第15話物語を閉じる前に⑥

『のびろ竹の子』


1日隠れて見つからず

2日気配を感じて素通りし

3日なにかが見えても気のせいか


雨が降ったら探しにいけない

下では伸びてる育ってる


5日探しに行く気も起きない

6日掘り出す道具を忘れて戻る

7日立派な竹になっていた


竹の子は伸びるのが早い早い

誰でも才能という竹を持つ子どもさ


伸びろ、竹の子

伸びろ伸びろ、竹の子

空まで伸びろ、竹の子よ


竹林に隠れる目立たぬ竹の子

あっという間に天まで突き刺し

食われる間さえも与えることなく

どんどん伸びろ


才能は1日にして見つからず

されど見つかれば伸びるのは容易い


今日も春の嵐を受け

ぐんぐん伸びる

竹の子たち





『あなた、ミツケタ』


あなたが見つけた赤い花

あなたと見つけた赤い花

今年も何処かで咲いている


キレイでサミシイ彼岸の花

誰かを見送る曼珠沙華

今日は何処かで咲いている

明日は何処かで散っている


あなたを見つける赤い花

あなたは見つけた赤い花

どこか淋しい赤い花


あなたも見つけて

赤い花





『夢を叶える切符』


叶えたい夢はありますか?

はい、と頷けば笑顔で質問表を差し出される


叶えたい夢を見つけましたか?

夢に近づくための一歩を踏み出す勇気がありますか?

それはあなたの夢ですか?

それは誰かの夢ですか?

今、どこまで夢に近づいていますか?


印を一個二個とつけていく


その夢を言葉にできますか?

それはすぐに諦められる物ですか?


目の前に置かれた一枚の切符


最後にサインをしたら

質問表を返してください


あなたには夢を叶える―


生まれてすぐに手にする夢を持つ資格

育つうちに見えてくる才能と資質

神様が与えたであろう運


何度も何度も質問表を書き直し

何度も何度も切符を手にする

何度も何度も切符を手放し

何度も何度も振り返る


あなたに夢はありますか?

切符には夢の目的地が書かれていない

だって、切符はただのきっかけであり手段なのだから


夢に辿り着く最初と最後の一歩は

いつだって自分の足でないと

意味がない


あなたの夢はどこですか?





『夢と幻実』


うつらうつらと夢を見る

結局のところ、何も叶わぬではありませんか

夢の最後で涙を見せる


いつも叶わぬ夢物語

それらはまるで造花のよう

いつまで経っても花のまま

実になり口に入ることなき甘い花


実になる時が来なくとも

散らぬ花ならいいではないか

いきてなくともいいではないか


実にならない花は咲き続ける

ああ、今日も水を与えなくては

無駄な努力を与えなくては


うつらうつらと夢を見る

今日も咲く花の夢を見る


いつしか目を開け世界を見るも

それは夢の続きである


現実というフィルターを通して見た

幻の世界

扉を開けて、見てごらん

私の前には二つの扉


ホラーとファンタジー

今日はどちらの扉を叩こう

残念。結局どちらも開ければ同じ

フィクションです。

そうですか。ならば、どちらに入っても私を裏切ることはないでしょう。

今日はどちらの扉を叩こう


叩いて入るページには

計算し尽くされた文字の羅列

現実にはない理想の世界

これが私の世界です


これが私の夢なんです


現の夢は実にならない

ならば夢の中で幻の実を育てよう

食べることができない

甘い果実を成らせよう


私の中の夢だから

どんな形をしていてもいいのでしょう?

花の形はキレイに見える

けれど実の味は誰も知らない


だって、夢の中だけにある幻の実なんだもん

現実にはできないよ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る