勝手に召喚しておきながら神様の手違いでスキル非表示にされた俺が無能と罵られ国を追放された件

モモん

第1話、召喚されちゃったみたい

「やはり何もありませんな」


「馬鹿を申すな。この古文書によれば、召喚した勇者は例外なく特殊なスキルを身に着けており魔王程度は瞬殺できるはずではないか」


「ですが、ステータスには何も表示されず、パラメータも平凡なもの」


「あ、あの…、何が…」


「五月蠅い!この召喚魔法にどれだけの費用をかけたと思っているのだ!

国家予算の半分だぞ!

ええい、この不良品め!目障りだ!

誰か、こいつを国から追放しろ!」


「えっ???」


俺は、ゴミのように襟を捕まれ、城の外に停めてあった馬車に乗せられた。


「な、なにが起こってるんですか?」


「…」


俺を連れ出した兵士は沈黙を守る。


やがて、5mくらいある城壁が見えてきて、俺は通用口から放り出された。


「ねえ、何が!ここは何処なんですか?」


辺りは草原で、少し行ったところに森があった。


「おやおや、見慣れん服装じゃのう」


後ろから声をかけられる。振り向くと魔法使いみたいなお婆さんがいた。


「お、お婆さん、ここはいったい…」


「何があったか知らんが、もうじきに暗くなる。

あたしゃ家に帰るんじゃが、ついてくるかえ?」


「え、ええ、お願いします。

何が何だか分からなくて…」


魔法使いのような黒いローブに身を包み杖を持ったお婆さんだったが、周りに人はいない。

だが、このお婆さん、とてつもなく歩くのが速い。

まるで滑っているようにすーっと歩いていく。


お婆さんの家は、森の中にあった。


「30分も歩いてきたんだ。

腹も減ってるだろう」


そう言ってお婆さんは晩飯を作ってくれた。

雑炊なんだけど、目が飛び出るほどおいしかった。


「名前はなんという}


西南来三セナンクルミです。

読み方を変えるとサイナンクルゾウで、これがいじめの対象になったこともあって」


「名は体を表すというからのう。

それで今回も災難に巻き込まれたのかい」


「なんだか分からないんです。

部屋でゲームをしてたら、いきなり違う場所に来て、召喚に失敗したとか、スキルが無いとか言われて」


「察するに、王国で性懲りもなく召喚術を使ったのかいのう。

それで、召喚されたお前に魔王を倒すだけのスキルが備わっていなかったというところかい」


「多分、そんな感じだと思います…」


「ふむ、本当にスキルがないのはおかしいのう。

その猫に向かって鑑定と唱えてみるがいい」


『鑑定!』


「何もおこりませんよ」


「『鑑定!』

普通にネコのステータスが表示されよるぞ。

もう一度やってみなさい」


「『鑑定!』

わっ、何か出た」


「ふむ、使えない訳ではないのか。

ではわしの言うのを真似してみるんじゃ『身体強化!』」


『身体強化!』


『攻撃力・防御力2倍!』 『攻撃力・防御力2倍!』


『絶対回避!』 『絶対回避!』


『スキル付与・身体強化!』 『スキル付与・身体強化!』 


『スキル付与・消去!』 『スキル付与・消去!』 


「ふむ、すべて発動しとるのう。

もしかするとこれはとかいうまれなスキルやも知れんのう。

一度見ただけでどんなスキルでも真似のできるものじゃ。

だとすれば、魔王なんぞ物の数ではないぞえ。

何百というスキルを見るだけでいいんじゃからのう。

まあ、国から追い出されたんじゃから、好きに生きてみればよいじゃろう」


「元の世界には戻れないんですか」


は呼ぶだけの術じゃ。という術は誰も知らんのじゃよ。

じゃから、お主の世界で誰かが召喚してくれればよいのじゃが…」


「僕の世界に魔法なんて存在しませんから…」


「それでは無理じゃのう。

使えたとしても、必要な魔石や術具に恐ろしく費用がかかるのじゃ。

まあ、気を落とさずにな。

そうじゃ、これをくれてやろう」


「剣と革の鎧ですか…」


「ああ、見た目は普通のものじゃが能力を2倍にしてくれる魔道具じゃ。

さっきの魔法とあわせれば、4倍になるじゃろう。

しかも、破壊不能の術式が付与されておるから、一生使えるぞ。

こことここに、と刻印されておるじゃろ。

これが神器級の武具じゃという証じゃ」


「そんな大切なものを、いいんですか」


「わしは、魔法使いじゃから必要ないんじゃよ。

まあ、この世界に呼びつけてしまった詫びじゃと思えばいい」


こうして、僕の異世界生活がスタートした。

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