男の裸。(NL)

男の裸に需要はない。

もちろんボディービルダーやスポーツ選手みたいな鍛え上げられた肉体に関しては別の話になるだろうが、少なくとも鍛えたことなんてないおっさんの体は目すら背けたくなる。


「俺…鍛えようかな」

「どうしたの急に」


半裸の状態で呟いた俺の横。ひょっこりと鏡の中に現れたのは頭に大きなお団子を乗せた彼女。うん、今日も可愛い。


「いやぁ…体見たらなんか…だらしないなって思ってさ」

「そう?」


彼女はきょとんとしてから俺の腹をつんつんつつく。少しくすぐったい。


「別に大丈夫だと思うけどなぁ」

「いや…自分だけならいいけど人に見せるんだったらせめて見るに堪えるくらいの体にはなりたいでしょ」

「え、誰に見せるの?」

「お前に」


それに可愛くなる努力をしている彼女に頑張っていない体を晒すのも気が引けるっていうものだ。あとで初心者でも出来る筋トレとか調べてみようか…。


「…えっち」


隣から彼女の小さな声。音量もさることながら言葉に驚いた俺が振り返ると彼女は何故か顔を真っ赤にしていた。


「どういう…」


そこまで言葉を紡ぎかけて押しとどまる。あれ、この反応はなんか下ネタを言った時のやつだ。

だいぶ恥ずかしいことをすらっと言ってしまったことに気が付いて2人して赤面するまで、あと10秒。



(暗転)

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