これほどまでに止められないDVがあっただろうか(反語)

 当然のごとく、その後の校内は大騒ぎとなり。

 学校は半ドン、戒厳令が敷かれたが、人の口に戸は立てられない。全部広まるのも時間の問題だろう。


 そして我が家では。

 義母さんが涙を流しながら、半狂乱で美々の頬を繰り返し繰り返し叩く光景が繰り広げられていた。


「この大バカ! あんた、なんて馬鹿なことをしてくれたの! 恥さらしにもほどがあるわよ!」


 バシーン。


「そんなに淫乱な娘だったの、あんたは! しかも学校内でなんて! 非常識にもほどがあるわよ!」


 バシーン。


「こんなことして、あんたもうお嫁にいけないわよ! ばか、ばかああああぁぁぁぁぁ!」


 バシーン。


 毎日毎日自分をメイクして盛って、今どきのJKを体現していた美々の頬が、何回も張り手されて今はオタフクみたいになっている。もしくはジャンプバグというゲームに出てくるモンスターというか。


 ま、悪いけど止めるつもりはなかった。

 義母さんが半狂乱になるくらいでもユルいほどの非常識な行為をしていたわけで、俺の中でも美々を軽蔑する気持ちがパネェ。股だけじゃなく常識もユルいJKが妹とか、これ何の罰ゲームだ。


 むしろ製造物責任法にのっとって美々を説教している義母さんを応援したい気持ちがマウントフジに匹敵するレベルで山盛りだ。


「とりあえず、絹江。そのあたりで叩くのはやめなさい」


 義母と同じく会社を早退してきたオヤジが、そこでストップをかけた。

 すると緊張の糸が切れたのか、義母さんは臥せって号泣し始める。


 ここまで自分を育ててくれた母親が、これだけ取り乱しているさまにいたたまれなくなったのか。

 美々はうつむきながらぽたぽたと涙をこぼす。


「……ごめん、なさい……」


「ごめんですむか、性欲魔女のくされ股ユルのビッチビッチファ×クフ×ックあんあんあんが。雨の日に蛇の目傘さして出家しろ」


 そこで俺も参戦。

 ああ本当に汚い。なんだよこいつ、てめえ俺をボロクソ言えるほど上等な人間じゃねえだろ。

 そう思ったら止められなかった。


 案の定、場の雰囲気はさらに冷える。霧ヶ峰どころかダイ○ンのエアコンですら太刀打ちできないくらいだ。この様子なら今年の夏は冷房いらずなんじゃないのか。


「うう……」


「なんだ、ビッチビッチジュップジュップパンパンパン、のほうがよかったか? エロゲメーカーですら現実にこんなことしてる奴らがいるなんて思わなかっただろうよ。集団でしかも校内で交尾するとか、このイカレた時代ですら類を見ない気狂いっぷりだろ。おまえはTough Boyたっぽいか」


 反論できるならしてみろ。


「おまけに聞いた話じゃ、これが初めてじゃないんだろ? いままで何百回やってたのかはわからないが、そんなに大量の性欲魔人男と愛もないのに何度も何度も交尾してた肥溜めレベルの便女が妹だなんて、吐き気がするどころの生易しいレベルじゃない」


「うう、うっ、うっ……」


「あの光景は、一生俺のトラウマとして残るからな? もう同じ家で同じ空気を吸うのも嫌だ、この家出てけ。一緒に住んでたら俺も変態だと思われるじゃねえか」


「う、う、うっ、うわああああああぁぁぁぁぁぁ……」


 ああ、罵倒ってキモチイイ。違うほうの意味でSに目覚めそう。

 しっかし今思うと、相原さんに告白断られてよかったな。これでもしOKされて、その後にこんな展開となっていたら俺の心は死んでいた。

 露ほどにも思わねえよ。美々と相原さんが仲良かった理由が、同じ乱痴気パーティーに参加していたからだったなんてさ。


 つまり。

 相原さんも、美々と同じような超弩級の汚い女である。

 軽蔑かましていいですか?


 とはいっても、もう関わり合いになることなんてないだろうけどな。

 あそこにいた男子女子、ヲタ系真面目系ウェイ系いろいろひっくるめて乱痴気してたみたいだし。

 バレて家に帰った他のメンツも、今頃自宅で修羅場をむかえていることだろう。


 本当に腹が立つ。

 オヤジと義母さん、せっかく再婚を機に、三十年ローンまで組んででっかい立派な家を建てたばっかだというのにな。一年足らずで家族崩壊の危機が襲い掛かってくるとは、海のリハクどころか竹中半兵衛重治ですら見抜けねえよこんなん。

 これに関しては、軍師レベルが天と地ほど違うというツッコミしか受け付けないぞ。


 本当にこれ以上同じ空気を吸いたくなかったので、俺は美々を罵倒するのをやめて、自分の部屋に戻った。

 あとはオヤジと義母さんにお任せ。


 …………


 もう離婚するしかないんじゃね?

 というか引っ越ししたいぞ俺は。

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