3.名づけは疲れるものらしい

 念のために、1匹1匹を鑑定しながら名前を付けることにした結果、

「カルラ…カルス…カイム…カルド…カルビン…カルミア…貴方達は、火と光。太陽神カルコン寄り…?」

(そもそも、この神『寄り』って言っていいのかしら。そもそも太陽神カルコンが居るのかどうも知らないんだけど)

「ライ…ラーラ…ランティス…ティア…イリス…は、光と闇。月の2人の女神寄りかな?」

(この子達は闇魔法覚えてる…これって進化なの?虫から精霊になるの?)

「ファイ、ファーナは、闇と水…闇の神ファリスナ寄り?…光どこいったの?あ、でも光ってはいるのね…ちょっとタイプが違うけど、これはなんだか落ち着く波長だわ…」

「イシュ、ハル…貴方たちは雷?水と風属性だね?」

(水の神イルバと、風の神ハルター寄り、ということにしとこう)

 日本にいた頃の私なら、きっと忘れてしまったであろう15人分の名付けも、名付け=契約の役目をしているためか、するりと覚えられたし、なんなら、目を瞑っていても誰が近くにいるかわかるくらいだ。

「あらためて、みんなよろしくね」

はーい!と元気なこえがする。

「明日以降、順番にどんな魔法が使えるのか、見せてちょうだいね。記録をとらせてね」

「お任せください!」

 代表して、ということなのか、カルラがどんと胸を叩く。

「あ、でも主様、明日はそろそろ前回街に行ってから1ヶ月ですよ。街に行かなくてよろしいのですか?」

「あ」

 もうそんなに経ったんだろうか。

「アーバンさんにお祝い渡そうと思ってたんだった…明日市場で買えばいいかな…」

 出産のお祝いは特に決まりがあるわけでは無いようだが、だからこそ難しくて、つい先延ばしにしていた。

「それならね、オススメがあるよ…」

「よく眠れるお守り、おすすめなのよ…」

 闇属性の2人が話しかけてくる。

「確かに、主様なら、お守りを作ってあげると喜ばれると思います!」

「作り方を知らないんだけど…本、あるかなあ?」

「通信石の作り方と変わらないはずです!」

 アイテムボックスの中の、石に紋を刻む方法を書いたものと、誕生石にまつわる本をよみくらべながら、お守り作りが始まった。半輝石のような石の形を整え、いくつも試作を作る。材料は、アイテムボックスの中にも、採取がてら歩く際に落ちていたものやら、いくらでもある。出来たものは、精霊になった元光虫達が、あーでもないこーでもないと品評してくれる。1番最後に、赤ちゃんの名前を刻むことで完成するらしいのだが、まだ名前を知らないので、それは聞いてから刻むことにする。

 いくつか出来の良いものを選んで、あとは、赤ちゃんの顔を見て決めることにした。顔を見ることができなかった時は…その時考えよう。


「おかげで明日は街に行けそうだよ。ありがとね」

 声をかけると、精霊達はフワンフワンと光った。こういうところは変わらないらしい。

「じゃあ、寝ようかな…って、貴方達、ベッドが必要なんじゃない?」

「必要ありません、主様!ほら!」

 カルラの指差す先には、小さくなってランプに入っていく精霊達がいる。

「小さくなったりするのに、無理してない?」

「むしろ快適です」

 枕元のランプには、闇精霊ペアが入っている。

「この光には、安眠の効果があるそうですよ」

 なんというか、鈍い銀色の光が灯っている。確かに、見ていると穏やかな気持ちになれる気がした。

「今日はたくさん名付けをしてくださって、ありがとうございました、主様!」

 カルラはうふふ、と笑った。手からキラキラと光が落ちてきて、私の髪に、体に吸い込まれていく。これは治癒ヒールだ。

「私たち、たくさんお話ししたいことがあるんですよ。そして、たくさん主様のお役に立ちたいです!」

「ありがとう…」

 きゃらきゃらとよく喋るカルラだが、その声音のせいか、決してうるさく無い。むしろ、耳に心地よい。

「時間はたくさんありますから、是非、私たちの話、聞いてくださいね」

「うん。」

 横になると、カルラも枕元のランプに入って行った。あたりが暗くなり、同時に心地よい睡魔がやってくる。

「あと、主様のことも、教えてくださいね」

 カルラのそんな言葉が聞こえた気がした。

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