多分使えないだろうけれど。(NL未満)

ー明日朝ご飯食べてくるなよ


突然友人が電話をかけてきたと思ったら開口一番こう言ってきた。


「は?なんでだよ、集合10時だろ」


手帳を確認しようと目の前のローテーブルに目を向ける。そこには課題新しい教材、さらにはサークル勧誘のビラでひと時にして築き上げられた山。多分おそらく1合目辺りに手帳は埋まっていることだろう。

仕方がなくスマホをスピーカーにして万年寝床から立ち上がる。


「集合時間早まったっけ?」


今現在機能を果たさない手帳を探しながら聞いてみると否定の声がスマホを割らんばかりに揺らす。


ー逆に朝ご飯食べる気なのか!?

「今手元にある情報を考えたら普通食べるだろ」


鼻で笑ってやるとようやく落ち着いたのか「確かにそうか」と言って息をつく。そして聞く人間は俺しかいないのに声を潜めて言葉を続けた。

ー実は峯嬢が参加するんだってよ

「峯嬢…あぁあやさんか」


あやさんは大学から出来た友人だ。家が相当の金持ちらしい。だからなのか文字に書いたような箱入り娘という感じで、世間をあまり知らない。俺も最初はあまりの大金持ちという噂で彼女を知ったが今ではそれを抜きにしても今後仲良くしていきたいと思えるくらいとてもやさしくて魅力的な女性だ。


ー今どきお前だけだよ、あの人を名前で認識してるのは


はぁとため息を吐かれたところで山が崩れて手帳が顔を出す。パラパラと開いて確認するがやはり集合時間は10時のまま。


ー峯嬢がいるってことはいつもみたいな安い店じゃなくなるってことだよ!

「なんでだよ」

ーだって何だかんだ言って毎回峯嬢が払ってくれるんだぜ?それならいつもみたいなやっすい昼飯だったら意味ねぇだろ


つまり、ある程度金のかかるものを食べに行くから腹を減らしてこい…ってことか。


「お前な…仮にも友人を金づる扱いか?」

ー本人が進んでやってることなんだからいいじゃねぇか、この波に乗っておかないとバカ舌になるぞ


もはや心配の色さえ見せてくる言葉に心の中でため息をする。彼も悪い奴じゃないんだが、人との関係性で利害を最優先するところはあまり褒められるものではないと思う。


「味覚の形成はもうとっくに終わってるよ」


怒ってもしょうがないことに鼻で笑いながら返す。そして鞄の中に放っていた財布を取り出して食費用の封筒の中に収めていた5000円札をそっと忍ばせたのだった。



(暗転)

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