第5話老犬の発情期
道路より低地に造営された寝屋川公園が後ろに遠ざかってゆく。下り坂をスローペースで走行すれば、第二京阪道路がはっきりと見えてきた。車は高速道路下を
過去に電車賃を浮かすため、原付バイクでここを直進し、曲がりくねった複雑怪奇な道を走破しながら、何度も京阪電鉄枚方公園駅の駐輪場まで行ったもんだ。
途中には成田山不動尊なる寺、千葉県の
道中には改名まえのアイドルグループ、◯坂46と同じ名の欅が立ち並ぶ、美しい大通りも見もの。もしアイドルたちがここで野外コンサートなどすれば、私のペンネームサインをプレゼントするつもり。間違いなく喜んでくれるだろう。
以前は京都や滋賀へ出向くのに、枚方公園駅の駐輪場をよく利用したが、現在では、学研都市線で
原付バイクで、ブイブイ言わせてた頃のことを考えているうちに青信号。交差点
横断歩道と交差点を、1つずつ過ぎたあたりにショッピングセンター。ギリギリ都会の広い敷地は土地代も安くないはず、様々な店舗が固定費と利益を
センターの経営母体はホームセンター。滋賀県奥琵琶湖の老婦人の娘が務める、土木事務所で雇用されていた当時のこと、早朝出動のため、小学校体育館の解体工事現場は開場されておらず、仕方がないので、職人の聖地ホームセンターに立ち寄った。
初めてきた場所は、色々調査するのが趣味である。目を離すとどこかへ行く幼稚園児のように、私は先輩作業員を放置してウロウロ。調査が終わり、工事現場へと戻る車中で聞いた話では、コーヒーなどが無料で飲めるコーナーがあったらしく、タダが大好きな私は、くやしくて血の涙を流したことを痛切に覚えている。
しかしこのホームセンターのことを、1時間近く検索して調べたが、無料コーヒーの情報は得られなかった。フェイクニュースの
無料コーヒーを調べるためだけに、1時間は長えだろ、無駄な浪費で執筆スピードが極端に落ちた。口惜しいので浪費した分もネタにしてやったぜ、ウキョキョ。
ちなみに、親戚からわざわざ紹介してもらった土木事務所、約1ヶ月の見習い期間を終えて、そのまま離職。辞めた理由は国家機密のため明かせないが、私は晴れて親戚一堂に、
幻となった無料コーヒーを、ブラックで飲みたかった私は、ショッピングセンターを
箱車のトラックドライバーは「うむ、入るがいい」てな態度で、ゆっくり頷く。私は「誰にものを言っている」とは語らず、侵入後お礼のハザードランプを3回ほど点滅、律儀に交通マナーを
第二京阪道路のインターチェンジ前、最後の交差点で赤信号。気持ちを切り替えるため、上の空で聞いていた、ワンセグのワイドショーに何の未練もなく決別。AV機能をオーディオモードに設定し、マイベストソングから『パリは燃えているか』をチョイスした。
青信号で車が前に進むと同時に、立ち込める暗雲と、切迫感をイメージした様な旋律が、スピーカーを震わせる。硬派なドキュメンタリー番組のメインテーマ曲だっただけに、足元から音が迫り上がってくる感覚は、車内にいる私と犬に、生きるとは何かを突きつけてくる。
高速道路入り口に車の前輪が踏み込んだ。天に向かって伸びるスロープを上がりながら、オムツ着用の老犬と運転手の私は、フロントガラス越しに広がる青い空を、いつになく引き締まった表情で見つめる。
わかるか犬よ、これから進むべき道の険しさが、お前にもわかるのだな。
音楽の重厚感に影響された老犬と私は、猛スピードで
覚悟は良いか犬よ!
ワン!
なんてやりとりが、犬との間に成立してたかどうかはともかく、特別な使命感に燃える室内に反比例するように、トヨタのコンパクトカーは、無難に第二京阪の第一走行車線に到達。交通量は並以下で、フロントガラスから上空を流れる青い空には、白い雲が漂っていた。
バックミラーを下げて犬の姿を盗み見ると、奴め、チョコレートロールケーキのように、クッションで丸くなっている。魚肉ソーセージを、1本丸ごと食う夢でも見ているのか?
魚肉ソーセージと言えば、セレブ気取りの犬のために、激安じゃない普通のスーパーで購入した8本(内2本は私の胃のなかに消えた)を、家のチルド室に置き忘れてしまう。チクワに続き改めて
しばらく低速走行用の、第一走行車線をのんびり進行していたが、第二走行車線も空いているので、左にウインカーを出し、追い抜き
金持ちに対する嫉妬の祈願が、届く届かないに関係なく、時おり遮音壁の開放された区間では、平凡な大阪府の街並みが流れすぎた。やはり有料道路はスイスイ行くね、信号待ちと人の行き来に
これでタダなら文句ないのに。ドライバーから半強制的に通行料を徴収する闇の勢力、道路管理団体の金の流れを猛烈に気にしながら、車は三車線道路の真ん中をひた走る。
オーディオの『パリは燃えているか』が一段落してラジオにチェンジ。ちょうど誰かのインタビュー中に、ラジオ内から犬の鳴き声。後部座席のオムツ
老いても本能を忘れない、犬はクッションの上でクルクル、歓喜のダンスを披露した。
まだまだ続く私のドライブノベルは、高速道路上で老犬の発情期を迎えるなど、ハラハラドキドキの急展開がつづき、この先も様々なハプニングが、待ち受けているであろうことが予想された。
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