第5話接近・・・・できてるといいけど
昨日の部活で起こった修羅場を潜り抜け今日も今日とて学校に向かっている。
部活での修羅場はなんとかなったが、家で起こっている修羅場は解決の目処が立たない。
そろそろ本腰を入れて解決策を練らなければ・・・・。
そんなことを考えながら歩いていると、いつのまにか学校に着いていた。
失われつつあるコミュ力で正門の先生に挨拶し、自分の教室に向かう。
朝の教室は静かで落ち着く。この時間は部活の次に好きかもしれない。
教室に着き、自分の教室の席に腰掛ける。
隣のリア充集団のリーダーは遅刻ギリギリに来るわけでもなく、俺が来る前に必ず教室にいる。
化粧と呼んで良いものか分からないが、そのような顔のお絵かきも済ませてある。
そこに関してはさすがリア充と言えるが、リア充なら遅刻ギリギリに来るべきだろう。
ちなみに意外にも十文字さんは遅刻ギリギリでいつも来ている。
さすが本物の元リア充だ。
これが偽物と本物の違いなのか。
そんなことを独り言のように心の中で話しながら、俺は日課?の寝たふりをしようとすると「あぁぁぁーーーーーーー!」と大きな声が隣から聞こえてくる。
嫌な予感がしたので俺は寝たふりをそのまま続行しようとすると、「また無視!もう無視はやめてよ!中学の時の山本さんみたいなことしないでよ!」と半泣きで叫んでいる。
山本さん無視は良くないよ。てかリーダー中学の時無視されてたのか。と余裕ぶっているものの内心ビクビクしている。
隠キャにとって目立つことは5本の指に入るくらいにやばい事で、それだけならまだしも目の前で女の子が半泣きになっている。傍から見れば俺が泣かしているように見えるだろう。
さらにその女の子がこのクラスを牛耳っているグループのリーダーという踏んだり蹴ったりな状況。
教室に人が少ないとはいえ流石にまずい。
俺はリーダーの手を引いて部室へと全速力で向かう。
途中知らないやつから冷やかしの言葉をかけられたりもしたり、聞き覚えのある声で呼び止められたが、振り返る余裕なんてない。
そんなこんなで部室に入る。
「なによ、私を誰もいない教室に連れ込んで。も、もしかしてこれから私に性教育を施すって言うの!きゃーやめてー!」とリーダーは俺に話す余地を与えないかのように1人で妄言を叫んでいる。
俺は女の子に無理やりなんて趣味はない。ほんとだよ。
とまぁそんなことはさておき早く弁解せねば。
俺はリーダーの両肩を両手で持ち「落ち着いて。ここに連れてきたのは君の言う性教育を施すためじゃないんだ。」と説得を試みる。
「嘘よ!うちそんな簡単な女じゃないんだから!」
聞いちゃいねぇー。こいつの頭は思春期男子を超えている。
こんな早朝にそんなことする奴いないだろ。
俺は誠実さを証明するために、自分のネクタイで自分の手首を縛る。
「これで理解してくれ。俺は君に性教育をするつもりなんて微塵もないんだ。」と必死に訴える。
「縛りプレイが好きだという暗喩じゃないの?」と引き気味に聞いてきた。
「俺は縛られてるより開放的なほうが好きだ!」
「キモッ。外派なんだ。まぁいいや、認めてあげる。そんなことより何の用?」と偉そうな感じで聞いてきた。
別に外がいいわけではないんだが・・・・。なんなら家でまったり・・・・そんなことはいい、ようやく話が進められるんだ。多少の犠牲はつきものだ。
「君も元陰キャならわかると思うんだけど、君が俺の前で半泣きになりながら大きな声で叫んでいたら俺は社会的に死ぬよね。」と年下の子に説明するかのように言う。
「そんなの知らない。あんたが無視するから悪いんじゃん。」
なんなんだこの女は。これが俗に言うイキリ陰キャというやつなのか。
そうこうしているうちに朝礼開始のチャイムが鳴る。
「すまない。俺のせいで朝礼に遅れちゃったね。俺が先生に説得して君が悪くないことはしっかり証明するから。」
さすがに俺のせいでリーダーが遅刻判定されるのは申し訳なさすぎる。
これは俺がすべき当り前の行為だ。まぁ朝礼までには話が終わる予定だったんだが・・・・。
しかしリーダーの様子がおかしい。
「あんた馬鹿じゃないの!全部自分で罪を背負い込んで!うちも長々とあんたと話してたんだから共犯に決まってんじゃん。ちなみにうちの名前は君じゃなくて宝泉霞。霞って呼んで!ほら行くよ!」そう言って霞は俺の手を引いて教室に早歩きで向かう。
霞の男前な行動に反し、まるでガラスのように儚く、シルクのように滑らかな手。
俺はそのギャップにやられてしまいそうだった。
今ならリア充グループの男共と分かり合えるかもしれない。
しかし何だろう。なぜか手を引かれながら歩いていると、どこか懐かしさを感じる・・・・。
教室についてからはまぁ想像通りという感じで、2人手をつないで帰ってきたということで罵声やらなんやらでもうカオスだった。
霞も俺も顔を真っ赤にしている。傍から見れば公開告白に成功した高校生カップルのようだった。
