オトナの世界も乱痴気の世界も汚いもんだ
「いや、止める気ねーし。だいいちああなっちゃったら俺に止められるわけもなかろうもん」
呆れとあきらめと拒絶を絶妙にミックスさせて俺はそう答えた。
すると、愛液と穴ハメと中絶をミックスさせたような絶望感とともに、乱痴気先輩は激昂する。
「な、なんだよ! 第一おまえもここのサークル所属だろうが!」
「こんなサークルだってわかってたら入ってねーし」
「う、嘘いうな! このサークルに所属するメリットを全く知らないとは言わせねえぞ!?」
「……は?」
「おまえだって、大企業に就職して明るい未来を手に入れたいだろう!? ここのサークルOBにはそんな先輩もたくさんいる、というかここのサークルに所属してないと、まずウチの大学の学力で大企業就職は不可能だ!!」
「……はー、なるほど」
先輩の言葉で謎が一つ解けたわ。
早い話が、このサークルのOBの存在が大企業への就職のコネになってる、ということね。そこまでパイプあるんかこの乱痴気サークル。
……いや、しかし。
少し考えれば不自然だということに、サルでも気づくんじゃないか、その論理。
だいいち、俺がもし就職してたら、こんな乱痴気サークルに所属してたような精子脳のオスや、快楽堕ちしたメスなんて採用したくないもん。
つまり、だ。
「ほうほう、なるほど。そのためには、大企業に勤めてらっしゃる方を接待しないとなりませんよね……性的な意味で」
カマかけ半分で、そう俺が問いかけると。
「そ、そうだ! 俺たちは見込みのある先輩たちにサークルの女子を紹介し、その見返りに様々な優遇を受ける。そしてサークルの女子もまた、就職はもちろんのこと、金銭的な見返りという抗えない優遇を受けるんだ!!」
「……なんかどっかで聞いたような内容だな、これ」
躊躇も何もなくそう答えてくれたモブ先輩のおかげで、ムナクソ悪さがやたらとこみあげてきた。こんなおおごとになりそうなことをベラベラしゃべるって、アホか。
…………
そっかー、この大学、偏差値のわりにやたらと大企業に就職したっていう事例が多数あって不思議だったけど、そういうからくりなんだなー。
というか確かに、乱痴気メンバーの中にどう見ても大学生とは思えない方がいらっしゃいますわ。接待受けてた側だなあれ。
一方、俺とモブ先輩の会話を聞いていたのであろう謙信が、今にも笹島蜜音をぶたんとしていた手をふと止めた。
「……金銭的な、見返り……だと……?」
手の代わりに視線で殴りつける謙信の威圧感。
それに耐えきれず、蜜音は白状した。
「あ、あ、だ、だって、謙信と、一緒に、温泉旅行に行けるだけの、お金が……」
えぇ……
蜜音のやつ、まさか謙信と一緒に温泉旅行に行く資金を稼ぐため、こんな乱痴気に参加したってのか?
この根性、商売人より悪質だぞ。
「だ、誰が、誰が……そんな汚いお金で、蜜音と旅行に行きたいなんて、言ったんだぁぁぁぁ!!」
「ご、ごめんなさいごめんなさい怒らないで。だって、謙信と、初めての旅行だから……許して、知られたくなかった、あたし謙信に嫌われたら生きていけない……」
「ふざけんなゴラァ!! バレなきゃ何してもいいって言うその考えがすでにビッチ以下なんだよ!! そんなきたねえお金で豪華な温泉に行ったって全然うれしくねえよ!!」
ここで俺と分かり合えそうな『
ひとりで頷く俺には目もくれず、謙信の罵倒は続く。
「温泉旅行と露天風呂、そして舟盛りを一緒につつきながらいちゃラブできるかと思ってワクワクしていた俺の純情を返せよ!!」
「後、ごめん本当にごめんなさい許して、舟盛りの代わりに女体盛りでもなんでもするからぁぁぁぁ……」
「蜜音のそんな汚い身体で女体盛りなんかしたら魚が腐って食中毒おこすわ!!」
謙信のキレキレっぷりがパない。ついさっきまで蜜音への愛を語ってたやつと同一人物とは思えない豹変ぶりだが、普通はこうなるよな。
しっかしなるほど、つまりさっきまで蜜音が吹いてた潮は、魚を腐らせるくらいキョーレツな赤潮ってわけだなー、あははー。
さ、隔離だ。
「いいから謙信、そんな腐ったアワビ女なんざほっといてやれよ。証拠写真もあることだし、もうこんなサークルつぶれるの確定だから」
俺がそう言うと、さっきまで話してたモブ先輩が、さらに輪をかけて慌てだした。
「ば、ばか! このサークルは、大企業のお偉方だけじゃない、表とも裏ともつながってたりするんだぞ!! おまえたちの身の安全すら危ういぞ!?」
「……ほう」
脅しか。
うーん、まあ確かに堅気じゃない人間に闇討ちとかされたらたまったもんじゃない。
俺や謙信はともかく、吉崎さんは……
……あれ? 吉崎さんがいつの間にかいなくなってるぞ? 身の危険を感じて逃げたのかな。まあそれも致し方なしか。むしろ正解。
さて、反撃されていろいろめんどくさいことになる前に、全部とっとと明るみにした方がよかろうもん。
というわけで、俺もスマホを取り出した。
「……あ、坂本せん……ぱい。お疲れ様です。今大丈夫っすか?」
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