第5話ショート ストーリーズ
『ショート ストーリーズ』
パラパラめくれば違う世界
あなたは別の主人公
パラパラめくれよ夢物語
届けたい言葉は別の声
集まれ集めよ集まった
短き文は繋がらない
されど一つの本として
綴じてしまえば短編集
始まり終わるの繰り返し
幾度も幾度も結末迎え
今日も始まる短き話
『C型かふん症』
花粉が舞うこの季節
ふわりフワリと何かが舞ってる
桜の花びら舞うこの季節
見える景色は幻想的
くしゃみが出ます
鼻水出ます
呼んでもないのに花粉症
ついでに余計なものまで見えて
おやおやこれは何かが変
花粉が舞ってる
花粉に混ざって化けて扮する
死の病
今年も春がやって―
『最後の缶詰』
もしも世界が缶詰だったら
中から見た外の世界は
希望に溢れているはず
そうだ、きっと
違うね
世界は缶詰で
僕らは缶詰に詰められている
誰の為の缶詰なの?
缶詰の扉が今開く
外に待っているのはなんだろう
世界は誰かの為の缶詰で
外の世界は絶望の光で溢れていた
「キミで最後ダヨ」
『あの日の雨』
雨の日に。
激しい激しい雨の日に。
彼らの命は奪われた。
信じられないくらい呆気なく奪われた。
最期に口にした言葉は、最期に思ったことはなんだったんだろう?
遺体は口にしない。
遺体すら見つからない。
彼らは声なき声で叫び続ける。
全てを連れ去り、押し流したあの雨はまた来ると。
彼らの、自分達の命がどのように奪われたのか、忘れてはいけないのだと。
雨は降り続ける。
遺された人々の心に降り続ける。
雨は降る。
自然という脅威は地球が生き続ける限り猛威を振るう。
雨は
雨は止まない。
あの日の記憶は、止むことのない雨の音と共によみがえる。
。
。。
。。。
今日も雨は止まないのだろうか。
。。。
。。
。
やがて、雨音は遠ざかる
晴れの日差しが、今度は降り注ぐだろう
『ほせいにんげん』
いらないものは切り捨てて
いるものずっと残しましょう
綺麗で正しく理想的
間違ってなんてありもしない
それがニンゲン
未来のニンゲン
くるくる廻る世界だけれど
安定しない
難しい
それならこんな世界はいかが?
それならこんな未来はいかが?
なんてスバラシイ!
「今の貴方が必要です」
そんな言葉に引っ掛かり
自分を「どうぞ」と差し出した
謎の団体
多分タダシイ
「今の貴方が必要です
ただし、要らない部分もありますよ」
自分の一部を持ってかれ
「必要なのはこれだけです」
言うなりごみ溜め突き落とす
「残った貴方は処分します」
一体何が要るものなのか
捨てられた要らないものたち
間違った『間違い』たち
面倒な『介護』たち
厄介な『正義の味方』たち
悪質な『悪者』たち
誰がするの『尻拭い』たち
そこに至るまでの『途中経過』
全部、全部、要らないものなの?
「それらは必要ありません」
それらは世界に必要ない
自分はきっと必要ない
切り落とされて、捨てられて
そんなものでも大事なもの
自分にとっては大事なもの
それでも世界にとっては不必要
要らない要らない邪魔ものだ
謎の集団
多分タダシイ
言ってることは、多分タダシイ
乱暴に叩いて暴言吐いて
弱いものたちごみ溜め棄てる
奪った一部は再利用
謎の集団
多分タダシイ
やってることは、多分タダシイ?
自分から奪われてしまったほんの一部
「正しいものだけすくわれます」
より正しくして、使います
世界はくるくる廻るけど
世界をまわしたいやつらは大体決まってる
『主役』じゃなくて謎の集団
そいつら、自分の思い通りにまわしたいだけ
そいつら、都合のいいように世界をまわしたいだけ
気づけば一部を持ってかれた自分たち
勝手に世界をまわされてる
気づかない間に
世界のルールが書き変わってる
やらかしたやつらは
謎の団体
多分タダシイ
補正が加えられた自分の一部
都合のいいように使われ続けて
ぼろ雑巾
補正を加える価値無し自分
見向きもされずに
地獄のごみ溜め落とされる
自分の存在消されて終了
残った一部はオニンギョウ
こんな世界はどうですか
補正がされたタダシイニンゲン
そんなヒトタチだけのユートピア
老いも未熟もなんにもないね
成長しない
ほせいにんげん
『みるふぃゐゆ-in the photograph』
太陽がのぼる
写真は静かだ
月がのぼる
写真は騒がしい
夜の間だけ動く写真の世界
彼らは写真の中の登場人物
現実とは違う写真の中だけの時間を重ねた登場人物
重ねて重ねて
時間を重ねて
一夜を重ねて
今宵も一つ不思議を重ねて
それらはまるで、ミルフィーユ
『アイ・コンタクト』
あなたを選ぶ理由はどこに
私を選ぶ理由はどこに
私を見てよ
手をのばさせるくらい、目が合うくらい、私を見てよ
見てますよ
選ぶあなたと目を合わせようと、熱くずっと、見てますよ
選んで
選ばれて
あって
あわせて
あなただけが特別なの
ほら。
今、目があいましたね?
『バケツのなかみ』
今日も地上は雨天気
空から「なにか」が降ってきます
空を仰げば一人の天使
バケツを持っておどってる
天使が通れば雨が降る
降ってみなけりゃバケツの中身はわからない
雨雨降れ降れ、今日も降れ
ラッキー ハッピー アンラッキー
どれが降るかは天気次第
どれが降るかは神次第
雨雨降れ降れ、もっと降れ
バケツの中身よ、もっと降れ
降らせる天使は雨天使
バケツを持った雨天使
さあさあ、地上のみなさん
ご覧あれ
今日も今日とてバケツの天使が通ります
傘のご用意はいかがかな?
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