第6話嘲笑う犬
ラジオから流れるメス犬の鳴き声がオスの熱情をかき立てる、しかし老いさらばえたオス犬は同乗するのが白髪の運転手だけだと知り、不満気に鼻を鳴らしてフワモコのクッションでふて寝した。
今度は夢の中でメス犬の尻でも追いかけるつもりのようだ、わからんでもない、睡眠は1番の現実逃避だからな。
我らがコンパクトカーは、フェラーリやポルシェやランボルギーニに道を譲りながらも、寝屋川市を突き抜けて大阪人でもほとんど知らない
交野市と言えば、なんと言っても第二京阪道路から見えるドーム、総合体育施設のドーム上部が走行中チョロっと見える。交野市の隠れスポットだ。
あとは私が配送業務で交野市を車で回っていた時、ドラッグストアやスーパーにティッシュペーパーを納品していた。それぐらい印象深い街だぞ、これを読んだ人は是非とも交野市を三日かけて探索してほしい。
次に枚方市の甘酸っぱい思い出を語ろう。
メディアに絶大な権力を保有する、芸能事務所のアイドルが宣伝するので一躍全国区となった、ローカル遊園地はみんなご承知のことと思う。私がカワイイ幼稚園児だった頃、この遊園地に遠足にきて女の子と弁当を食べていた。写真があったので確かだ。
その子と私はおそらく将来結婚の約束をしたらしい、写真があるので確かだ。
2人で婚姻届を市役所に提出するため彼女を探している、心当たりのある読者は私に一報を。
えっ、何、お前はストーカーだって?
違う、断じて違う、幼い頃にキュートな女の子と写真に写っていると、結婚するのがパターンじゃないのか、三流ラブコメにはよくある話じゃないかね?
彼女と私は運命の赤い糸で結ばれたスペシャルな関係なのだよ、惚れ合った2人が結婚するのは当たり前じゃないかいフグぅぅぅううう!
鼻息の荒い私の後頭部に凍てつくツンドラのような視線、犬の瞳が私を刺してきた。幼稚園時代とっくに切れた赤い糸、たまたま映った一枚の写真で狂想をふくらませ、正気を失いそうになる寸前、老犬の視線は私をファンタジーの世界から引きずり戻してくれた。
感謝しかない。
お礼に次に滋賀県の老婦人に見捨てられ、大阪の我が家へ
だからそんな目で僕ちんを見るんじゃねえ!!
憐れみの視線をビームのように送り続ける犬に、小さな復讐を誓った私は、高速道路の制限速度をギリギリで保ち、北か北東に向かって疾走して、大阪と京都の県境まで進行。そしてとうとう京田辺パーキングの道路標識が見えてきた。
我が家の今は亡き初代御主人様は尿意が近く、ヘタをすると4、50分に一度の頻度で、音入れ(おトイレ)タイムを必要とする。私はそれを犬に
車を駐車すると初代はトイレへ直行し、私は買う買わないにしろ、自販機ルームで代わり映えしない品揃えを物色。自販機マニアなら迷わずホットスナックに興味を示すだろうが、私は財布の残金と相談しながら、比較的安価な駄菓子やパン類の自販機を眺める。スーパーでも滅多に遭遇しないアンパンかクリームパンを発見、どちらを選ぶか苦渋の決断を迫られ、アンパンのボタンを押したことがある。違う日に立ち寄った時もアンパンを購入、それっきりクリームパンとは
そんな話だ。
京田辺市のエピソードは他にも。破壊僧としても有名な、
きっと真実は1つなので、石仏が欲しい人はお寺の住職と応相談。
破壊僧一休の生まれ変わりである私の運転する車は、京田辺の料金所で車列に並ぶ。直前まで開かない、ETCレーンのゲートを危険だと感じ、本気で闇の道路管理団体に、撤去を要求しようかと日夜画策している。
いやむしろダイナマイトパンチで折ってやろうか?それぐらい邪魔で不要な異物だと思っいるが、いまだに撤去されないところを見ると、闇の管理団体の勢力がいかに強いかを実感する、今日この頃。
ヒヤヒヤしながらも、フェイントを仕掛けるゲートをクリア。通行料金を道路管理団体が強奪した
拡散されてビビった闇の勢力が、私に詫びを入れてくる日は近い。
何度も車検をパスした三世代前のコンパクトカーは、覆面パトカーがどこかにいるだろうと注視しながらも、まだまだ田園風景の残る京都の郊外を走る走る。
とにかく走り
とある日、例のごとく原付バイクで紙の地図を調べながら、岩清水八幡宮を目指し、神社専属の広い駐車場に到着すると、普通車500円と書いてある。原付バイクの料金は書いてないので、タダか?と都合の良いように考へバイクを駐輪。ヘルメットをメットインに収納して汗を拭う。確か春頃だったが暑かったのを覚えている。(相当前なので季節や気候は適当)
交通費や諸経費以外に信心深い私は、たんまり賽銭用のチャリ銭(おそらく11円ぐらい)を懐に忍ばせ、いざ本宮へと伸びる二の鳥居を目指そうとした。そのとき斜め後方から外気温とは別種の、粘り着く視線を感知。得体のしれない妖気が流れてくる方を見ると、小さな料金所。中には高齢熟女2人が待機している。
料金所まで10メートルほど距離があるのに、粘り着く視線は私を捕らえて離さない。どうやらタダではなかったようだと諦め、私は震える手で大金500円を熟女様に上納して、命だけは助けてもらう。
上納した後に考えたのだが、神社周辺には、バイクを止めるスペースなどいくらでもあった。こそっと
しかしそこは信心深い私、神に対するお布施の一環だと納得しようとした。
・・・だがな貧乏人にとって500円は、富豪が別荘を購入できるほどの金額、簡単に諦めることは正義を放棄したことになりはしないか?理不尽に背を向けては神様に対して申し訳ない・・・
なので・・・
500円を熟女から奪い返せ!名誉を復活させろ!これは車じゃない、原動機付の自転車だぁぁあ!と説き伏せろ!
私は運転しながら大声で自分を鼓舞する。
その瞬間、興奮冷めやらぬ私の後ろから、犬の嘲笑うかのような鳴き声が聞こえたのは、言うまでもない。
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