第14話物語を閉じる前に⑤

『ルーズリーフ』


ひらりと白が舞い落ちた

染められることを夢見て

だらしない葉っぱたちが舞い落ちた


一冊のファイルという木から落ちた葉っぱたち

ぐだぐだだらしなく文字が書かれるのを嫌がった葉っぱたち

見られるだけの文字ならやめて

彼らは解かれる為に書かれたの


葉っぱを色づけるのは思いなのさ

さあ、色付けてみて

君の心色で


ひらひら舞い落ちるだらしない葉っぱ

葉っぱが伝えたいことは

君に届いていますか?





『風吹いて』


風吹いて


全てが流れてく


終わりに向かって、流れてく


さよならという言葉もさらって

風はどこかへ流れてく



心の雲も



涙の雨も



全部を描き消したあなたの風


追いかけて世界を広げた私の風




風が吹く

今日も変わらず風吹いて

変わる明日へ向かっていく






ありがとうの言葉は

もう届かない





『水に流れて』


全てを0に還そうか

歩んだ道も

見てきたものも

水が流れて何も残さないように


そうだ

自分も流れてしまおう

目を閉じ

息を静かに吐いて

二度と空気が吸えない世界へ




そんなのできないと知っている




目を開き

息を吸い

声をあげる


水に流れて流された

私の行き着くその場所は

願いの行き着く場所なのだから





『晴れた日に』


ぽかぽかほっこりあったかにゃ

こんな日にはおでかけでしょう


桜を見に行きたいな

藤にヒマワリ、モロコシ畑

海へ会いに遠出もいいかもね


ツバメを追いかけ走ってみる

猫に出会って止まってみる

気づけば夕暮れ

時間が全然足りないや


明日もきっと晴れるでしょう

あなたに会いに行きたいな





『ぼくのともだち』


君がくれた笑顔

両手いっぱいの思い出

君たちがくれた大切な時間

ひとりじゃないあたたかい時間


戻ることはない君たちのぬくもりは

今でもぼくの心に残ってる

命の意味が芽吹いてる


駆けてくよ

明日に向かって

君から学んだ愛しさを

今度は翼にかえて

はしっていく


ねえ大切なぼくの





『ちょっとふるい映画』


あなたの一番の映画は何ですか?

これから作られる予定の手付かずのフィルムたち?

これから上映される予定の完成されたばかりのフィルムたち?

ぼくのおすすめ、観たことあるかい?


最新映画は驚きを

去年の映画は考察を

もっと前の映画は懐かしさを


気に入ったフィルムを何度も何度も観ることで

製作者たち以外の思い出が

上書きされていく


今はもういない俳優も

フィルムの中では生き続ける

音楽を聴けば思い出す

台詞もシーンも心によみがえる


あの人が語った映画たち

今度は自分が語れるくらい

時間も記憶も

重ねた回数

数えてない


新しい映画を古くしよう

今度はもっと新しいものが出てくるから

ちょっと古い映画をもっと古くしよう

たくさん観て味を出そう

古い映画は化石なみ

埃じゃなくて年月と価値が山積もり


今度はどれをみてみよう

再生されるのを待つフィルムたちは

ゆっくり時間を重ねて

ふるくなっていく

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