


ひどく遠回りしたこの路で

新たに出会ったあなたは親友

会いたいと願った遠くのあの人は


ただの憧れで

ただの他人


迷った時間は何の時間





『tea o coffee』


紅茶にしましょか

コーヒーにしましょか

今日の気分はどちら様


さあ、カップが待ってる

注がれるのを

たっぷり満たして欲しいよと


今朝は寒いね ホットの気分

まだまだ暑い? アイスの気分


tea or coffee どちらがいいの?

心を癒す香りはどちら

tea and coffee どちらもいいの


片方だけは選べない


今日の気分はどちら様

明日の気分はどちら様

コロコロかわるカップの気分

今の気分はどちら様


はやくはやくと急かさないで

じっくり淹れる時間を頂戴

選ぶ時間もゆっくり頂戴

それが今の気分なの


tea or coffee どちらにするの?

どちらにするかあなたが決めて

用意ができるそのときまでは

椅子に座って待っててあげる

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