第4話修羅場 真実 修羅場

 陽奈さんとの夫婦喧嘩?から1ヶ月ほどが経った。

 俺は許しを込めて、陽奈さんの好きなピスタチオのモンブランをあげたのだが許してはくれなかった。まぁ少し口元が緩んでいたような気がしたが・・・・。

 陽奈さんとの喧嘩と同時に、学校生活も1ヶ月経っているということを忘れてはならない。

 相変わらず俺はぼっちを極めているというわけだが、俺は最近学校生活で趣味を見つけた。

 趣味について話すために、1つ長い前置きを聞いていただきたい。

 学校生活を送るうえで自然とグループができる。

 それぞれ趣味の合う者同士や、中学からの友達など多種多様なグループが存在する。

 1ヶ月も経てば確立するわけで、俺の席は窓側の1番後ろであり端というぼっちにとってはありがたい高待遇な席なのだが、俺の隣には休み時間になるとクラスで1番目立っているグループ、いわゆるリア充グループが集まる。

 その中には入学式で俺に嫌がらせをしてきたやつもいて、最初はわざと俺の近くで集まって嫌がらせしてるのかと思った。

 だがそれは、俺の被害妄想だったと気づく。

 グループには必ずしもリーダーがいて、それはどのグループにも共通していることである。

 不幸なことにそのリーダーが俺の隣にいたようだ。

 髪の毛は自分で染めたのかというほどムラがある金髪に、覚えたてかのような化粧、スカートは覗いてくださいと言わんばかりの短さ。

 だがそれでもかわいい。それらをすべて打ち消すようにかわいい。改めてかわいいの怖さを思い知った。

 しかし、こんなにケバイのになぜか俺には彼女から清楚な気品を感じる。

 ついに俺の目は節穴と化してしまったのだろうか。

 そんな彼女がリーダーであるグループは男3女4の編成で出来ている。

 女の子のほうはリーダー以外たいしてかわいくなく、ただただケバイだけで、男もただただチャラいだけの何の魅力もないグループである。

 たいして面白くもないことを大きい声で話し、まるで自分たちがこのクラスの王かの様な態度でいる。

 傍から見れば彼らは本物のリア充グループに見えるかもしれない、実際そうなのかもしれない、しかし俺の高校デビューサイレンが犯罪者を見つけた時より大きな音を立てていた。

 俺はあのグループの人間全てが高校デビューではないかとなんとなくだが思ってしまった。

 これは妬みでも何でもないということはわかっていただきたい。

 ただまぁ・・・・うん・・・・少しはあるかも・・・・。

 ちなみに十文字さんは休み時間になると、忙しそうにどこかへ行く。

 他のクラスに彼氏でもいるのだろうか。いないことを願うしかできない自分が腹立たしい限りである。

 別に好きってわけじゃないんだからね。

 とまぁ長い前置きも終わり、俺の趣味を紹介できる時が来たようだ。

 俺の趣味は『隣のリア充グループの観察』である。

気持ち悪いと思われるかもしれない、実際自分でも気持ち悪いと思う。

 身内にバレたりしたら俺は紐なしバンジーを決行せざるを得ないだろう。

 それでもなおこの趣味を続ける理由は、ただただ楽しいからこれに尽きる。

 何が楽しいかって、そりゃあ男3女4という恋愛関係がこじれる最高のシチュエーションだからでしょ。

 俺が見る限りではリーダーの女の子を男3人が狙っているという形で、他の女の子は眼中にない。それに気づいていない女の子3人のアグレッシブな態度、見ているだけで滑稽である。

 しかも、リーダーの女の子は自分が狙われていることにもおそらくだが気づいていない。

 そこがいい。

 俺は彼女らのそんな会話を寝たふりをしながら聞いている。

 はぁみじめだ・・・・。

  







