第6話『桜ヶ原小学校同窓会へようこそ』1~10

『桜ヶ原小学校同窓会へようこそ

-プロローグ-』


やあ、よくきたね

待ってたよ

さあ、聞かせて

君のとっておきの話を


同窓会の案内状を手に向かうぼくらの最期の舞台

桜舞い散る最期の舞台


約束したあの場所で、ぼくたちみんなは待っていた

約束を果たしに、再び集まった仲間たち


今、開宴の時間。





『せんじょうえき』


あの公園の桜がね

夜に咲いてるのは絶対見ちゃダメ


狂うから


あの公園の桜はね

君に見てもらいたがってるの

今まで何があったのか


狂わせるくらい


「せんじょうえき、もってきて」

よく聞いてごらん?

「せんじょうえき、きて」

ほら、桜が呼んでる


いくの?いかないの?






『両隣の家』


俺の家の両隣

それぞれ爺さんと婆さんが住んでいた

今はいない

その二人


爺さんには爺さんの

婆さんには婆さんの

それぞれ違った人生があって

事情があって

話がある


だから、その間にある家に住む

俺には俺の

話がある


だけどな

俺の話の一部はその二人が作ってくれた


俺の両隣の家





『引きずる音』


俺の後輩がコンビニのオーナーになったんだ

今はもうないけど


曰く付きの角の場所

入れ替わりの激しいあの場所は

きっと「なにか」がいるはずだ


たすけて

呼ばれた

タスケテ

待ってろ


角にあるあのコンビニ

夜中になにか、聞こえてこない?

例えば、ほら

何か引きずる音とかさ






『引きずられる音』


私の後輩たちがコンビニのオーナーになったの

今はもうないけどね


角のコンビニ

何かが潜む

夜になると、ほら

聞こえてくる


何かを引きずる音

誰かを引きずる音

誰かが引きずられる音

連れてかないで


きっときっと助けるわ

大切な後輩なんだもの

だから待ってて


間に合って






『引き戻す音』


後輩たちがコンビニのオーナーになったんだ

今はもうないけどさ


あの角のコンビニ

飢えた獣が地下にいる

腹を空かして獲物を引きずり

足りない、足りないと貪ってる


いなくなった二人の後輩

足跡追って

はい、終わり

笑って助けてハッピーエンド


守りたいから笑って終わる

真実は?






『角のコンビニ』


俺たちの後輩がオーナーになったあのコンビニ

今はもう中身を失った元コンビニ


腹を空かした獣は寄越せと吼える

俺たち二人はかえせと吠える


消えた後輩は帰ってきた

今もコンビニをやっている

交換取引を後で知る俺らの後輩


笑ってさよなら言うからさ

笑って生きていってくれ






『切り株の上』


あの切り株の上に置けばなんでも消える

七不思議が一つ目、いざ参る


苛めて虐めて嗤うバカ

まわりはみんなないている

不条理不平理この上ない

ならば制裁下そうぞ


罪人切り株の上に置き

悔いても判決死刑のみ

首を落として地獄へ送る

見届け人よ、覚悟はよいか


後悔なんてない筈だ






『歩道橋』


毎日渡る歩道橋

見下ろす町はちょっと狭い

くだらないと吐き捨てて

一人で渡った

スカート翻し


毎日渡る歩道橋

隣の友と笑いあう

いつしかできた親友と

二人で語る

私たちの夢


毎日渡った歩道橋

夕暮れの朱に浮かび上がる

何かは知れないその影に

今日は手を引かれて

まっ逆さま






『一ツ目、歩道橋』


渡れや渡れ

下を見て

一つが不思議、いざ参らん


架かる橋のその下に

望むものが見えている

決して届かぬはずのもの

在りもしない幻か


もっともっとと手を伸ばせ

さすれば怪異が手を引こう

奈落の底から伸ばさる手

奈落の底に連れ去ろう


歩きし道の橋の上

下には何が見えている






『交差点』


アコガレのあの人に初恋を

どこにいてもすぐわかる

ねえ、こっち見て

ねえ、こっち見て

声もかけれずカタオモイ


それでもあの人に視線を注ぐ

ただただ見ている

遠くから

見向きもされないコイゴコロ

いつでも余所見をしてばかり


気づけばそこは

交差点

叶わぬ恋の

交差点






『二ツ目、交差点』


想いを馳せよ

此方へと

二つが不思議、いざ参らん


橋の下に交差する

甘くて苦い

恋のミツ

誰もを魅了し離さない


見るべきものから目を離せ

さすれば怪異が導こう

此方へ此方へ手を惹いて

奈落の果てへと連れ去ろう


恋に現を抜かして余所見をす

今立つそこは何処だろう






『猫の集会』


にゃんにゃか にゃんにゃか

集まれ猫ども


秘密の集会

今夜開催

呼んでやるから手土産よこせ

ないならとっととどっかいけ


俺らが知らない猫事情

知らないだけか? 猫事情

実はどっかで見た気がしてる

どっかが似てる猫事情


にゃんにゃか にゃんにゃか

集まれ猫ども






『三ツ目、猫ノ集会』


にゃんにゃか にゃんにゃか

集まれや

三つが不思議、いざ参らん


呼び出したるは獣たち

月夜の晩に開かれる

世にも奇妙な猫集会


いい気になるなと人事情

いい気になるぞと猫事情

自分勝手な集まりで

議題に何があがるのか


今夜は猫ノ目 細い月

集まれ気儘な猫たちよ







にゃんごろ にゃんごろ

集えよ猫たち

今宵も夜空にといだ爪

キラリと光れば狩の時間


さあ!

