大学編

大学に入学早々所属したサークルがヤリサーだった件

 オッス、オラ藤川卓也。

 みんなからは『球児』と呼ばれてるぞ!

 理由は想像してくれ。たぶん思い浮かんだそれを裏切ってない。平気で他人を裏切るのは貞操観念のないビッチどもだけで十分だ。


 声を大にして言おう。おれはビッチという生き物が大嫌いである。

 どのくらい嫌いかというと、ホヤくらい嫌いだ。ホヤ好きな人はすまん。だが、おそらくホヤ好きな人って、ビッチ好きな人くらいレアだと思うんだがどうか。


 まあ、それはいい。

 なぜおれがビッチ大嫌いマンなのかというと、単に高校時代、まわりにいたビッチどもにえらいとばっちりを食らったからだ。

 まったく、うちの高校内でビッチどもが乱痴気騒ぎしてたとかどんな悪夢だよ。俺を巻き込んで振り回すなっての。ビッチどもが腰を振りマワされるだけで十分だろうが。


 俺を巻き込んだビッチどもには因果応報が下りはしたが、肝心の俺が幸せになれなければ何の意味もない。

 というわけで、いろいろ吹っ切るべく、俺は地元を離れ都内の大学へと進学し、心機一転幸せなアオハルをつかみ取ろうとしているところである。


 おい誰だ、どうせFラン大学だろうとか陰口言ったやつは。そんなわけねえだろ。

 俺の大学は、名前を書いただけで入学できると評判の大学だよ、こんちくしょう。


 ま、それはどうでもいい。

 俺にとっては学歴よりも、ビッチどものせいで失った青春の1ページを取り戻す方が重要課題なんだからな。


 というわけで、大学生活っていえば、サークルじゃん? じゃん?

 できれば体育会系的なアレじゃなくて、ゆるいところがいいな、なんて思うじゃん?


 思えば、それが間違いだったのよ。

 なんせ、サークルに入って早々、サークル会館室内で乱痴気騒ぎしてる馬鹿どもを見てしまったんだからな。


 はじめて入ったサークルがヤリサーだったとは。

 なんか初めて挿入ったのがビッチで、だまされて童貞捨てたような気分。鬱なことこの上ない。


 ちなみに、サークル内で乱痴気してたやつらの中には、同じ科の笹島光音ささじまみつねもいた。

 笹島さ、けっこうサバサバしてて可愛かったし、ショックでかかったわ。下の口からだらだらとヨダレたらしやがって、心の中で今度から蜜音って呼んでやる。

 あと同じ科のやつがもうひとりいたが、こいつはいかにも全身からビッチ臭を漂わせていたので、俺は関わり合いになる気はなかった。ビッチ臭というか、臭そうというか。マン臭事変、君子とク〇ニは危うきに近寄らず、だ。


 で、その二人を乱痴気現場で発見して。

 俺はもうひとり、同じ科で一緒にサークルに入った女子がいないか、必死で探したのよ。

 結果としていなかったので安心してその場を離れたけど。あんな状況、見てると勃つよりもフラバが激しくて禿げしくなっちゃう。


 そうしてサークル会館から離れて大学を去ろうとしてたところに。

 俺が必死になって姿を探していた女子──吉崎美帆さんとソーグーした。ナイスタイミングだね、So、Good。


「……あれ、藤川君? どうしたの、サークル会館のほうへ寄ったんじゃないの? 顔、出さないの?」


「ああ、いや、サークル会館がサークル快感になっててさ……」


「……へっ?」


 ヤバイ、このままでは吉崎さんがサークル快感の餌食になってしまう。

 これは俺の見立てではあるが、吉崎さんはきっと穢れを知らない処女だ。超ド級のビッチどもと一緒にいた俺にはわかる。

 今時カラーリングしてない黒髪ストレート、着ている服も清楚系。つけている下着もきっと白だ。純白。貞操を守る乙女にしか許されない、清潔なホワイト。


 ちなみに白の下着からイエローの下着に変化すると、乙女が純潔を失った証拠になるから注意な。なんせイエローの下着は黄ばんでもバレないから。

(※根拠は皆無です、本気にしないでください)


 このまま吉崎さんをサークルに所属させたら、きっと吉崎さんの心も黄ばんでしまう。いや、それどころかドドメ色まで変色するかもしれない。後ろの穴からひりだされる汚物のように。後ろの穴もガバユル……うっ頭が。


 乱痴気シーンを見て、フラバが訪れると同時にサークルを抜ける決意を固めた俺は、吉崎さんの両肩をつかみ、真剣な目で見つめつつ説得を開始した。


「吉崎さん……」


「……な、なにかな? ど、どうしたの藤川君?」


「お願いがあるんだ。俺と一緒に、あの腐れ切った性欲過多モラル皆無ウルトラフリーヤリサーをやめてくれないか?」


「……えっ?」


「いまサークル会館内をのぞいたんだ。そしたら、サークルのやつらが複数人で乱痴気騒ぎしてやがった。悲しいことに笹島もそこにいた。あのサークルは、ただのヤリサーだったんだよ!」


「……」


 吉崎さんがすっごく困惑している。

 そりゃそうだ。吉崎さんのことだ、あのサークルがヤリサーだったと気づいていないはず。それに吉崎さんは、笹島とも仲がいい。


 だがだからこそ。吉崎さんを、ヤリサーの毒牙にかけさせるわけにはいかない。

 俺は球児だから三振は上等なんだが、妊娠はご法度なんだよ。

 どっかの美々とか相原んこーさんみたいな道を歩ませられるか!


「……お願いだ、吉崎さん。呆れるのもわかるけど、あんなところにいちゃいけないんだ、吉崎さんは」


「……え、ええと……藤川君、そういうの、苦手なの?」


「ああ、苦手も苦手、大の苦手だ。もっと言うなら、トラウマと言ってもいい。ストレート勝負とか言っておきながら変化球を投げて、敵味方観客からブーイングされるくらいのレベルでトラウマだ」


「……そ、そう……なんだ。てっきり……」


「てっきり?」


「あ、い、いえ、なんでもないの」


 吉崎さんの動揺が半端ない。

 だが、ここは動揺してることを利用させてもらおう。押しの一手だ!


「お願いだ……吉崎さんを、性欲のことしか頭にないクソどもの慰みものにさせたくない。吉崎さんにはきれいなままでいてほしいんだ。俺がそう望むんだ。だから、頼む……俺と一緒に、サークルをやめてくれ」


 いつになく真剣なお願いを、真剣なまなざしとともに吉崎さんに投げると。

 顔を赤らめた吉崎さんは、俺から目をそらして。


「わ、わかった……藤川君が、そう望むのなら、わたしは……」


 そう答えてくれたんだ。

 心の中でガッツポしたことは言うまでもない。

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