英会話教室

「あぽーぅ」

「あぽー」

 近所で評判の英会話教室。美人でやさしい先生が丁寧に教えてくれるよっていう噂はなんだったのか。

「のんのんのん。あぽーぅ」

 なんだコレ。

「あ、あぽー」

「のんのん。あぽーぅ」

 いや、それジャイアント馬場。プロレスラー。

 俺、英語を習いに来てるから。どうしてちょいちょいモノマネ入れてくるんだ。

 いや、もうほとんどモノマネというかボケだけど。

「ネクスト。とめぇーとぅー」

「……とめぇーとぅー」

「イエェス!」

 なんでシャウト。髪を振り乱すな。ヘドバンするな。バンギャか。古いわ。

「ネクスト! 『最近、付き合った彼氏がー。いっつもべたべた甘えてきて—。もうどこでも構わないって感じでー。迷惑っていうかー。かわいいみたいな?』はいせーの」

「「〇ァッ〇!」」

 実体験ですか。何かあったんですか。ウザかったんですねわかりますが。

「ネクスト! 『で、あんた彼氏は出来たの? いつまでも独り身ってわけにもいかないでしょう。美人なうちに良い男捕まえておきなさいよ?』はいせーの」

「「〇ァッ〇!」」

 ……お疲れ、様です。

「ネクスト! 『うちの子供がさ。最近バイオリンを始めたんだけどね。どうしても指がとどかなーいってやってるのがすごくかわいくて。あ、これその時の写真なんだけど』はいせーの」

「〇ァッ〇! あれ、はいせーの!」

「いや、それはどうでもいいんで」

「〇ァッ〇!」

 中指立てない。だから結婚できないんでしょう。原因はっきりしてるでしょう。そういうところですよ。アクティブなのは好感触かもしれませんけどね。振り切りすぎですって。

「ネクスト! あ、この書類の、ここにハンコを押してほしいんですけど」

「え、ハンコなんて持ってきてないですよ?」

「じゃぁ、ボインでもいいですよ? ってあたしのじゃねえわ!」

「……?」

「キョトンとされたよ〇ァッ〇!」

 なんなんだよもう。英語を教えてくれよ。社会を習いに来たんじゃないんだよ。

「さっきからF言葉しか発音してないんですけども」

「あぁ、そうね。メンゴメンゴ」

 古いわ。古すぎるわ。

「ネクスト! 『ねーねー。カラオケ、新しいの、なんでもいいから歌ってよ』って言われたので『私がおばさんになっても』を入れたら『ウケルwwww』だって。〇ット!」

 反応に困るわ。さすがに俺もウケルってなるわ。古いわ。本当に古い奴なんだわ。

「ネクスト! 『ハッピバースデートゥーユー。ハッピバースデートゥーユー。ハッピバースデーディア……』名前忘れたんかい! 〇ット! 〇ス〇ール!」

 仲良しさんとやろうよー。誕生日会とかさー。っていうかちょくちょくパリピじゃねえか。

 コミュ力のバケモンじゃねえか。

「ネクスト!」

「ちょっと待ってください。さっきからお笑い芸人のネタ見せみたいになってるんですが」

 俺、英語ならいに来てるんだわ。ネタの評価をしに来てるんじゃないんだわ。

「えぇそうよ。出るのよ。私」

「は?」

「あなたと」

「はぁ!?」

「もう、申し込んであるわ。来月のチャンプオブコント、出るわよ」

「はぁ?」

「優勝したら、その資金で結婚式を挙げるわ!」

「はぁ……」

「あなたとね!」

「しないわ。帰りますね」

 付き合ってられないし。

「ちょっとまったぁ!」

「……まだなにか?」

「せめて『ザ・M1コンテスト』には出てくれる?」

「出ねぇわ。いい加減にしろ」


「「どうもありがとうございましたー」」

 後日。ゴリ押しされて出ることになってしまった。

 意外と受けてしまった。次が準決。どうしてこうなった。

「こりゃぁ、結婚まで秒読みだわぁ!」

「しねえよ」

 俺は英語を習いに行くからな!

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