 そんなこんなで部活の時間が来た。

 なんだかんだ部活の時間が好きで、最近はこの部に入って心底よかったと思えるようになってきた。

 最近は萌衣ちゃんよりも十文字さんのほうが多いがまぁどっちも嫌いじゃない。

 部室の前につく。なんだか今日は部室が騒がしい。

 「あんた高校に入ってから急におとなしくなって、えっなになにそれがかわいいと思ってんの。よく見るとあの子かわいいってキャラ狙ってんの?マージきもいんですけどー。」

 うわーえぐいこと言ってんなー。誰か喧嘩しているのだろうか。

 よく見るとあの子かわいいキャラ俺は結構好きだけど・・・・。

 誰が喧嘩しているのか興味がないと言えばうそになるが、厄介ごとはごめんだし今日は帰ろう。

 そう思い部室を後にしようとすると、バァァァァンンと何かが勢いよく倒れる音がした。

 これは無視して帰れないなと、俺の1ミクロンほどの正義感が訴えてきて、そのままの勢いで部室の扉を開ける。

 そこには宝くじが当たった時よりも現実味がない光景が広がっていた。  

 女の子がしりもちをついて倒れている目の前に机が倒れており、その机に脚をのせお前の席ねぇからと言わんばかりに十文字さんが立っている。

 よく見ると、しりもちをついて倒れている女の子はリア充グループのリーダーではないか。

 「調子乗ってんじゃねーぞ。高校デビューの分際でよー。誰のおかげで今の学校生活があると思ってんだ。久しぶりに部活に来たと思ったらよー。」

 十文字さん怖えー。キャラ崩壊ってレベルじゃねぇぞ。

 もうすでにリーダーの目には涙が溜まっている。

 「うぐっ、な、なによ、あんたなんて高校に入ったっきり友達出来なかったくせに。なんならこの部活だってあんたが友達を作るために入学してすぐに作った部のくせに。」

 えっそうだったのか。だから何をする部か聞いたとき曖昧な返事が返ってきたのか。

 かれこれ30分近く彼女たちの口喧嘩を見ている・・・・。

 なんで止めないんだとか言われるかもしれない、この際理由をはっきり言おう。

 マジ怖い!

 これに尽きる。

 そんなこんなで彼女たちは疲れたのかその場に座り込んでしまった。

 ようやく喧嘩が終わったのか。1時間半は罵り合っていただろうか。

 高校デビューだの逆高校デビューだの知りたくないことをいろいろ知ってしまった。

 さすがに今日は部活をやる雰囲気ではない。

 そう思い俺は部室から出ようと方向転換をすると、キュッと音が鳴ってしまった。靴と床がすれて出るあの音だ。

 「えっ誰。」2人同時にそう言って2人同時にこちらを振り向く。

 実は仲がいいのではとか、そんなことを考える余裕はなかった。

 俺はとっさに変顔をして「おいおい君たち喧嘩はよくないぞ。」と言ってあえて大統領のように堂々と胸を張って部室を出ようとした。

 そんなやり方がまかり通るはずもなくあっけなく捕まってしまう。

「陰太君いつから居たの?」と嘘なんかついたら殺されてしまいそうなそんな声音で聞いてきた。

 「居たのは机をけり倒した所からです。」

 十文字さんは頭を抱えながら「1番見られたくないところを・・・・。」と言う。

 「幻滅したかしら?」

 「いやいやまさか。俺は十文字さんにすごく感謝してるんですよ。自分の私情混じりだったとしても俺に居場所をくれたんですから。むしろ素の十文字さんを見れて嬉しいくらいですよ。」

 すると十文字さんは顔を真っ赤にしてそっぽ向いてしまった。いや、この場合は十文字さんではなく萌衣ちゃんか。

 今日も今日とて萌衣ちゃんを見れて幸せだなぁ。

 「じゃあこの部屋片づけますか、萌衣ちゃん。」

 「そうね。てか、陰太君時々私のこと萌衣ちゃんって呼ぶけど何なのかしら?」

 「まぁまぁ。」俺はそういってごまかしながらそそくさと掃除を始める。理由なんて言えるはずがない。言えばどうなるかなんて明々白々ということだ。

 そんなこんなで2人で掃除をしていると、「ねぇうちは蚊帳の外ってわけ?」と大きな声で怒鳴る声が聞こえる。

 声のするほうへ振り向くとそこにはリーダーの女の子がいた。すっかり忘れていた。ていうか、リア充のくせに蚊帳の外なんて難しい言葉を知っているなんて・・・・。

 「まだいたの?いるなら掃除手伝いなさいよ。あっ真のリア充には掃除できないわよねー。」と半笑いで言う。 

 十文字さんえげつねー。

 リーダーの女の子は半泣きになりながら「当り前よ。うちはリア充なんだからね。」そう言い残して走り去ってしまう。

 さすがにかわいそうだと思いつつも十文字さんが怖いので何も口出しはできなかった。









 掃除は1時間ほどで終わった。

 十文字さんはリーダーの女の子にえぐいことを言ったっきり、自分が倒した椅子を立てて座った。

 まぁつまり掃除は俺1人でやったということだ。

 これは何も言えない俺が悪いのだろうか・・・・。

 そんなことを考えながら俺は家に向かう。

 今日の部活は修羅場だった。

 だが俺は家に帰っても修羅場である。

 はぁみじめだ・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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