話題の転校生。(BL)

「ん?」


突然頭に重みを感じて振り返る。背後にいたのは最近学校の話題をかっさらっている転校生だった。確か名前は…山谷だったか。


「なんだよ」

「いやぁ、何読んでるのかなって!」

「気になったからって普通ほとんど初対面みたいな奴の頭撫でながら聞くか?」


頭に乗っかる手を払いながら当然の言葉を投げかけると、山谷ははて?と言わんばかりに頭をこてんと傾けた。どうやらこの転校生の辞書には初対面という言葉がないらしい。なんで山谷が話題になっているのかは分からないが、おそらくこの誰にでもべたべたくっつくのが原因なんだろう。


「で、何読んでるの?」

「…これ」


結局俺の言葉を聞かずにぐいぐい来る山谷に仕方がなく今読んでいた小説の表紙を見せつける。


「えっと…かやぐ…?」

「ぶっ!」


まさかタイトルで躓かれるとは思わず噴き出した。そんな俺の姿を見て今度は逆方向に頭を傾ける。なんというか…だんだん犬に見えてきた。


「華やぐな」


最初に受けた仕打ちを忘れたわけではない…が。少しばかり山谷に興味を持った俺は、ようやく向き直って読んでいた小説について教えてやることにしたのだった。



「あれが話題の山谷?」

「おう、あいつが転校初日から教室の隅っこにいる木宮に一目惚れして猛アタックしてる変わり者」

「そんな風に言われてんのか?」

「知らなかったのかよ、当人以外はみんな知ってるよ」



(暗転)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る