第14話、ニール…

ステラさんは、功績を讃えられ聖女に昇格した。

その際、一冊の絵本を書き上げた。

それが、勇者物語。


その中で、主人公の少女は魔王との決戦を前にしてと出会い、スキルを授けられる。

そして、そのスキルを十分に活かして真の勇者が魔王を打ち倒すというもの。

その功績を讃えられ、勇者は城の王女と結婚し、主人公の少女は真の勇者と結ばれる。


セイタは確かに王女と結婚した。

60歳の中央国王の長女が40歳なのは仕方ないところ。

しかも、長男がいるため、王にはなれない…飼い殺しである。


そして、主人公は俺とは結ばれていない。

聖女なんだから当然である。

よって、この絵本はフィクションなんだと誰もが思っている。

討伐に同行した8人を除いてだが…


魔王討伐の功績として、俺は少し離れた森をもらった。

森を切り開いて、そこに家を建て周辺を塀で囲っていく。


俺は全国を回り、奴隷になっているキツネ人を買い取った。

それから孤児・浮浪児となっているキツネ人を少しずつ集め、教育と魔法や武道を学ばせる。

そして畑を作って、豚を飼い、自給自足の生活を確立していく。


いつしか3年が経過し、キツネ人の村は町になった。

町になったことで、教会を作り司祭を迎えるのだが、なぜかステラさんがやってきた。

やってきたのはいいが、いきなり愛人宣言をされてしまった。


なんかニールとも話がついていたようで…


俺たちのパーティーは、武道大会で3連覇を果したのだが、今年はニールがちょうど産み月であったためにステラさんが加わった。

3戦目まではニールも応援に来てくれたのだが、最終勝は産気づいて帰ってしまった。

最終戦の相手は南国だったが、案の定、床が陥没して俺たちは負けた。

オッズは1:80だった。

俺はまたしても、金貨80万枚を儲けた。

八百長ではない、不慮の事故だ。

ナナとネネに密かに南国に賭けさせたのだ。

何故って、中央国が賭けたのをのスキルで聞いてしまったから。


試合を終えた俺は、速攻でニールの元に駆け付けた。

案の定、ニールは事故に巻き込まれてた。

すれ違った馬車は大破したらしいが…

ニールは元気な女の子を生み、そして俺たちが駆け付けたところでほっとしたのか息を引き取った。

俺は娘にミクルと名付け、ステラに事情を話して面倒を見てもらうことにした。

そして、これを機に、俺は代表戦から引退した。


町のことはネネとナナに任せ、俺は町を出た。



「神様、一つだけ教えてくれ。

娘には不幸引き寄せの体質なんか、引き継いでないよな」


神さまは、姿を現してくれた。


「ニールは残念なことをしたな…」


「ああ、俺が武道大会なんざ棄権して、ニールと一緒にいるべきだったんだ…」


「そう、自分を責めるな。

娘には体質は引き継がれておらんぞ。

ステラに預けたのは正解じゃと思うぞ」


「そうですか。よかった」


「わしの方でも、解決方法を探してみるが、これからどうするんじゃ」


「とりあえず、呪いの武具とか探して試してみますよ。

それでダメなら、相殺してくれるアイテムが見つかるまで、人里離れて…、魔王城にでも住みますよ」


「そうか、頑張れよ」

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