十文字さんは見たことのない顔をしている。
俺は怖くて、その日の休み時間はすべてトイレで過ごした。
そんなこんなでいつの間にか終礼が終わっていた。
どうやらいつの間にか眠っていたようだ。
安定に誰も起こしてくれなかったようだ。教室にはもう誰もいない。
さぁ部活に行こうかと席を立とうとすると、袖を引っ張られる。
「一緒に部活行こ!」とまぶしい笑顔で話しかけてきた。
どうやら霞が残っていたようだ。
「待っててくれたの?」
「な、なに言ってんの!たまたまよ!たまたまやることがあって残ってただけなんだから!そんなことより早く部活行こ!」と顔を真っ赤にして言う。
かわぇーーー。これがツンデレってやつだな。なかなかいいものだ。
そんな会話も終わり俺たちは部活に向かう。
正直部活に行くのは少し怖い。どうしても十文字さんのあの顔を思い出してしまう。
でもなぜだろう霞はすごくうきうきしている。
そもそも霞は部活に積極的ではなかったはず・・・・。
なんだか嫌な予感がするのは俺だけだろうか。
そんなことを思っていると部室の前についていた。
俺がドアノブに手をかけようとすると、その手を握られそのままの勢いで部室のドアを開けられる。
「おっすー十文字!うちら親友になっちゃったー!なんかごめんねぇー!」と得意気な顔で言う。
どうやら霞は十文字さんにマウントを取りたいようだ。
でもこの感じは親友って感じじゃない気もするが・・・・。
「陰太君どういうこと?いつから付き合ってたの!もしかしてもう突き合ってるの!そこまでの関係なの!この変態!」と興奮気味に聞いてくる。
「何言ってんの?付き合ってないし!まぁ付き合ってるように見えても仕方ないかぁー。それぐらい仲良しだもんねー。」と顔を真っ赤にしながらも霞はさらに煽る。
「な、な、つまり体だけの関係ってことね!てことは廊下ですれ違ったときに声をかけたのに無視したのは、あまりに興奮して、気づかなかったってことね!このケダモノ!」
あの聞いたことのある声は十文字さんだったのか!そんなことよりまずいことになってる気が・・・・。早く止めないと。
「霞さん一旦だま・・・・」
「あんたは黙ってて、体だけの関係っていうのは意味わかんないけどまぁあんたの想像通りの関係ってこと。ふん残念ね!うちの前にひれ伏すがいいわ!」と見事に何もわかっていないのに凄い自信気に霞は答える。
この後俺の身に何が起こるのかを知らずに・・・・。
「陰太君歯を食いしばって。」とまるであの年末の笑っちゃダメなやつのあの名シーンのような雰囲気が出ている。
俺は一途の可能性に賭けて「違うねん。霞が勘違いしてるだけやねん。しんじ・・・・」と言い終わる前にバチィィィンと頬に鈍い音と鋭い痛みが走った。
チッ!あの年末の笑っちゃダメなやつのように関西弁で言えば何とかなると思ったんだが・・・・。
「ねぇそんなことより、なんであいつのこと名前で呼んでるの?」
「あぁーえぇーとそれは霞にそう呼べと言われてー。」
「何言ってんのよ!あんたがどうしても呼びたいって言ったんじゃん!」
なんでこんな嘘つくんだ・・・・。また場が荒れるじゃないか。
と思ったが例のごとく霞の意見に耳を貸さず「ふーん。じゃあ私が萌衣って呼んで欲しいって言えば呼んでくれるの?」
「おい!また無視か!うちが懇願したんじゃないって言ってんじゃん!」
悪いが俺も面倒なので今回だけは無視させてもらうことにしよう。
「分かりました。これからはそう呼びます。これからもよろしくお願いします。萌衣。」
すると萌衣は後ろを向いてうなずいていた。
これでよかったのだろうか。正直すごく恥ずかしい。霞の時はこんなに動揺しなかったんだけど・・・・。
落ち着いたのか萌衣はこちらを向いて「ついでなんだけど敬語もやめにしてくれないかしら?」とさらなるお願いをする。
でも俺の動揺はまだ収まっておらず「はい・・・・。あっすいませ・・・・了解!」と変な感じになってしまった。
「ふふっ。陰太君やっぱり面白いわね。」と透明感という言葉だけでは言い表すことが失礼なほど透き通った笑顔を見せる。
まぁ笑いがとれたのなら良しとしよう。
「今日はもう解散にしましょう。」
「そうだね。」そう言って部室を後にしようとすると「あんた達またうちをのけ者に・・・・。それに名前呼びも・・・・。ふん、この馬鹿、マヌケ、クソ陰キャ!」
そう言って霞は部室を一目散に出て行った。
最後のクソ陰キャって確実に俺のことだよな。
まぁでも霞には悪いことをしてしまった。
次にあった日には何かお詫びをしなくては。
まぁ悩みの種はそれだけじゃないんだけど・・・・。
明日は土曜日だし謝罪を込めて久しぶりに陽奈たんを遊びに誘おう。
それで許してくれるといいんだけど・・・・。
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