第8話コンビニへ、いざ、突撃!

晴わたる空に白い雲、運転しながらポエムじゃね的なフレーズが頭に浮かぶ。


四季の観光名所が豊富ないにしえの京都も、紅葉こうよう一分咲いちぶざき。色づく木々もまばらだったが、それとは関係なくラジオ時々ときどきカーミュージックの車は、制限速度ギリちょんで走り続けた。


昼の運転は爽快だが、深い暗青色あんせいしょくに飲み込まれた夜の高速道路も乙。等間隔で伸びる側壁そくへきの視線誘導性に優れた低位置照明が、室内に流れる音楽とシンクロして運転に没入させる。走行車線に続くテールランプと対向車線のヘッドライトは、命の終焉と始まりを連想させた。高速道路下に広がる街中の夜景も、光の宝石箱のように夜の闇に浮かんで見える。


犬を送り届けた帰りは夜の走行になるだろうかと、密かな楽しみを胸に秘め、白昼の高速道路上を爆進。京都南区を掠めながら山科方面へと舵を切る。


南区ならやはり東寺だろう。私がユネスコに頼んで世界遺産に登録した?あの東寺だ。


正確には覚えていないがここも2、3回来たかな?講堂こうどうの仏像彫刻に興味を持ち、拝観料を賄賂わいろとして払い、もとを取るために穴が開くまでじっくり見てやった記憶はある。劇画チックなイカつい顔の諸仏と睨み合いの末、私は堂々と勝利した。


そう言えば、これらの仏像を国宝に認定したのは私ではなかったか?


うん、きっとそうだ、文化財に敬意を払うためにも、拝観者は認定した私に感謝しつつ、仏像に手を合わせなさい。


第二京阪道路も無料区間に入り、東山区と伏見区に挟まれた道路を直進。稲荷山トンネルを目指す。


東山区まあまあ観光スポットが多い、清水寺・三十三間堂・八坂神社・東福寺・京都国立博物館・祇園に、飼い犬と飼い猫と自動販売機にお土産屋さん。オモチャ箱みたいに名所名跡がゴロゴロしているので、旅好きは是非とも札束をたんまり持って訪れよう。汗でドロドロになりながら物色した経験を持つ、私のおすすめシーズンはズバリ!


真夏。


盆地特有の蒸し風呂的な京都の夏は、歩くのにはもってこい。塩分・ミネラル・油脂を全身から吐き出し、ダイエット効果を感じながら、観光地以外の住宅街をうろつけば、きっと新しい発見が待っている。運が良ければ京都府警巡査部長による、職務質問などにも遭遇できるかも。


ところで、私は大阪でチラシ配りをしていた最中に、職務質問を一度受けたことがある。パトカーの横に立つお巡りさんが手招きをしているのいで、俺は某国の諜報員で爆弾を持って歩いている、とは言わず、白と黒に塗装された高級車に素直に乗り込んだ。


5分ほど、財布の中身や広告を入れたリュックを入念に調べられ、あっけなく解放。パトカーは次の獲物を探すためどこかへ消える。このとき人を無実の罪で疑ったあげく、謝罪もしない警察官に思ったもんだ。私が国家公安委員長に上り詰めた日には、貴様ら全員なにがしかの国家権力を行使してやるからな、覚悟しておけよ、と。


善良な正義の警察組織に感謝しながら、私の車は稲荷山トンネルに侵入。東山区のエピソードはお漏らしするほど豊富にあるが、話がまったく進まないので割愛させていただく。


興味のある方はぜひ、いずれ執筆予定の『京都オラオラ妄想日記』を読んでくれ。とうぜん餓死しそうな作者にお恵みとして、1人10円を徴収する。


10円の価値なし、などとほざいた連中には言ってやる。


5円ならいいっすか?


ってな。



思った以上にうす暗いトンネルは、照明代ケチってやがるのかって疑いたくなる。ここは恐らく無料区間なので、見せかけの民営化が成し遂げられた道路管理団体から、国土交通省の管轄へと移行したはず。なので霞ヶ関のドケチぶりが照明の光度に表れている。


さすがは国土交通省、競争の激しい民間なら消費者のクレームで手直しが入るかもしれないが、官僚にその義務も気概もなし。いかにして税金を族議員に回すかに一所懸命な奴らは、国民に奉仕する役人の鏡だと尊敬しちゃう。


うんうん偉い偉い。


その調子でバンバン血税を無駄に浪費してくれ、ついでに俺っちにお金の一部を横流ししてくれれば、重畳この上ない。



別名、『暗いんだよまったくトンネル』も出口から外の灯りが漏れてきた。


ここを抜けると山科区。第二京阪と湖西道路の中間帯に位置する山科区は、自動車専用道路まえの言わば休息地点。湖西道路方面へと移動する場合は、スーパーやコンビニなどで必要最小限の、備品や軽食およびドリンクを購入。


帰りの第二京阪を目ざす場合、ガッツり空腹を満たすため外食産業に乱入する。まだ初代家主様がご存命であったころ、中華料理屋『こいこい亭(仮称)』に寄ったときのこと、確か初代様にチャーハンご馳走してもらったっけ?よく覚えていないが。


初代様は常に体調が悪いので大量には食えない。したがって色々注文し、少しづつ齧ったあと、残飯を処理するのが私の役目だった。


正直残飯でも食えるときに食っとかないと、金のない私は生きている内に、こいこい亭の中華料理にありつけない恐れがある。だから残された物は全部食う、それがフードロスを防ぐ1番の方法だと自負する。


はぁ、今は亡き初代様ともう一度、外食産業の純利益に貢献したいな。


そんなことを思い出しながら、車はトンネルを抜け最初の信号待ち。


上の方には大石神社の掲示板が見える。あの復讐こそ正義的な赤穂浪士で有名な、大石蔵之介などが祀られているらしい。歴史好きな私も行ったことは

ないが、参拝する慰霊者目当てで建立された神社だと私は考える。


もちろん個人的な意見で他意はない、赤穂浪士が好きな人たち、私に対する討ち入りはやめてね。


あまりロングエッセイになると胸焼けを起こすので、詳細は控えるが、山科区には紅葉で有名な毘沙門堂があり、雨の日に大阪から原付バイクで乗り込んだことがある。そのころ私はデジタルカメラに凝っていたので、写真を撮るため行ったようなもんだが、1番の目的はとうぜん毘沙門様に対する信仰心だ。


嘘じゃない、それを証明する事実は用意してある。拝観料以外の賽銭の額だが、合計100円を超えなかった。


きっと勝利の守護者毘沙門様に、私の敬虔な祈りは届いたはず。


この話もいずれ執筆する『京都おいおい珍道中』に掲載するつもり。読者は期待して待たれたし、閲覧料10円持参してね。



信号が青に。数百メートル前進すると、山科区での最初のドライブインへ到着。某大手コンビニエンスストアで密かな楽しみとしている、おにぎりを購入し、ついでに犬の散歩。


ここを超えると犬が失禁などを訴えない限り、滋賀県の安曇川道の駅まで直行する予定。1時間はかかるかもしれない中距離ドライブになる。


だから犬よ、ここでの散歩でしっかり生理現象は処理したまえよ。


そして「お前どこ行く気だ」的な目で見る老犬を放置して、私はコンビニの店舗へと突撃するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る