第1話 「花の約束」
少年「兄ちゃんたち!あそこ!あそこだよ!!」
少年に案内され、現場付近に到着するアルド達。その先では、青い髪の青年がヤクシャ3体に囲まれているのが見えた。
リィカ「敵性勢力3体、確認シマシタ!現場ヘ急ギマショウ!」
アルド「分かった!行くぞ、みんな!」
そう言って現場へ向かうアルド達だったが、それを見送る少年がぼそりと呟く。
少年「あれ?襲われたときあんなに少なかったっけ…?」
その呟きに気付かないアルド達であったが、現場から聞こえてきた声に思わず足を止める。
青年「邪魔をするな…俺には時間がねぇんだよ!!!!」
次の瞬間、青年はヤクシャ3体を殴り倒してしまったのだ。よく見ると青年の周囲には倒された魔物の遺物が残っており、青年の拳には魔物の血がしたたり落ちていた。
その様子に圧倒されていたアルド達だったが、魔物が消滅した後に青年へ接触する。
アルド「大丈夫か!?」
青年「なんだ、あんたら?…な!?その姿、お前らも魔物仲間か?」
青年が再び臨戦態勢に入る。その視線の先にはサイラスの姿があった。
アルド「違う、誤解だ!俺たちはあの子に聞いて駆け付けただけなんだ!」
青年「ガキに、ってさっきの坊主じゃねぇか!無事だったか!」
少年の姿を見るやいなや、青年の鬼のような形相は優しい表情へと変わる。少し落ち着き、警戒心を解いた青年は再びアルドに話しかけた。
青年「あんたたちが坊主を助けてくれたんだな。それも知らずに疑っちまって悪かった!」
サイラス「気にしなくていいでござるよ!この姿は誰でも驚くでござるからな。」
青年「そう言ってもらえると助かるよ。」
お互いに言葉を交わし、疑いが晴れたところでエイミが声をかける。
エイミ「ここはまだ危険よ。話はこの子を送り届けてからでもいいんじゃない?」
青年「それもそうだな!俺の名前はヴィンデ。ザルボー出身の花守代行をやってる!」
アルド「俺はアルド、冒険者だ。とりあえず、リンデに行こうか!」
そういって、一同はリンデへと足を進めた。
少年「本当にありがとう!」
そう言って家へと走っていった少年。その様子を見送ったあと、ヴィンデのほうから話を始めた。
ヴィンデ「とりあえず、さっきはありがとな!いろいろ助かった!」
アルド「気にするなって!にしても、ヴィンデは強いんだな。それに、花守代行ってなんなんだ?」
ヴィンデ「あぁ。花守ってのはザルボーのある一族が代々引き継いできた役職でな。ただ、今代の花守はちょいと体が弱くてな…そこで、そいつの幼馴染の俺が代行で花守をしてる、ってわけだ!」
リィカ「タイヘン興味深イデスネ!」
ヴィンデ「まぁ、花守っていっても何をするかよくわかってねぇんだけどな!昔は本当に花を守っていたらしいが、今は代々に伝わる箱を守る役割なんだとよ。」
自身のことについて、明かしたヴィンデ。次はヴィンデからアルド達に質問する。
ヴィンデ「ところで、アルド達は冒険をしているって言ってたよな? 一つ聴きたいことがあるんだが、いいか?」
アルド「あぁ、俺が答えられることなら!」
ヴィンデ「『アマリリスの花』って花を知らないか?」
エイミ「うーん。ごめんなさい、聞いたことないわね…リィカ知ってる?」
リィカ「ソノ名称ト一致スル花ハ未来ノネットワークニ存在シマセン」
アルド「悪い、俺も聞いたことないな。どうしてその花」
ヴィンデ「そうか…まぁ、せっかくの縁だしあんたらには話してもいいか。さっき言った、今代の花守にその花を見つけてきてほしい、って言われてな。ただ、花の名前とその花らしい絵だけしか情報がないもんだから見つけようがなくてな…。」
少しうつむいて、暗い顔をするヴィンデ。一息ついて、再び口を開く。
ヴィンデ「あいつは身寄りのない俺を引き取って、こうして仕事までくれたんだ…。どんなに無茶でも、あいつの頼みならいくらでもやってやるさ。昔から病弱で、ここ最近では女の子らしいことも出来ずにただベットから外を見るだけ…。そんなあいつを少しでも笑顔にしてやりたいんだよ。」