立たせよ ここに 人の子を!

お前はいいやつ? わるいやつ?

今日のお題はあそこの子ども

ずらりと並ぶ猫ノ目が

細く鋭く見据えてる

お前はいいやつ? わるいやつ?


ここは猫ノ裁判所


さあ!

有罪? 無罪? 猫が決める

死刑だ! 死刑だ!

狩ってしまえ!

こいつは猫のためにならん

獲物を前に猫はわらう


人がえらいと思うなよ?

ここから猫ノ暴君タイム


人の常識猫は知らず

猫の常識人は知らず

我らのはかりでさばこうぞ


今こそ開廷

猫の世界


集えよ猫たち

月ノ下







『バケモノ行列』


用済みガラクタたくさんあつめて

みんなでいっしょに運びましょう


ちぎれたエモノをだらりとさげて

ずるずるずるずるずーるずる


列をつくって並んだら

オカシナ行列はじまりさ


いっしょにイコウよ

ガラクタさん

声かけ手をとりまざったら

今からキミもバケモノさ







『四ツ目、化け物行列』


化けては並べ

我楽多どもよ

四つが不思議、いざ参らん


未熟な輩は思うがまま

化けるまではただの物


我楽多と知るなかれ

瓦落多と知るなかれ

使い捨つまで愛でようぞ

それまで精々遊ぶがよい


所詮無駄な者共と

自ら知れば化ける物

知らずにいればただの塵


次は君の番だ







『ほこら』


目覚めよ古の祭壇よ

俺に新たなる力を授けるがいい

腐りきった世界を正すのが俺の使命

そうだ

そのためには如何なる犠牲も払わなければ

生け贄を


家族が僕を否定する

友人なんかいやしない

登校拒否

引きこもり

オンラインのゲーム世界が僕の居所


見つけたほこらは

新たな世界の扉となる







『五ツ目、祠』


扉を開いて奉れ

中に御座すは怪異なり

五つが不思議、いざ参らん


三つの不思議を通し行列

目指すは一つの祠なり

中に座りし神様の

お膝下へと侍るため

彼らはひたすらやって来る


中には神様祀るため

空虚な容れ物作られた

扉を閉じた祠は

時偶口を開けるだろう


中の神はどんな神?







『鏡』


毎日顔をあわせるの

あなたと

変わってく

変わらない

あなたを想って鏡を覗く


鏡を見るたび出会える気がして

違う私と

あの日のあなたと

笑顔になれるわ

きっとこれからも


そのままでいて

変わらないで

このままずっと


だから今日も鏡を見る

あなたを想って可愛くなるの

女の子は変わる







『六つ目、鏡』


覗き込めば

惹き入れ給う

六つが不思議、いざ参らん


鏡を通して見ゆる世に

己の理想は存在するか

夢なら叶わぬ夢物語

現を信ずる意志あるならば

彼の地で待とうぞ理想郷


変わらぬ現は幻か

幻こそが真実か

その目で確かめ

触れてみよ


鏡よ鏡

神なる鏡

我らに何を見せてくれる







『学び舎』


チャイムが響く、僕の学び舎

あの子の声が廊下で響く

あの子がグラウンドで呼んでいる

あの子が教室で待っている

青空広がる校舎には

たくさんの思い出が残される


またあえるの?


さよなら

僕の青春

思い出だけを残して風は去る


もうあえないね


今でも残したものたちは

置き去りのまま







『七ツ目、学舎』


懐かしき時間をその身に刻め

七つが不思議、いざ参らん


鏡の向こうに在りし世界

黒と白で彩りし

時間を止めた故き世界

其処は似て非なるカレラの世界


巡れ巡れ

七つの不思議

廻れ廻れ

終わることなき永久の時間


ずっとずっとこのままで

変化と成長を拒む子どもたち


これが最後?







『七ページ目を追いかけて』


僕たちの七不思議

一つ、二つと辿ってきた

追いかけたものは七つ目の先


ずっとずっとこのままで

七不思議は終わらない

ずっとずっとこのままで

巡って廻ってぐるぐる回る


子どものままでいたい子どもたち

きっと僕たちもおんなじだった


ずっとあえるよ







『七ページ目を追い越して』


もう会えないね


いつかは僕らも大人になる

さいごに迎える卒業の日


もし君が

また会いたいと願ってくれるなら

僕はきっと忘れない

あの青春の一ページを

ずっとずっと忘れない


最期の最後に書き足す言葉は

別れの言葉と

ありがとう


これにて七不思議

終了なり


さあ

七ページ目を追い越そう

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