第3話 エルエル3

「堕ちるは私のものだ! 天使のくせに、女神に歯向かうな!」

「嫌です! 堕を幸せにするのは私の役目です! こればっかりは相手が女神様であろうとも譲れません!」

 エルエルと女神の堕を争う口喧嘩は学校まで続いた。

「はあ・・・・・・僕は無関係です。」

 堕は二人の女性から、とても愛されていた。

「堕! 落ちこぼれみたいな名前のくせに女にモテるからって調子に乗るなよ!」

 そこに一人の男が現れる。

「悪魔のおまえに言われたくないわい。」

「そう、その通り。俺様は悪魔だ。ワッハッハー!」

 現れたのはクラスメイトの高橋悪魔。ちなみに弟の名前は高橋邪神くん。

「はあ・・・・・・ここにも居たよ。救いようのないアホが。」

「誰がアホだ!? 俺は悪魔だ!」

「はいはい。」

 鈴木と高橋は昔から仲が悪かった。

「女神ちゃん、俺と付き合ってください!」

「ごめんなさい。私、堕ちるが好きなの。」

「ガーン!」

 原因は悪魔は女神が好きであるが、女神が堕が好きだからだ。

「僕が平和に生きられる場所はないのか?」

 一方の堕は他人は眼中になく、自分の居場所を探していた。

「よしよし。堕は良い子だよ。」

 そして堕はエルエルに子犬の様にあやされる。

「ん!? 堕の周りに女が一人増えてるぞ!?」

「初めまして。私、天使のエルエルです。宜しくお願い致します。」

 高橋が気づきエルエルが丁寧に挨拶する。

「エルエル。そいつ悪魔だぞ。」

「え? ええー!? なんですと!? 私は悪魔なんかに挨拶してしまったというのですか!? ああ~!? 私は天使失格だ!?」

 高橋が悪魔と知り後悔するエルエル。

「すごい自己嫌悪だな。」

「エルエル。あなたの罪を女神である私が許します!」

「ありがとうございます! 女神様!」

 天使エルエルの罪を許す佐藤女神は神々しく輝いていた。

「天使! 復活! ニタニタニターッ!」

 罪がなくなったエルエルは元気に甦った。

「クソッ!? 天使と女神と悪魔で物語がうまくかみ合っている!? 僕の居場所がないじゃないか!?」

 ますます微妙な立場に立たされる堕。


「この世には天使がいて、悪魔もいる。もちろん神に女神もいれば邪神もいる。彼らは人間界にもいる。なら人間の僕はいったい何のために? 僕はなぜ生きているのだろう?」

 堕は自分の存在価値が分からなかった。自分に何ができるのか? 自問自答を続けていた。

「俺が天使を倒す! 面白いものを見せてやろう。アイツを見ろ。」

「うん?」

 高橋は普通の一人の高校生を指さす。

「人間の心には天使も悪魔も飼っている。果たして、あいつの心には天使と悪魔、どちらを飼っているかな?」

「なに!?」

「悪魔召喚! デーモン・コール!」

 高橋は人間の心に住む悪魔を呼び出そうとする。魔の魔法陣を発動させる。


「痛い。」

 高校生は登校中に歩いていて、知らないおじさんにぶつかられた。特に高校生が悪い訳ではない。偉そうなサラリーマンのおじさんが道を譲らないで、高校生に態とぶつかってきたのだった。日頃のストレスの憂さ晴らしをするかのように。

(おまえは何も悪くない。悪いのは向こうだ。おまえにはやられたらやり返す権利があるんだ。)

 悪魔が高校生の耳元で囁く。

(許さない! 殺してやる! 復讐してやる! うおおおおー!)

 被害にあった高校生の心に悪魔が生まれた。


「スラスラ。」

 悪魔スライムが現れた。

「悪魔だ!?」

 エルエルは悪魔が現れて驚く。

「ほうほう。悪魔か。って、悪魔なんかいるか!」

「わ~い。悪魔悪魔~。」

 堕と女神は普通の人間なので悪魔の姿は見えなかった。

「チッ、スライムか。肩がぶつかっただけだからな。殺意が弱かったか。」

 人間の殺意や悪意の大きさによって、召喚される悪魔のレベルが変わるらしい。

「ていうか、なんでおまえが悪魔なんて呼べるんだよ!?」

「我が家は代々、悪魔を呼び出せる家系なのだ! ワッハッハー!」

 高橋家は悪魔な家系であった。

「家系か、便利な言葉だな。」

 堕は黄昏ているが戦いは続く。

 つづく。

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