アルド「ヴィンデ…」
ヴィンデの表情に、アルド達も悲しげな表情になる。
ヴィンデ「悪いな、無茶なこと聞いて。まぁ、俺だけでも絶対見つけてやるさ。」
そういって、去ろうとするヴィンデをエイミが引き留める。
エイミ「さっき、絵があるって言ってたわよね?もしかしたら、名前は知らなくても見たことならあるかもしれないわ!」
ヴィンデ「あぁ、そうだな。ほら、これだよ。」
ヴィンデが絵を見せたとたん、アルド達は目を見開いて驚いた。
アルド「これって…」
アルド一同「煉獄界に咲いてた花!!」
ヴィンデ「知ってんのか!? なんでもいい、俺にその花について教えてくれ!」
サイラス「ううむしかし、そうはいってもヴィンデ殿が行ける場所ではござらんからな。」
ヴィンデ「そんな…俺はどうしたら。」
暗い表情を浮かべるヴィンデ。やっと見えた希望を、あと少しのところで掴めない悔しさが握る拳を強めさせる。そんなうつむいたヴィンデの顔を上げさせたのは、アルドだった。
アルド「良ければ、俺たちが取ってこようか?」
ヴィンデ「…なんでそこまでできる? 今日あったばかりの俺に、なんで…。」
アルド「俺はヴィンデだから助けたいんだ! それに、手助けしたいと思ったら動いかずにはいられないんだ、俺。」
笑顔でそう言ったアルドの姿をみて、ヴィンデの脳裏に昔の記憶がよぎった…。
=====================================================
ヴィンデ少年「どうして、俺なんかを引き取ってくれたんだ?」
???「ボクがそうしたいからさ! それに、ヴィンデは外のお話をいっぱいしてくれるだろう? ボクはもっと君の話を聞きたいんだよ!」
=====================================================
ヴィンデの中でアルドと彼女のことが重なる。少し笑って、アルドの方を向いて再び話だす。
ヴィンデ「…はは。お前もあいつと同じでお人好し、ってことか。」
アルド「ん?」
ヴィンデ「分かった、アルド、みんな。改めて俺からの頼みだ。アマリリスの花を取ってきてほしい。」
エイミ「任せてちょうだい! 必ずとって来るわ!」
ヴィンデ「俺ももう少し探してみる。もし見つかったら、リンデにいる俺のところにきてくれ!」
アルド「ああ、分かった!じゃあ、行ってくるよ!」
こうして、アルド達はヴィンデのもとを離れていった。その場に残ったヴィンデは彼女と約束をしたときの言葉を思い出す。
=====================================================
???「ヴィンデはきっと持ってこれる。道に迷っても、きっと君を導いてくれる人が現れる。そして、ボクのもとへ花を持ってくるのさ! 大丈夫、ボクはヴィンデを信じているからね!」
=====================================================
ヴィンデ「『ボクはヴィンデを信じている』。昔からのお前の口癖だったよな。まさか、お前にはあいつらのことも見えていたのか…? ……なぁ、アマリリス。」
そう言って、アルド達に背を向けて、おのが道へと歩みを進める。 憂いを帯びた表情のヴィンデの青い髪を、吹き抜ける潮風がそっとなびかせていた。
------------------------------------------------------------------------------------------------
登場人物(アルド達は除く)
『ヴィンデ (18歳)』
・ アルド達が出逢った、青い髪の青年
・ 花守という役職の代行を務めているが、その詳細はよくわかっていない。現在は幼馴染である今代花守のために尽力している。
・ 力は強いが性格はとてもやさしく、義理堅い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます