第9話 犬よ、なぜ鳴く?
コンビニへ入るとゆるめの冷房がきいていた。
コンビニと言えば以前、あの某掲示板サイト『兄ちゃん寝る、母ちゃん蹴り起こす(仮称)』創業者が語った、オーナー紛争事件について一考を述べたい。
大阪府の某市コンビニ店舗オーナーが人材不足と諸事情で、時間を短縮したいと本社に相談、結果オーナーは事実上解雇され店舗の看板は使用不可に。
話はここからさらにエグくて、その店舗のすぐ近くに本社は新店舗をオープン。ていのいい見せしめで、本社に逆らったらこうなることを世間に知らしめた。
で私の感想だが、なぜブランドイメージを大切にしてきた、某コンビニグループが今回のような非情な手段に打って出たのか、何度考えても答えは出ない。
私にとってこのコンビニのプライベートブランドは、たまに贅沢したいときに購入する至福の商品であり、貧乏な気持ちを転換させてくれる手段だ。
なのでこれ以上は突っ込まないが、本当に残念だと心の底から思う今日このごろ。
犬を車内に残して私はコンビニ店舗の奥へと向かう。そこにはおにぎりが陳列されていて、そこから米の塊を2つ購入。
1つは山科区のコンビニに立ち寄るときの定番『大きなおむすび和風ツナマヨネーズ』
ツナ煮の混ぜご飯とツナマヨネーズ和えが、絶妙なバランスで、口に入れたあとも食欲を刺激する、某コンビニ至極の一品。普通のおにぎりより2、30円高額だが、まだ知らない人は一度試してみる価値あり。
もう1つも定番で『チャーシュー炒飯おむすび』
ラーメン屋さんの炒飯を執念で再現した、某コンビニが世へ送りだす安全牌の一品。うん、これは無難に美味くまずいわけがない。
この日は買わなかったが定番の一つに、銀しゃりむすび塩むすびがある。
昆布だしが米の味を引き立てる、実はいろいろ工夫されたベースはシンプル設計な商品。純粋に汗ばむ夏に塩がほしいときに最適、ただ塩味は控えめなので塩分を大量に摂取したい人は、
追記として述べておくが、商品を試しても美味くなかったとディスるヤツは、味がわからない連中なので、そこらに生えてるぺんぺん草を煮て食え。それが貧乏グルメ人からのアドバイス。
おにぎり二つを持ってホクホク顔の私はレジへと向かう途中、いつもならゆるめない財布の紐を、ゆるめてしまう。
中華まんの保温機にチーズピザまんを発見。
久しぶりのドライブに、気が大きくなっていたので誘惑に勝てず、泣く泣く購入。
トマトソースとチーズを使用してマズくなる方がむずかしく、チーズ好きのジジイには、カロリーを無視して食わせるだけの、キラーコンテンツだと感じた。
コンビニの経営戦略に乗せられた哀れな私に、読者の皆さまどうかお金をよこしてください。
私にお布施をすれば、1ヶ月に一回以上晴れの日に出会えます。それがご利益ですな。
会計を済ませ外にでて車をみると中で犬が鳴いていた。いつものことだが、こいつには専属の付き添い人が必要なようで、自分のことを何様だと思っているのかと
きっと私より偉いと錯覚しているのではないか?
ただこの犬にとっての不幸は、今回の主人は私だということ。私がルールなので鳴いてもダメやぞ、車の窓越しに目で威圧し老犬を
私の威厳とはつまりその程度。
早速犬のオムツをはずし、散歩をさせるためティシュ袋を持ってコンビニ隣の歩道へ。
犬の尿意が調子がよければ、湖西道路を超えて安曇川の道の駅までノンストップで行きたいと考え、不断より長めにトイレタイムをとる。
だが犬は初めての場所が気に食わないのか、地面や街路樹の匂いを嗅ぐばかりで、なかなか用を足さない。
「環境えらんでんやないぞ、自称セレブ犬が!」
とうぜん私の不平は自称セレブ犬を謙虚にはできず、何もないまま車中へ戻ることに。リードをはずしオムツを着用して、お漏らしのリスクに不安を覚えながらも、エンジンをスタートさせる。
いざとなればオムツが、車中への放尿を防いでくれるはず。私はそれほどオムツメーカーを信頼して、コンビニの駐車場を出るのであった。
しばらくして信号待ち、コンビニで買ったおにぎりの封をあけると、ツナマヨネーズのいい香りが車内に充満。
そのとき犬が一声吠えたので、私はきっと運転に気合入れろの合図だと、老犬の心中をかってに想像する。
そしてツナマヨネーズを一口かじると、さらに食欲をそそる芳香がただよう。
するとまた犬は吠える。
感心した、犬のリスク管理は運転手よりまさる、大丈夫大丈夫と犬を安心させてから、ツナおにぎりを全部たいらげた。
次は炒飯おにぎり。
簡単に開封できるラッピングを解いた瞬間、ラーメン屋の炒飯の匂いが車の中をかけめぐる。
犬は吠える、何度か吠えたな?
犬が吠える理由はいろいろあるだろうが、私はマイペースにおにぎりを食し、最後のチーズピザまんへと手をのばす。
犬は吠える吠える!
私はお前の気持ちは理解した、これからも安全運転で輸送します。とつぶやきつつピザまんを最後まで食う。
私が食べ終わるのを確認してから、犬は吠えるのをやめ、すねたようにクッションの中で丸くなった。
気分屋の老犬が静かになったのはいいことだと、私はつくづく述懐し、安心安全なドライブを犬に誓うのである。
滋賀県までの行程で見慣れた景色が窓外に流れてゆく。
車は国道1号線まで進出し、国道ぞいに並ぶ飲食店を眺めながら、私は中華料理屋のことを思いだす。
以前、いつだったか季節も定かではないが、あの『餃子の○将』にまた立ち寄った時のこと、私は金がないので車中に居残り、家主の初代様と2代様は店舗内へと消えてゆく。
きっとたらふく食ってるんだろうな、そんな妄想にふける私の耳に適当に流していたラジオの声が虚しくひびく。
これと似たような経験がチラほら。
回転寿司の『○シロー』に同じく回転寿司の『く○寿司』および『か⚪︎ぱ寿司』『は○寿司』に、ファミリーレストランのもろもろ。あと鰻もあったかな?そうそう『丸○うどん』も忘れてはならない。
数え上げるとキリがないが、これらの
ありがたいではないか、自然に断食業ができ、空腹のため普段の食べ物に感謝ができるようになるのだから。
人生とは毎日が修行である。
そう心に言い聞かせて、私の車は湖西道路に向かい前進するのであった。
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