第7話『桜ヶ原小学校同窓会へようこそ』11~20

『電話バコ』


5187


もしもし

もしもし


あなたのコイバナ聞きたいな


5187


もしもし

私のコイバナ聞いてほしいな


箱の中に入れられ続けるコイのハナ

誰かに語る

誰かの恋


もしもし、もしもし

ちょっと聞いて

どんな最後になったって

お願い

最後まで聞いてほしい


これは誰かの恋の話


5187

5187






『置き傘のこびと』


傘には小人が住んでるの


気になるあの人が持ってるあの傘は

すごくすごく大事にされて

きっとそうよ

住んでる小人が恋してる

主人に恋して、雨さえはじいて、

可憐に華麗に開いてる


そんな傘を相手になんて勝ち目ない

私は初恋の傘を閉じた


この傘にはこびとの恋人が住んでるの






『Hello my dear.』


Hello my dear.

大切な人に想いを届けて


同級生には「ひさしぶり」

両親たちには「ただいま」を

恋人たちには「おかえり」を


大切な人に伝えたい

大切だからそばにいたい


手と手を繋いで、はなさないで

絶対、絶対、はなさないで


ずっとずっと、一緒だよ


ねえ、愛しい人よ。






『眠りウサギ』


眠れ眠れ夢を見ろ

誰かがどこかで死ぬ時の

誰かの中から夢を見ろ


最期の時間に何を言う?

最期の瞬間、何おもう?


墓場まで持っていく筈の欠片たち

夢に沈む砂時計


眠れ眠れ

最期の時まで眠るんだ


七不思議が三つ目、いざ参る

上書きで書き変えられた砂時計

真実はどこに眠る






『狸村の援軍』


お伽噺はこう言った

「姫に助けて貰ったタヌキさん

恩返しにいなくなった姫に化けたとさ」


いつから消えた?眠りウサギ

消えた真実に届くのはまだ早い

時が来るまで化かそうと

助けて貰ったタヌキは化けたとさ


時が来れば手を貸そう

我ら狸は姫に恩を受け

散る時まで忘れることなし






『午前3時の神隠し』


二人の作者が書き上げた「午前3時の神隠し」

文が好きだった「自分」

絵が好きだった「彼」

ほんの少しの謎をのこす、その作品


書きたかった

完成させてと残した作者

書かなくちゃ

残されたものを完成させた作者


二人の作者の繋がりは

この作品に注がれた

君に託す、この話






『ラブ・レター』


私とアタシは親友なの

すっごく仲のいい、親友なの


廃病院でのきもだめし

後で起こった怪奇なストーカー事件

かたん

かたん

今日も手紙が送られる

差出人は死人から


二人で手をとり、何とかしよう

君がいるから大丈夫


私と彼は親友なの

周りにどう見えていても

大切な親友なの






『地下通路』


突然あらわる地下通路

食われる前に引き返せ

七不思議が四つ目、いざ参る


追われて逃げ込む地下通路

暗く寒い通路から

ざくざく刃が鳴る音がする


追った方は喰われて帰れず

追われた方は片腕なくす

残った腕を引かれて逃げる

懐かしき友はいと強し


通路の先では生きてはいけない






『伝染性吐血症害』


あの夏の夕暮れのように

全ては真っ赤に染まっていった


キラキラ輝く宝石みたいに

記憶の中に仕舞われた美しい思い出たち

いつまでも変わることない宝物


嗤って水に毒を注ぐ悪者たち

水は全てをさらって流れていく

悲鳴は赤く染まっていく


絶対絶対忘れない

俺の赤い夏休み






『甲羅干し』


大きな大きな甲羅が干される川の横

そこは竜宮城の言い伝えと

河童の伝承が共存しておったとさ


甲羅を持ってく欲見せりゃ

そいつは河童の非常食

干物にされて食われちまう


守って守られる関係望めば

あいつらだって応えてくれる


キュウリと酒で一杯やろうぜ

俺らは友だち

肩を組め!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る