理由。(BL)

ー結婚なんて一生出来ない


いつだったか、そんなことを話した気がする。イケメンじゃないからだとか、趣味が趣味だとか、警察官という職業柄だとか。理由は大体そんなもの。そんなものだったはずなのに。


「結婚出来ない理由ってそれかよ」


深夜の交番。いつものようにコンビニで買った弁当を食べながら、不意に同僚の口から漏れた言葉にそれだけ返して最後の一口を食べ終える。


「おかしいって言わないのか?」


ゴミを捨てようと立ち上がった俺の背中に投げかけてきた。心底不思議だというような声。きっと今まで言われてきたんだろう。


「別に言わないし思わねぇよ」


言ってほしいの?と付け加えると弱々しい否定の言葉が返ってきた。なんでわざわざ自分から傷口を抉ろうとするのか分からない。まぁ分かりたくもないが。


「で、そうやって俺に言ってくるってことは…そういうことだろ」

「…なんでもお見通しだな、お前は」


同僚が自分に並みならぬ好意を抱いていたのには薄々気が付いていた。それでも言わなかったのは…確信がなかったからとでも言っておこう。双方にメリットなんかない。それこそこの仕事をしていれば特に。いつ死ぬかなんて分からないのに永遠を誓い合ったところで、ただ辛い思いをするだけだ。


「告白されたわけじゃないから、別に返答する気はないぞ?」

「…それでいいよ」


たった二言。それだけ交わして巡回用の自転車の鍵に手を伸ばした。

ストーブの上に置かれたやかんは俺たちを笑うように、小さくカタカタと音を立てている。



(暗転)

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