蜜音の身の振り方について
さて、坂本先輩も登場して乱痴気現場が静かになったので、いやおうなしに謙信と蜜音の話し合い……いや怒鳴り合いみたいな声が響き渡ることになる。
「蜜音……そうか、おまえは……ひょっとして、AVデビューする目論見でここに参加した側面も……」
「え、ち、ちがうまって、そんなこと考えてない、本当に考えてない。わたしはただ気持ちいい行為が大好きだから……」
「そうか。俺よりも行為のほうが好き好き大好きなんだな」
「ちがうの、ちがうの! 気持ちいいのももろちん好きだけど!」
蜜音、もう快楽から逃れられないようなお約束のいい間違いしてんじゃねえか。そういうとこだぞ。
「だけどだけど、謙信となら、たとえ気持ちよくなくても、へたくそだったとしても、わたしは幸せになれるの!」
「ぐはっ!!」
あーあ、蜜音はもうだめだ、救いようがない。謙信に大ダメージ与えてどうする。
ソレ、暗に謙信が未経験でおそらくテクニックなど皆無だろうから、謙信とのセクロスは気持ちよくなれないって言ってるのとおんなじだからな。
なんでビッチってこういう言い訳が好きなんだろう。快楽ってのは倫理の向こう側にしかないような言い分。
好きと快楽が別物だったとしても、それでみんなが納得したらこの世は修羅の国の如く無法地帯だ。いや、無法痴態が正しいか。
「……修羅の国では、百人の女をイカせないと一人前にはなれないというのか……」
あ、謙信も同じこと考えてらあ。
「童貞の俺には、遠い道程だな……」
「そんなことない! 謙信、ね、教えてあげるから! わたしが手取りマラ取り教えてあげるから! ね? だから私と一緒にうまくなろ?」
「ふざけんな! それでも蜜音は、俺とのセクロスに不満を持って違う男と欲求不満解消に先走るんだろうが!!」
「しない、そんなこともうしない! 先走るのは謙信の汁だけにするからぁ!! 愛のあるセクロスは、愛のないセクロスと違って罪悪感にさいなまれない分、幸せな気持ちが持続するの!! だから、その幸せがあれば、わたしはがまん汁……」
「乱痴気で防御膜すらつけてねえくせに、そんなとってつけたような言い訳してんなよこのクレイジーサイコビッチ!! おまえなんかAV堕ちして家族や知り合いから後ろ指さされる人生を送るのがお似合いだ!! フ×ッキン!!」
「そんな、そんなぁぁ……お願い、お願いだからファ×クしてよぉぉ……」
「もう蜜音とは別れるから、それはない」
「いやああああああぁぁぁぁぁぁ!! それだけは、それだけは死んでもいやああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
この掛け合いは新しいタイプの漫才だろうか。ネタがネタだけにマン才といったほうがいいのか?
いや確かに蜜音にはマンの才能はあるだろうからな。マンの才が満載。うむ、床上手レベルでうまい言い回しだな。
それにしても、蜜音にも乱痴気することに罪悪感はあったんだ。びっくり。
俺によるいままでの経験も加味すると、罪悪感をもってしても快楽に抗うことができないメスをビッチと呼ぶのが正しいのかも。
でも、その口で謙信と別れるのが死んでも嫌とか言われてもなあ、って感じ。
「……すいません、そこにいるAVスカウトマンの先輩」
「ひっ!? お、俺はただ誘われて……」
ワンパンでチャラ男を沈めた謙信に抑揚のない低音で呼ばれ、AJPだっけかのスカウトマンのバカはズボンをはきながらビビッて飛び上がった。
足がもつれて無様にすっ転んださまが笑える。
わぁい、第二ラウンド開始かな、なんてワクワク……じゃなかった。いちおう坂本先輩の手でこの事実を明るみにしなければならないのだから、余計な暴力沙汰は避けねばならん。こんなバカのせいで謙信が罪を犯すことは回避せねば。いと犯し。
むろん蜜音をわくわくさんにすることも止めるぞ、四肢切断したい気持ちはわかるけど。
なんていらぬ心配をしていたら、謙信の口からとんでもない言葉が出てきた。
「……蜜音を、よろしくお願いします」
「へっ?」
「きっと蜜音は、AVの世界で輝ける存在になるでしょう。いや、天職とすら思えます」
「はぁぁぁぁ!?」
「ちょ、ちょっと!? 謙信、なんで、なんでぇぇぇぇ!?」
勝手に蜜音の未来を決めるような謙信のお願いに、スカウトマンはおろか、蜜音までも錯乱し始める。
「やだ、いやだ、謙信以外の男の人とセクロスしてるところを映像に残されて、大勢の知らない人に見られるなんていやだぁぁ!!」
「俺と別れるのと、AVデビュー。どっちが嫌だ?」
「どっちもいやぁぁぁぁ!!」
「もし蜜音がAVデビューしたなら、俺は蜜音と別れないで、彼氏のままでいてやると言ったら?」
「……」
え、え?
謙信、何を口走ってるんだ? ついに脳が破壊されたか?
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