第44話 塀の穴
道路を歩いていたら、ブロック塀の穴から何本も手が伸びている。
向こう側は見えない、手はおいで、おいでと招いてくる。
怖い。しかしよくみると、見知った手であるような気がする。
年老いた女性の手が私の手をさする。母の手だ。
ここにいる手は、先だった大事な人たちだ。
思わぬ素敵な白昼夢に、涙がこぼれた。
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