第62話 新月
カクテルグラスを片手にベランダに出る。よく晴れた新月の日、太陽に隠れて見えない新月の、影をグラスに閉じ込めれば死んだ人に会えるのだ。
捕まえた。
ほら、グラスの影から、亡き妻の影が踊り出す。じりじりとグラスから影が逃げていく。
ああ、もう時間か。また次の新月までさようなら。
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