第17話物語を閉じる前に⑧

『どこにいった?』


昨日、あの子が姿を消したようだ

どこをどうさがしたって

あの子は世界のどこにもいない




暗く寂しい土の中

何かが足りない人の形

たったひとりで眠ってる

赤く熱い焔の中

冷たく冷えた人の形

灰になるまで燃やされた

硬くて狭い棺の中

形なくした人の形

出れないように蓋された




神様神様、どうしてですか

どうしてあの子を連れていったの

どうしてあの子はいなくなったの


だってあの子は悪くない

あの子はなんにも悪くない

なのになんで連れていったの


涙を流して彼は言う


問われた神様こう言った


だってあの子はいい子だからね

だってあの子は悪い子だからね

いい子は拐って天の国へ

悪い子は拐って地の獄へ

はやいおそいは関係ないさ

いつかは君も連れていく


神は隠すものだろう?

ならば、神は拐っていこう


今日はあの子に気が向いた

ただそれだけさ


神様笑ってそう言った


気づいているの?

神様の気持ちとないはずの眼は

今度は彼に向いていること




今日、彼が姿を消すらしい

どこをどうさがしたって

世界のどこにも彼はいなくなる


きっと神様に拐われたんだ

あの子とおんなじように

誰かの死を神様に尋ねたりなんかしてしまったから

誰かの行方を神様に聞いてしまったから


いなくなったのなら

世界のどこにもいないのに

もうあえるはずないのに




明日、誰かがいなくなるらしい

明日、僕はいなくなるかもしれない


誰もがいつか、いなくなる

そしたらどこへ、いくのだろう





『遠い祭り囃子』


えっさほら えっさほら

したした したこりゃ

掛け声合わせて屋台を引けよ

タンタカタン タンタカタン

シャンシャン シャンシャン

ドンドドンドン ドンドドンドン

拍子に合わせて躰 舞わせよ

笛の音響けりゃ面踊る

太鼓響けりゃ心躍る


幾年幾度受け継がれし信仰は

祠とやしろに今なお住み続ける

神が住まうその地には

恵みと繁栄 みのるだろう




神様神様どこにいる

神様ただいま出張中の

月夜がいっそう綺麗に輝くこの夜にはね

どこの土地でも音響く


神様神様どこにいる

神様ただいま隠れ中の

稔りがみのる秋月美しこの夜にはね

今でも彼らを囃し立てる




今年もかわらず秋桜咲いて

帰り道には彼岸花

紅葉がはらりと手を広げて落ちて

銀杏ひらりと扇を落とす


蝉から交代

秋虫合唱(コンサート)

日が駆け足で地平線へと下りていく


神様神様

もう秋ですよ

今年もかわらずみのったよ




感謝を捧げたい

神様たちに

だけどどこにも聞こえない

神様囃すあの音が


今年もかわらず秋巡る

だけどどこにも聞こえない

タンカタンカとあの軽快な

祭り囃子が聞こえない


神様神様どこいった

祭り囃子が響かないこの土地の

いったいどこへいっちゃった


今年は遠くで響く祭り囃子

神様だけで晩酌してる

祭り囃子を思い出し

きっと笑っているのだろう


遠くで響く祭り囃子

誰かが鳴らしているのかや

誰かが聞いているのかや

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