あなたしかいないの悪い例。(GL)
「人の趣味をとやかく言うつもりはないんだけどさ」
先生がこう前置きをするときはだいたい愚痴話だ。
生活の中で気に食わなかった人間を片っ端から吊るし上げてボロカスにしていく。それでも最後に「まぁ人それぞれだとは思うんだけどね」と付け加えてしまえばそれでおしまい。あくまでも私はこういうのが苦手ですよって言う意思表示にしかならない。
「そうなんですか」
適当な相槌を打ちながら内心その一言ずつに怯える。今日こそ自分のことを言われるんじゃないか。お前のことだなんていわれて突き放されるんじゃないか。
「まぁ人それぞれなんだけどねぇ」
「まぁそれに尽きますよね」
先生は嫌な人だって分かってる。私に直接言ってくれる人もいる。けれどそれまで。誰も私に手を差し伸べてくれない。私には先生しかいないんだ。
「君くらいだよ、分かってくれるのは」
先生がふわっと笑うと開いていた窓から風が吹いて白髪を揺らす。よくそんな笑顔が出来るなという憎しみは心に留めておくことにした。
(暗転)
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