諦めた私と諦めない彼女。(GL風味)
嫌な感情を忘れれば、人生楽に生きれるよ
物心ついたころから、理不尽に苛まれていた私を支えてくれた言葉。
嫌いも妬みも僻みも全部分からないふりをして生きていけば幸せになれる。どんな嫌なことを言われたってどんなに辛くたって、不幸だって。それに気が付けなければ、自分は幸せだって思いこめば。いつもニコニコと笑っていれば。どんな環境でだって生きていける。
「嫌なことは嫌じゃないですか」
そんなとき、彼女と出会った。
「もー疲れた!勉強嫌い!」
はっきりと勉強を嫌いと言って
「正直部活ってもっとわくわくドキドキ青春って感じだと思ってたんですけど」
理想との違いに愚痴を零す。
「これすっごい面白いですよ!!まじで!」
「なんで上手くいかないんですかね…!」
楽しいも悲しいもめいっぱい表現して
「先輩は何でも安請け合いしすぎですよ!部室の大掃除なんて一人ですることじゃないですから!」
誰かの代わりに怒って
「考えてもどうにもならないんですけどね」
時に苦い顔を見せて笑う。
そんな私と正反対な子。
「全部幸せだって思えたら楽なんだろうね」
一度だけ。ボロボロと泣いている彼女に言ったことがあった。
「確かにそうですね」
くるりとこちらを向いて笑う彼女の頬には涙の伝った跡。痛々しい光景に過去の自分を重ねて胸が苦しくなる。
でも、彼女は過去の私と違った。
「でも出来ないんですよねぇ」
「え?」
「なんというか、こうやって悩んだり辛いなぁって思ったりするのって実は大事だと思うんですよ」
言葉を選び取りながら話す彼女の視線はふわりと宙に浮く。
「そりゃあ負の感情に気が付かないようにして全てを幸せだって思うのもいいとは思うんですけどね」
私のことを言い当てられてドキリとしたが彼女の視線は今だ宙に向かっていて気が付く様子もない。
「それって幸せって感じるというよりは感情を捨ててるって感じがして」
ー感情を諦めたくないんです
泣きはらして赤くなった目に決意の色を浮かべて彼女は言った。唇は苦く笑った時のように僅かに引きつっている。きっと彼女は分かっているんだ。感情を殺さずに生きることがどれだけ辛いことか。それでも彼女は進むらしい。どんなに辛くても、死にたくなっても。自分の中にある感情と生きるために。
「そっか」
張り付いてしまった笑顔を浮かべてそう零す。空っぽだったはずの胸の中に何か小さなものが生まれた気がした。
(暗転)
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