第5話 幼馴染
今日はショッピングモールに真奈とお出かけである。小さい頃は俺の親とショッピングモールに出かけると真奈がついてきた。
こうして二人で来るとデートの様であった。入江と出会ってからの真奈は積極的なった気がする。
さて、買い物の途中でWバーガーに寄る事になった。歩いて一階に着くと……。
『むぎゅーとだよ』
何故、店の前で後ろから抱きつく?
「焼肉定食の方がいいの」
……。
俺達の財力ではショッピングモールの焼肉定食は無理である。
「ベーコンレタスWで我慢しなさい」
「ケチ……」
俺は真奈の『むぎゅーとだよ』から解放されてWバーガーに入る。席に座ると携帯を取り出す。入江の様子を見る為だ。
もっとネットにアクセスすると。入江のマイルームであるネット上の旧美術室に向かう。
『入江、元気か?』
寂しそうな入江はご機嫌ななめである。要するに実体化してショッピングモールで楽しみたいらしい。俺はふと入江がデータの塊になった経緯を考える。
深い絶望によって仮想空間の幽霊であるデータの塊になったとのこと。
俺が難しい顔をしていると。真奈がバックをとり『むぎゅーとだよ』をしてくる。背中に感じる感触は昔とは違う。それは成長を意味していた。
しかし、この態勢はバカップルである。
「俺の分のナゲットあげるから落ち着け」
「ふむふむ、わたしの勝ち~」
うん?
携帯からバイブ音がする。入江がヤキモチをやいているらしい。すました顔の真奈は俺のナゲットを食べ始める。
これは俺の受難かもしれない……。
俺と真奈は校舎の隅にあるサッカー部の男子更衣室を訪れていた。歩夢先生の話だとこの辺りに『オーパーツ』があるらしい。
倉庫の様な場所に洗濯機とスパイクシューズが並んでいる。
キョロキョロと『オーパーツ』を探していると。サッカー部の監督が現れる。
「こんな場所になに用だ」
不味いな、怪しまれている。
「サッカー部のご奉仕にまいりました」
ピンチとはいえ。真奈よ、何を言い出すのだ。昔の一緒にサッカースクールに通っていたとはいえ。そう、確かに真奈はサッカーよりマネージャー的なことを覚えたらしいが『ご奉仕』とな。
「ファンの選手でもいるのか?ま、丁度いい。このユニフォームを洗濯してくれないか?」
「ありがとうございます」
真奈は即答して洗濯機でユニフォームを洗い始める。
しばらくして……。
「あ、これ干してね」
真奈は脱水されたユニフォームを俺に手渡す。天気は良好、俺は渋々にユニフォームを広げる。その数は半端ないのであった。小一時間後、サッカーの監督が再び現れて感心していると。
『『オーパーツ』はこの洗濯機の裏に感じるわ』
携帯から入江の声が聞こえる。ごきげんなサッカー部の監督に洗濯機の裏を見ていいか聞くと。快諾してくれる。
ゴソゴソ……。
それはケースに入ったCD-ROMであった。これが『オーパーツ』のか?監督に挨拶してCD-ROMを貰い旧美術室に行くのであった。
持ち帰ったCD-ROMをパソコンに入れると。ゲージが三十%ほどで止まる。
なるほど、あと二枚必要なのね。
しかし、サッカーか……懐かしいな。男子の中で一人だけ女子の真奈は結局マネージャーに落ち着いたしな。
ホント、幼馴染っていいモノだな……。
と、改めて思うのであった。
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