第3話、新たなる出発

その日は、下手に動かず、城壁を背にして眠った。

晩飯は、タヌキみたいなのを捕まえ、焼いて食べた。

獣臭かったが…


さて、西の国へ出発である。


意気揚々と歩いていくが、俺の横を通る馬車の2割程度は何かしらのトラブルを起こす。

単独でトラブってくれればいいものの、何故か俺を巻き込みたがる。


街道を外れて森を歩けば、狩人が獲物と間違えて矢を放ってくる。

そういう場合は、迷惑料として銀貨一枚か食事を提供してもらう。

この破壊不能の革鎧でなければ、一日に5本は矢が刺さって死んでるところだ。


馬車の整備不良が原因の場合も、銀貨一枚だ。


3日も経つと、疫病神としてうわさが行きわたったようで、俺の脇を通過する馬車は最徐行で通過するようになった。


こうして、俺は西の国に到着した。



まずは、ギルドで冒険者登録だ。


「いらっしゃいませ」


キツネ耳の女性が声をかけてくれる。


「冒険者登録したいんですが」


「はい、畏まりました。

推薦状はお持ちですか?」


「ありません」


「その場合、鑑定料として銀貨5枚と登録料の銀貨3枚が必要になりますがお持ちですか?」


「多分、それくらいは…」


ギリギリ8枚の銀貨があった。


「では、こちらへどうぞ」


鑑定の婆さんに鑑定料を支払い、手続きを進める。


「お名前は、サイナン クルゾウ様ですね」


「セ・ナ・ン・ク・ル・ミです。なんで漢字でもないのに読み間違えるんですか」


「あ、あの、すみません、目が悪いものですから…」


「じゃあ、しょうがないです」


「職業は、勇者…、ごめんなさい。多分読み間違えですよね」


「いえ、勇者で間違いありません」


ザワザワ


「レベル5で、スキルなし」


チェ なんでえ と囁く声が聞こえる。


「このレベルですとランクFからになります」


「いいですよそれで」


こうして、珍しくトラブルなく冒険者登録が終わった。


「あっ、すみません。登録証が切れてしまって、発行は明日になります」


「えっ、じゃあ今日は依頼を…」


「すみません、受けられません」


「がーん…、いいですよ。慣れてますから」


俺は最後の銀貨で、串焼きを2本食べ、ギルドの軒先で眠りについた。


翌朝、一番でギルドに行き…顔を出し、冒険者カードを受け取ると依頼ボードを確認した。


Fランクで受けられるのは薬草の採取とスライム退治くらいのものだった。

その二つは常時依頼のため、受注は必要ない。


俺は薬草の生えている場所を聞いて出かけて行った。


実は、その直後に収納スキル持ちの冒険者が来て、大量の収穫物を出したのだがセナンは知ることもなかった。


さらに、セナンの後ろを歩いていた冒険者パーティーの一人が転んで、僧侶がヒールを使ったのだが、これもセナンが見ることはなかった。


セナンは一日かけて薬草を収穫し、カウンターに提示した。


「はい、薬草10本ですね。ご苦労様です。銅貨5枚になります」


毎日これを繰り返し、10日後にセナンはリュックを購入した。


そのリュックに薬草を詰め込んだセナンは、隣のカウンタ-で収納スキル持ちが納品しているのを見た。

リュックはその日以来収納にしまわれることとなった。


「はい、Fランクの薬草収集が15回になりましたので、Eランクですよ」


セナンは、いまだにギルドの軒下で寝泊まりしている。

体だけは、ギルドの職員がクリーンのスキルを使っているのを見たので真似している。


Eランク、セナン行きます!

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