第2話 旧美術室の中へ

 旧美術室は新しく多目的棟が完成して、今は物置になっている。このネット時代に幽霊である。


 しかし、歩夢先生には心あたりがあるらしい。


 やはりパンドラの箱であるらしい。好奇心で箱を開けて最後に希望だけが入っている箱である。


「なにブツブツ言っているの?」


 真奈が階段を上がりながら俺に声をかける。


「そうだったな、強い心の支えがいたな……」


 こんなに真奈が頼もしいと感じたのは初めてである。


「さて、旧美術室に着いたぞ」


 歩夢先生から借りた鍵を鍵穴に入れる。


 カチャ


 開閉音を確認すると扉を開けと、中は薄暗くホコリっぽい。


「とにかく、カーテンを開けよう」


 室内を進むとやはり、人の気配がする。俺は首を傾げた、これだけホコリだらけなのに気配がするよはいかに?


 俺がカーテンを開けると……。


「誰?」


 奥から蒼色の少女が現れる。


「こんなにも簡単に会えるとは思えなかった」


 俺は思わず口にするセリフであった。


「わたしは『佐野 真奈』だよ真奈って呼んで」


 真奈は幽霊を見て泣きだすかと思えば普通に自己紹介をする。やはり、真奈がいてよかった。


「俺は武蔵だ、先ほど、グランドで見かけてそのクールビューティー魅かれてここまで追いかけてきた」

「素直なヤツだ。わたしは入江、見ての通り実体はない存在だ」


 キリっとした言葉に眼差しは曇りなきものであった。


「せっかくだ、友達にならないか?」


 入江はあごに右手を持っていき、どうするか考えている様子である。


「あー、わたしも、わたしも、友達になしましょ」


 真奈の言葉を受けて、表情が和らぐ。


「良かろう、これから、友達だ」


 入江は古い携帯を取り出してもっとネットにアクセスして友達認証をする。


 しかし、幽霊なのにもっとネットを使うとは……?


「不思議そうね、わたしは幽霊ではなくて、データの塊なの」

「え?」

「この極地的SNSのもっとネット上で生きている存在なの、そしてこの旧美術室だけ実体化ができるの」


 この旧美術室がもっとネットの特徴であるマイホームのモデルとなったので実体化できるらしい。


 もっとネットは校内の公共の空間グループスペースと個別に持つことができるマイホームの二種類に分けられている。


 簡単に言えばこの旧美術室は入江のマイホームにあたる空間である。


「では、グランドで見た姿は?」


 入江はクルリと一回転してから話始める。


「色々原因は考えられるけど多分、時間切れの証拠ね」


 少し寂しげな入江に俺はそれ以上のことは聞けなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る