第2話、それでも災いはやってくる

-しかしのう。

 災難引き寄せ体質か…


-そうなんですよ。

 えっ!て思ったとたんに非表示のまま転生ボタンをクリックしてしまって…


-まあ、スキルを教えることはできたし、神器級の武器と防具を与えたんじゃ。

 それに、あの粥は神饌じゃからのう。レベルの上がり方も早くなるはずじゃ。


-すみませんでした。

 僕がもっと慎重に操作していればこんなことには…


-まあ、体質の影響もあるんじゃろうが、今後はしっかりするんじゃぞ。


-はい、神様。

 今回はフォローいただきありがとうございました。


-まあ、天使のミスはわしの責任じゃからのう…



こんなやり取りが天界で行われていたとは知らず、俺は西を目指していた。

俺が召喚されたのは中央王国で、この大陸には東・西・南・北・中央の五つの国が存在する。

俺はお婆さんのすすめで西国を目指していた。

そこで、冒険者登録を行い、この世界で暮らしていくのだ。


俺の名前は西南セナン 来三クルミ、人呼んでサイナンクルゾウだ。

神奈川県大和市立某高校二年生だ。

趣味、ゲームで、特技は料理。

好きな教科は数学で語学は苦手。

どちらかといえば痩せてて身長は172cm。


この世界で、言葉に不自由しないのは助かった。


お婆さんが、最初に言語変換を使ってくれたんだってさ。

服装は濃いグレーのスエット上下と革鎧に鉄の剣。

買ったばかりの新品のスニーカーを、部屋の中で履いたところを召喚された。

これは、一生分の幸運を使ったかもしれない。


俺は不幸引き寄せ体質らしく、役所の出生届を出すときに、二日酔いの親父が胡桃という字を思い出せず、来三と書いてしまった。

漢字は後から訂正できるらしいのだが、行動を起こそうとすると事故があったり体調を崩したりで、いまだに来三なのだ。


西の国までは歩いて5日だと聞いたが、生活に必要な炎や水の魔法は一通り教えてもらったので、なんとかなると思う。


と、正面から馬車が来る。

普通ならすれ違うだけなのだが、俺は大きく避けて馬車が通り過ぎるのを待った。


案の定、馬車の前にイノシシが飛び出し、驚いた馬が急に方向を変えたので馬車が倒れてしまった。

ふう、今回は乗り切ったぞと思った瞬間、倒れた馬車の屋根に住んであった荷物が飛び出し、よりによって鉄の鍋が飛んできた。


ゴイーン


☆☆☆ ☆彡 星が見えた。


気が付くと俺は馬車の中で、見知らぬおばさんの膝枕だった。


「ああ、気が付きましたか」


「こ、ここは」


「もうじき、中央王国に着きますから、そこで手当てをしましょう」


だが、俺は国を追放された身。

当然門番からダメ出しを食らって、放り出された。

せめてものお詫びにと、女性が銀貨を握らせてくれたのは幸いだった。


俺は振り出しに戻ってしまった。

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