第113話

「間違いないのですか?狂信者の厄介な遺物、ではなく?」





「あぁ。信じがたいが、どうやら“お仲間”らしい。獣人なんぞに“印”を与えるとは、あのフクロウも何を考えているのやら」


「我々の様な者が、レイヴンどもの中に居ると言う事ですか?つまり、ここ最近の新聞記事は…………」


「あぁ、事実だ。そう考えれば、色んな辻褄が合う。少なくとも“印”を貰った獣人が間違いなく、黒羽の団に居る。それだけは、間違いない」


「…………どの程度、そいつは“印”を理解しているのでしょう?我々や隊長の様に、印の力を扱えるのでしょうか?繰り返しになりますが狂信者の“遺物”を使っているだけという線は本当に無いのですか?切れ端程度の“虚無”を帯びた狂信者の遺物で、黒魔術を使う連中も居る事には居ます。それなら過去に片付けた事もありますが」


「いや、少なくとも狂信者が使う様な黒魔術とは格が違う、間違いなくあのフクロウから直々に“印”を与えられていると見て良い。今までの新聞記事や非公式の記録までが全て事実とするなら、良く分からぬまま何とか上手く振り回してるって所か。とにかく動きと勘が良い、相当筋が良いんだろう。昔の一番弟子に良く似てる」


「では、抵抗軍のレイヴンどもが我々の様な集団に成り得る可能性は?レイヴンどもが“印”を使い始めるとなると、個々の脅威から見ても厄介な存在になりかねません」


「それに関しては殆ど無いと見て良い。レイヴンが“印”を使った事が確認されている事件はここ数ヶ月でたったの2回。その間、他のレイヴン達も色んな場所を襲撃しているが………他のレイヴン達は結果に関わらず、“印”を使った形跡は記録されていない」


「つまり“印”を授けられているとしても…………隊長程の力は無いと?」


「少なくとも俺みたいに、他の連中にも“印”の力を与える事は出来ない、というのが客観的な事実だ。それが出来るなら、もっと獣人どもが“印”を使う様子が多発的に確認されてる筈だからな」


「ふむ、我々の様に“印”を使う集団にはならない、と。ならば少なくとも、本格的に対処する相手はその一人に絞られますね。多少は厄介ですが、仕留められなくは無いでしょう」


「……あのフクロウが直々に“印”を与える相手は、大なり小なり世界を掻き回す様な奴だ」


「ええ。だからこそ“印”を与えられた隊長はこうして、レガリスの帝王とすら取引出来る存在になった。でしょう?」


「……………………」


「隊長?」






「黒羽の団が先細りになった今、抵抗軍の獣人風情が“印”を得たのなら…………あのフクロウがそいつに目を付けた理由が、必ずある」

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