【微エロ】新第4話 ドミー、チュートリアルをクリアする

 (男性ドミー。女性の【支配】を開始します)


 脳内に声が響く。

 それと同時に暖かい感触。

 ライナの柔らかい唇だ。


 「んん…!?」

 動揺した彼女が硬直し、目を見開いた。

 でも、抵抗はしない。

 【木の杖】を俺に向けていた右手が、だらりと垂れさがる。

 顔がみるみる紅潮し、目が潤んでいく。

 全身から力が抜け、背後の木に体重を傾けた。


 (唇に触れただけでかなりの威力。しかし、なんだかんだで命がけだな…)


 ライナが気を取り直してスキルを発動すれば、俺は一瞬で死ぬ。

 それまでに、【支配】なるものを完成させなければならないと直感的に理解した。 


 少女の唇と命を使った度胸試し。  


 何度か唇を貪った後、一旦顔を離す。

 ライナの唇は、少し俺のだ液で濡れていた。


 「…あ」


 ぼーっとした表情でライナは俺を見つめていたがー、

 「あ、あなた!私に何を!」

 【木の杖】を握る手に力が宿る。  

 まだ【支配】には少し足りない。 


 「ファー」  

 だから、スキルを発動される前にもう一度唇を奪った。


 「…!」


 次は舌も入れてみる。

 暖くて狭い。

 初めは歯に阻まれるが、やや強引に突破する。

 ライナのぬらぬらとした舌に触れた。

 とろけそうな感触。


 コンチが見せてくれた光景のように、その舌と自分の舌を絡ませた。

 時に優しく、時に厳しく、緩急をつけながら。


 からん。


 ライナの手から【木の杖】が滑り落ちる。

 体が完全に脱力した。

 崩れ落ちないよう両腕で支える。

 それが、更なる強烈な感覚を呼ぶ。


 ライナの体が痙攣し始める。

 もう少しか。


 一旦ライナの唇を解放する。

 交換した唾液が細く糸を引いた。


 「…」

 もう抵抗は示さない。

 だが、顔が真っ赤だ。

 再び舌を絡ませるのは、可愛そうな気がする。


 だからー、


 最後は唇に優しく口づけをした。


 「あっ…!」

 ライナは最後に一声発したかと思うとー、


 これまでで一番激しく痙攣した。

 痙攣が落ち着くまで、しっかりと抱き抱える。


 ライナは、動かなくなった。


 (【下級魔法士】ライナの【絶頂】を確認)

 脳内の声が再び響く。

 (スキルおよびステータスの詳細を獲得)

 (【服従条件】の確認…クリア。【完全支配】状態に移行)

 (【強化】状態へ。効力は約30分)

 (記念すべき1人目の【支配】、おめでとうございます)


 脳内に再び声が響く。

 大半は理解できなかったが、どうやら【支配】とやらに成功したらしい。


 「…っていかんな。早く逃げないと」

 ひとまず気を失っているライナを背中に背負う。

 取り落としていた【木の杖】は俺が持った。


 「ゴツゴツしてあまり快適な背中とはいえないが、我慢してくれ」

 そして、火炎が迫る森の中を駆け抜けていった。



==========



 (スキルを利用しているとはいえ、口づけのみで【絶頂】させ、【支配】まで導くのはさすがです)


 安全な場所まで退避し、気を失ったライナを降ろすと、脳内の声が話しかけてきた。

 おそらく若い女性だが、どうにも人工的な響きがある。


 (で、お前は誰なんだ)

 (コンチさまからサポート役を仰せつかったナビです。以後お見知り置きを。スキルの使い方についてですがー)

 (それは今分かった。とにかく女性に触れて、【絶頂】とやらに持ち込めば【支配】できる。そういうことだろ?)

 (その通りです。今回は【服従条件】まで達成したため、【下級魔法士ライナ】には【完全支配】が及びます)

 (完全支配ね…ステータスとスキルを獲得したと言ったな。見せてくれ)

 (はい。ステータスの最大は特殊な例を除き100となっています)


 俺の眼前に、数字と文字による情報が映し出された。


 悩める少女 ライナ(【強化】前)


 種族:人間

 クラス:下級魔法士

 ランク:C

 近接:7

 魔法:26

 統治:15

 智謀:77

 スキル:【ファイア】

 個性:【制御】【機転】【阻害】 

 服従条件:誰でもいいから、私に力を授けてください…

 一口コメント:とある理由によりステータスが成長しない


 うーむ。 

 知恵に富んでいるようだが、肝心の魔法がダメダメだな。

 しかし個性ってのは何だ?


 (その当人がスキルとは別に発動する特性です。【制御】は【魔法系】スキルのコントロールを高める、【機転】は知謀にプラス補正、【阻害】はステータスが一切向上しないマイナス個性です。)


 ライナの重圧の正体は、【阻害】だったらしい。

 この世界の人間は、スキルやランクを絶対視している。

 通常であればスキルの行使を通じて成長するステータスが向上しないとしたら、かなり辛かっただろう。


 力への渇望と、それが実現できない悲しみ。

 その気持ちは、俺がよく分かっているつもりだ。


 (しかし、ライナの服従条件をいつ満たしたんだ?俺は口づけを交わしただけだぞ)

 (その件についてですがー)


 「ごめーん、遅れちゃった!」


 その時、翼をバタバタとはためかせながら、誰かが空がやってきた。


 俺にスキルをもたらしたばかりの天使。


 コンチである。



==========



 「おお、もう彼女と邂逅してるのか!手間が省ける」

 「おおコンチ!わが友よ!見てくれ!」



 俺は両腕を広げ、コンチを歓迎した。


 なんだかんだいっても、この世界で唯一の男友達だ。



 「見事この少女との対決に打ち勝ち、俺はちゅーとりあるとやらをー」

 「じゃあ今からチュートリアルはじめよっか!」

 「…ん?」

 「この近くにこのモンスターがいなくてねえ。捕まえるのに苦労したんだ」



 コンチは手に何かを持っていた。


 手のひらサイズの小さな檻。

 【狩猟者】が価値のあるモンスターや動物を捕らえる時に使う【縮小の檻】だ。

 中に、生物が閉じ込められている。



 「君も知っているとは思うけどー、」

 コンチは、その檻の扉を開いた。



 ー全身を覆う灰色の体毛。


 ー男性よりはるかに筋骨隆々とした肉体。


 ー手足の指だけは人間と同じ5本指。


 ーオオカミの頭。

 


 人間とオオカミの特徴をあわせもつ、二本足で歩行する巨人が姿を現す。

 「おっかないワーウルフだ!このモンスターと戦って生き残るのが、僕から君に与えるチュートリアル!」

 「…」

 「ガルルルル…」


 ワーウルフは元気満々のようだった。

 俺のシックスパックなんてチーズのように裂いた後、パンに載せて食ってしまうだろう。


 「まあ、悪く思わないでくれ。神話において、力は試練とセットで与えられるものだ」

 「1つ聞きたい。このワーウルフー」

 「最後まで言わなくてもわかるさ。元気いっぱいの男性だよ」

 「フ〇ック!!!」

 「君ならできるさ!」


 コンチは再び羽を広げて去っていく。


 「健闘を祈る!」

 姿が見えなくなった瞬間ー、


 「グルアアアアア!!!」

 ワーウルフが雄たけびをあげ襲い掛かった。



==========



 次回予告


 第5話 ライナ、力を開放する


 「あの人を助けないと」

 少女が彼を助ける理由は、2つ。

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