『むぎゅーとだよ』は好きですか?

霜花 桔梗

第1話 蒼色の少女

 季節は小春日和が心地良い晩秋の事であった。退屈な授業の後で、俺は教室の窓に向かいグランドを眺めていた。しばらくすると、蒼色の長い髪の少女がグランドを横切る。


 放たれたいるオーラはクールビューティーであった。イッキに目が覚めて蒼色の少女を見つめると幻覚であったのか消えてしまう。俺は携帯を取り出して学校単位で繋がるSNSのもっとネットにアクセスする。


 よし、当たりである。


 蒼色の髪の少女は話題になっていた。ある書き込みでは『旧美術室の幽霊』だとある。うん?誰かが話題の少女の書き込みを必死に抑えようとしている。


 数学の歩夢先生である。彼女にもう一度会いたいと思った俺は数学の歩夢先生と交渉すれは会えそうな直感を得る。俺が職員室に向かおうと思った瞬間に同じクラスで幼馴染の真奈が後ろから抱きついてくる。


『むぎゅーとだよ』


 ヤレヤレまたか。この『むぎゅーとだよ』は幼い頃からの真奈の癖である。


 最近は真奈の胸の成長によって、色々意識してしまう。それでも俺は『はいはい』と言って、腕を解くのであった。それでも、真奈が不機嫌そうである。


「あれって、旧美術室の幽霊だよね」

「あぁ、その可能性は高い。今から歩夢先生に会いに行って、確かめるつもりだ」


 暗黙の了解で真奈も職員室に付いてくる事になった。二人で廊下を歩いていると。まだ、真奈は不機嫌である。


「どうした?また、夫婦喧嘩か?」


 クラスの男子に声をかけられるが、ホントいつものことである。


「ま、そんなところだ」


 男子からのヤジも気にせずに更に歩くのであった。俺は教室から見えたグランドを歩く蒼色の少女について考えていた。


「もーわたしを見てよ」


 最近は本当に大人びてきたが言動はお子様である。


「分かったから、機嫌を直せ」


 そんな会話をしながら二階の職員室に入るのであった。生徒のちらほらいて、放課後の職員室はそれなりの活気であった。


 俺と真奈はジャングルを探検する気分で奥に進む。職員室の奥にいる歩夢先生を見つける。彼女は華麗な容姿に髪はポニーテールにまとめていた。また、彼女は三十路の独身でいかにも仕事疲れの雰囲気であった。目的の歩夢先生に近づくとノートパソコンカタカタしていた。


「あーの……」


 俺が話しかけると歩夢先生は椅子を回してこちらを正面にする。


「先生でしたね、先ほどの騒ぎに一番関わっていたのは」


 言葉を選んで交渉のテーブルにつかせよとする。歩夢先生は大きく息を吐き、机の上にあるコーヒーをすする。


「君は203ホームの『海道 武蔵』君だったな。目的はなんだ?」


 それは色々認めた上での問いであった。


「純粋な好奇心です」

「まるでパンドラの箱だな……よかろう、彼女の苦しみを癒せるかもしれない」


 歩夢先生は机の引き出しから鍵を取り出す。


「これは……?」

「旧美術室の鍵だ、そこに彼女はいる」


 それは交渉成立であった。


「むーわたしも、わたしも!」


 歩夢先生との緊張感がなくなると真奈が騒ぎ出す。


「あぁ、真奈も一緒にだ」


 俺達が職員室を出ようとすると。


「その好奇心で永遠の苦しみから……」


 後ろから歩夢先生の風の様な言葉が聞こえた気がした。そう、この物語は好奇心から始まったのだ。

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